腎臓の病気について調べる

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11.腎代替療法

  • 1.血液透析

血液透析は腎臓の機能が十分ではなくなった場合に,その機能を肩代わりする腎代替療法の一つです.血液を体外にとりだし,ダイアライザーという医療器具を通し、血液と透析液の間で物質の移動が起こり、老廃物と余分な水が除かれます.一般的には透析施設へ通院のうえ、1回の治療は3~5時間,週3回行います.全国で約30万人の患者さんが,約4000の施設で治療を受けています.血液透析を受ける準備として,血液を体外に取り出す血管(内シャント)を作っておく必要があります.
しかし、血液透析では完全には腎臓の機能を代行することができません.食事療法が必要で,降圧薬,リン吸着薬,貧血に対する薬剤などが多くの場合必要とされます.しかし,わが国では45年間にわたり透析を受けられている方もおられ,長期に腎機能の肩代わりが可能です.近年,老廃物の除去効果が高いオンライン血液透析濾過や,自宅に透析装置を設置し,自分で治療を行う在宅血液透析に注目が集まっています.

  • 2.腹膜透析

腹膜透析(PD)は、自分の身体の中の「腹膜」を利用して血液をきれいにする在宅で行う透析療法です。お腹にカテーテルを入れる比較的簡単な手術が必要となります。通常、月に1-2回の通院となります。1日に3, 4回バックを用いて透析液を交換する方法(CAPD)と寝ている間に器械を使って自動的に行う方法(APD)があります。CAPDでは、1回のバック交換に約20-30分必要です。腹膜透析の最大の利点は、血圧変動が少なく身体への負担が少ない透析であることです。また、自由度の高い生活が可能で、社会復帰が容易となります。血液透析に比べて、残っている腎臓の機能や尿量が長く保たれますので、尿量が維持されている間は水分摂取制限が少ないという利点もあります。こういった観点から、腎代替療法が必要になった場合には残腎機能を長く保つ腹膜透析から開始することが良いという『PD ファースト』が勧められています。
高齢社会となり、多くの疾患を抱える腎不全患者が増加しています。このため、『アシステッド PD』と呼ばれる在宅で治療ができるPDが期待されています。訪問看護師が、在宅でサポートする体制が地区毎に確立されつつあります。

  • 3.腎代替療法選択外来

慢性腎臓病と診断され、その進行を抑えたい一心で長く食事療法に取り組んでこられた方や、突然腎不全と診断を受けた方など、そこに至るまでの道のりは人それぞれに違いますが、「透析が必要です」と医師から告げられたときのショックはどなたにとっても非常に大きいものです。喪失感や透析への拒否感でいっぱいになり、先のことを考えるのが難しいと思われるかもしれません。
腎代替療法選択外来では、それぞれ異なる生活背景や価値観、生きがいをお持ちの患者さんの視点に立って、腎臓の働きを補うために、また、症状を緩和するために、どのような方法があるか(血液透析、腹膜透析、腎臓移植、保存的腎臓療法)を説明し、どの方法が最も適しているかを患者さん・ご家族と医師・看護師等で一緒に考えます。疑問点は遠慮なく尋ねていただき、十分な情報を得た上で、これからの人生をイキイキと過ごしていただくためのプランを考えるきっかけとなります。

  • 4.SDM

SDM(Shared Decision making、共同意思決定)とは、患者さんと医療者が、ともに考え、話し合って最良の医療上の決定を下すプロセスをいいます。その際には、医学的な情報だけでなく、患者さんにとって何が大切なのかという患者さんの価値観や選好を十分に考慮して検査や治療を選択します。治療方針の決定に迷う際には、医療者が勝手に決めてしまうのでもなく、患者さんに判断を任せてしまうのでもなく、ともに話し合っていくことで、患者さんは治療法についてよく理解し、医療者は患者さんの価値観を理解し、よりよい決定につながると考えられています。慢性腎臓病が進行して末期腎不全に至った場合、血液透析、腹膜透析、腎臓移植のどれを選択するかに迷いますが、こうした場合に、SDMが重要になります。

  • 5.CKM

末期腎不全に達したCKD患者が腎代替療法(腎移植、腹膜透析、血液透析)を選択しない場合や維持透析患者が透析療法の継続を中止する場合に、尿毒症症状(嘔気や呼吸困難など)や苦痛の軽減のために実施される保存的な治療で、腎臓内科的管理から緩和医療までを包括してCKMと呼びます。症状を軽減するためだけに実施される一時的な血液透析を含む場合もあります。CKMのあり方は国際的にも標準化はなされていませんが、近年、日本においてもガイドの作成が試みられています。今後は第4の腎代替療法として認知され、SDMにおいて提示される選択肢の一つになるものと想定されます。