会員各位
社団法人日本腎臓学会
理事長 槇野博史
慢性腎臓病対策委員長 渡辺 毅
平成20年度より日本腎臓学会CKD対策委員会「検尿の効果検証委員会」の委員を申請者(研究代表者 福島県立医科大学内科学第三内科 渡辺毅 教授)とした厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)の研究課題「今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討」が開始されました。
ご存知のように、CKDは我が国の全人口の約10%の高頻度と推測され、末期腎不全と心血管イベントに対する寄与度は高血圧や糖尿病に匹敵する危険因子とされています。CKDは、約6割が糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症を原疾患とし、生活習慣病の増加によって今後の増加が予測されます。また、CKDは、早期診断・早期介入によって進行抑制ばかりか寛解も可能であるが、初期には殆ど無症状であるので、効率的な健診システムによる生活習慣病を中心とするCKD危険群に対する一次予防(保健指導)とCKD患者の早期発見と受診勧奨が対策の根幹です。
生活習慣病を背景とする循環器疾患が激増していることから、今年度からメタボリックシンドロームを重点とした特定健康診査・保健指導が開始されました。今回のシステムでは検査異常者への保健指導や受診勧奨を保険者に義務づけ、受診者へ固有番号制を適用することで追跡や事後指導が可能となり、生活習慣病発症の一次予防効果が期待されています。しかし、特定健診の必須検査項目には血清クレアチニン値測定は含まれないことから腎機能評価が不可能で、蛋白尿陽性は保健指導や受診勧奨の対象となっておりません。したがって、CKDの早期発見・早期介入の観点からはその実効性に疑問も存在します。
本研究は、この問題解決のために追加項目として血清クレアチニン値を測定した保険者と測定しない保険者の保有する特定健診データを収集・追跡することで、蛋白尿とeGFR低下の生活習慣病・心血管イベント発症への寄与度、様々な受診者背景のCKD発症への寄与度などの要因解析と検尿とeGFR測定の生活習慣病・心血管イベント発症に対する医療経済的検討を行うことで、健診システムへのCKDスクリーニングの組み込みの妥当性を検討するものであります。その結果として、生活習慣病、循環器疾患および末期腎不全の一次予防を目的とした効率的な健診項目、保健指導の改善策を提言することを目的としております。
研究の倫理面では、すでに福島県立医科大学倫理委員会にて承認されており、研究に必要な経費は、厚生労働科学研究費補助金からの拠出を基本としております。一方、保険者から提供されたデータについての必要な解析結果や情報を保険者と健診受診者に報告、公表することによって、実地の保健者側の健診・保健指導活動にも役立つことが期待されます。
日本腎臓学会では、本研究の重要性を鑑みて、全面的に支援することが理事会でも承認されております。
本研究の主旨をご理解いただき、腎臓学会員としてのご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
本研究の詳細については、福島県立医科大学医学部第三内科のホームページ内http://www.fmu.ac.jp/home/IM3/newpage1.htmlに公表しておりますのでご参照下さい。
本研究では、全国の出来るだけ多数の保険者からの健診データを収集、経過観察することが必須であります。そのため、各地域にて日本腎臓学会会員の先生方に保険者(自治体など)と交渉し、匿名化健診データの提供を承諾戴くことが必要です。
ご協力戴ける先生、質問のお有りになる先生は、福島県立医科大学第三内科(担当:旭浩一、渡辺毅Tel: 024-547-1205、Fax024-548-3044、e-mail; asahi(アットマーク)fmu.ac.jp またはtwat0423(アットマーク)fmu.ac.jp)までご連絡ください。ご協力戴ける先生には、必要書類(保険者への依頼状・保険者との覚書の例、福島県立医科大学倫理委員会への研究申請書・許可証、データ入力表など)をお送り致します。