● 第1章 検尿の原則
検尿の方法
・医療機関での検尿
プライマリケアにおける尿検査の位置づけとしては、健康診断、初診時のスクリーニング検査、腎障害の可能性が疑われるとき(合併症としての腎障害)、腎・尿路疾患を疑わせる症状のあるとき(腎疾患の疑い)に大別される。
いずれの場合も、検尿は試験紙法(dip and read stick, dip stick)にて実施されるのが通常である。それ以外の方法として、試験紙法で蛋白が(±)以上の場合や発色のむらのある場合に確認の意味で実施される20%スルホサリチル酸法がある。試験紙法ではアルブミン尿を検出しているが、20%スルホサリチル酸法は蛋白質全体を検出できることから、ベンス・ジョーンズ(Bence Jones)蛋白も検出しうる。逆に、スルホサリチル酸法で陰性なら尿蛋白は陰性であると判断される。
・自己検尿
1991年より尿試験紙は一般用検査役(over the counter:OTC)として薬局などで購入できる(表1)。
・腎疾患に関する検尿項目(表2)
医療機関検尿では、pH、比重、尿蛋白、尿潜血、亜硝酸塩(細菌の検出)、白血球反応(エラスターゼ)、尿糖(食後2時間尿が望ましい)。OTC試験紙を用いた自己検尿では、尿蛋白、尿潜血、尿糖の3項目のみ実施可能である。
〈表1〉薬局で入手できる主な尿試験紙
商品名 |
製造 |
ウリエース |
テルモ |
ウロペーパーGP |
栄研化学 |
エームス |
バイエルメディカル |
テス・テープA |
塩野義製薬 |
〈表2〉
Ames 試験紙による尿スクリーニング検査
項目 |
原理 |
指示試薬 |
判定(秒) |
濃度(mg/dl) |
陽性時疑われる疾患・病態 |
偽陰性 |
+ |
++ |
+++ |
++++ |
pH |
指示薬法 |
MR-BTB |
直後
~60 |
pH5~8.5 |
酸性:発熱、脱水、飢餓、腎炎、糖尿病、痛風
アルカリ性:感染(尿路)、制酸剤、過呼吸、嘔吐など |
|
蛋白 |
蛋白誤差 |
TBPB |
|
30 |
100 |
300 |
1,000 |
急性・慢性腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、発熱・過労、その他全心疾患の腎病変を伴うときなど |
|
ブドウ糖 |
酵素法
(GOD-POD) |
ヨウ化カリウム |
30 |
250 |
500 |
1,000 |
2,000 |
糖尿病、膵炎・肝疾患・甲状腺疾患、妊娠時、ステロイド長期投与時など |
ケトン体
ビタミンC |
ケトン体 |
Lange
反応の応用 |
ニトロプル
シッドNa |
40 |
15 |
40 |
80 |
160 |
糖尿病性ケトアシドーシス、過剰脂肪食、低炭水化物食、飢餓、嘔吐、下痢が持続するときなど |
|
潜血反応 |
HbのPOD
作用 |
テトラメチル
ベンチジン |
60 |
+ |
++ |
+++ |
|
腎、尿管、膀胱、尿道前立腺の炎症、腫瘍、結石、溶血性疾患、出血要素など |
亜硝酸塩 |
ビリルビン |
ジアゾカップ
リング反応 |
ジアゾニウム塩 |
30 |
+
(0.1~1)* |
++
(1~3)* |
+++
(3~6)* |
|
肝・胆道疾患、膵疾患、妊娠・薬物中毒、輸血後、クロルプロマジン、フェナゾピリジン投与時など |
亜硝酸塩 |
ウロビリノゲン |
アルデヒド反応 |
ジエチルアミノ
ベンズアルデヒド |
60 |
1 |
2 |
4 |
8 |
肝・胆道疾患、発熱、運動後、溶血性疾患、PAS、サルファ剤、クロルプロマジン、アドナ投与時など |
亜硝酸塩
ホルマリン |
Ehrlich単位/dL |
亜硝酸塩
(細菌尿) |
Griess
反応変法 |
アルサニル酸
THBQ |
60 |
|
細菌尿を伴う尿路系の突発性疾患 |
ビタミンC |
*実際の表示は+、++、+++
今日の臨床検査2003~2004,p2,南江堂,2003より引用
|