理事長ご挨拶

日本腎臓学会について

理事長ご挨拶

日本腎臓学会の使命と展望

一般社団法人 日本腎臓学会理事長 南学 正臣
(東京大学大学院医学系研究科 副研究科長 腎臓・内分泌内科学教授)

柏原 直樹 理事長

 令和4年(2022年)6月より一般社団法人日本腎臓学会の理事長を務めることとなりました。重責に身の引き締まる思いです。
 日本腎臓学会の使命は腎臓学・腎臓病学の研究と普及を通じて社会貢献をし、国民の負託に応えることにあります。この使命を達成するために、日本腎臓学会は、腎臓学の学理探究、人材育成、生涯教育の奨励、研究成果の社会還元・普及、国民の健康福祉への貢献など、多岐にわたる活動を行ってきました。
 本学会は歴代理事長の先見性と創造性に富む卓越した指導力および執行部・会員の方々の多大な功績により、日本腎臓学会は大きく飛躍しました。一方、我々は激動の時代を迎えています。新型コロナウイルスのpandemicにより医療と国際交流は大きな変革を余儀なくされました。東欧は戦火に見舞われ、災害弱者である疾患を持つ方々への支援を如何に行うかも喫緊の課題となっています。また、欧米および豪州では、数年前から医療が環境へ与える影響を考慮しsustainableな医療を構築するgreen medicineの必要性も強調されています。我々は力を合わせ、未来を遠望し次世代を育成しつつ、これまで世界をリードしてきた日本の腎臓病学を更に発展させ、最先端の国際情勢と国際標準を理解しながら日本における医療の最適化を行う必要があります。このため、これまでの日本腎臓学会の路線を踏襲し発展させながら、激動の時代においても疾患克服のため学会としての前進を継続していきたいと思います。会員諸氏、国民からの期待・要請に応え、使命達成に向けて一層、真摯に取り組む所存ですので、皆様の御協力、御指導の程宜しくお願い致します。
 柏原前理事長が基本方針として挙げられた学会活動の主要事業である、社会への貢献、人材育成、腎臓学・腎臓病学の一層の進展、社会活動へのコミットメント・連携の強化、伝統の継承と革新を、会員の皆様方とともに継続性をもって発展させていきたいと思います。

 

1.社会貢献

 「腎臓病学の研究と普及を通じて社会貢献をし、国民の負託に応える」ことが本学会のミッションです。学会活動は多岐にわたり、拡大しています。様々な企画・新規事業について、将来を見据えながら公益性を重視した学会活動を継続・発展させる必要があります。
 会員の多くは、診療の第一線で、患者さんと御家族と共に腎臓病と対峙し診療にあたっています。学会として、会員の日々の診療を支援し、疾患克服に向けての様々な活動を「事業」として集約・組織化し、その成果を最終的に会員と患者・家族、さらに社会へと還元します。日本腎臓学会は事業を計画的に進めるため、「日本腎臓学会5カ年計画」を策定・更新し、このグランドデザイン、アクションプランに基づいて事業を進めています。将来を見据えながら、社会貢献の視点に立脚し、優先度を判断しながら事業を推進し、社会に開かれた学会活動を展開して参ります。

2.人材育成

 将来を託す次世代の育成は、学会の未来を決めます。若手、中堅会員を積極的に登用し、各種の役割を担うことで視野の拡大機会を持ち、様々な経験を積んでいただきたいと思います。
 多様性(diversity)の醸成も健全かつ活力ある学会活動には不可欠です。男女共同参画は言うまでもなく、年代、所属組織、立場、分野など、様々なdiversityを促進することは、組織の強化につながります。
 日本の専門医制度は大きな変革時期を迎えています。専門医制度は、優れた若手医師を育成するための重要な制度であり、腎臓専門医制度を揺るぎないものに強化していきたいと思います。
 腎臓病診療においては多職種連携が重要であり、「腎臓病療養指導士制度」を更に拡充し、看護師、管理栄養士、薬剤師の関連職種との連携も強化し、腎臓病診療に携わる専門職の裾野を拡大していきたいと思います。

3.腎臓学・腎臓病学の一層の進展

 学問を発展させることは、学会の存在意義であり、日本国民のみならず世界中の腎臓病患者の健康寿命の延伸に大きく貢献します。これまで日本腎臓学会は、CKD対策、国際化活動、研究基盤の確立(レジストリ、疫学研究)、学術誌の発行、学会主導の学術総会の開催、ガイドライン作成と普及啓発などで大きな成果を挙げてきました。今後も、基礎研究活動を活性化・支援するとともに、国際的な学術活動を推進し、J-CKD-DBを基底として、J-RBR、生体試料DBが上層部を構成する重層的DB構築を進め、会員の研究の発展に資するような取り組みを継続します。

4.社会活動へのコミットメント・連携の強化

 腎臓病学の発展と腎臓病診療の質向上、疾患克服に向けて、学会、行政、政策立案機関等の関係者と課題を共有するための活動を継続することが重要です。特に診療においては患者視点に立脚することが重要であり、患者の予後を改善するとともに生活の質を重視した診療を行うことが重要です。このためにpatient public involvementを如何に行っていくかを学会として検討する必要があります。また、国際標準を理解した上で日本の腎臓病診療を最適化することが重要であり、日本の腎臓病学・診療の適正な発展のための国際交流・連携を更に発展させます。また、関係する他学会との連携強化を継続し、分野横断的な取り組みを強化します。

5.伝統の継承と革新

 日本腎臓学会はこれまで、偉大な先人たちの先見性のある卓越したリーダーシップと、貢献精神に富む運営陣によって、大きな成長を遂げてきました。この伝統を継承するとともに、激動の時代の変革に柔軟に対応し、皆様とともに、医学・医療の発展に貢献するために、課題解決にあたりたいと考えております。