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解答と解説

解答と解説

  • 問題1. 解答:c
    解説

    × a CKDや糖尿病に特徴的な血管石灰化のタイプは、メンケベルグ型石灰化である。
    × b メンケベルグ型石灰化は、血管平滑筋細胞の中にPit-1を通してリンが取り込まれることによって、骨芽細胞様細胞への形質転換をきたし、進行していく。
    c 正しい。
    × d 複数の大規模なRCTでは、弁石灰化抑制に関してスタチンの有用性は示されていない。
    × e 25(OH)Vit.Dではなく、活性型ビタミンD(1,25(OH)2Vit.D)は腎臓および腸管からのリンの再吸収を増加させる。

    問題2. 解答:a, b
    解説

    a, b 2000年に新たにリン利尿ホルモンであるFGF23が同定され、ミネラル代謝に関する報告が多く見られるようになった。血清リンの上昇は末期腎不全になって初めて認められるが、リンの体内への蓄積はCKDのより早期の段階から始まっており、その刺激がPTHやFGF23といったリン利尿ホルモンの分泌を促す事が分かってきた。特にFGF23の上昇はPTHの上昇よりも早く、CKD stage G2の段階ですでに生じていることが報告され、活性型ビタミンD低下に関わっている。FGF23は、骨細胞および骨芽細胞によって産生され、常染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(autosomal dominant hypophosphatemic reckets/osteomalacia:ADHR) (Nat Genet 26:345-348, 2000)などの低リン血症性疾患の責任因子として発見されたフォスファトニン(リン排泄調節性ホルモン)である。FGF23がこのような生理作用を発揮するためには、標的臓器の細胞にFGF23受容体(FGFR1)と、その共役因子であるKlothoの発現が必要である事も明らかとなった(Nature 444:770-774, 2006) (J Biol Chem 281 6120-6123,2006)。Klothoの高発現は、近位および遠位の腎尿細管、副甲状腺、および脳といった組織に限定され、FGF23作用の主要標的となっている。したがって膜型Klothoのみではリン尿作用を有するとは言えない。分泌型klothoだと、FGF23依存無く、直接的にリン利尿作用があるという報告もある。
    × c カルシウムにはリン利尿作用はない。
    × d, e CKDにおいてビタミンD欠乏は高頻度に見られ、25-水酸化ビタミンDも活性型ビタミンDも共に低下する。活性型ビタミンDの産生抑制の機序として1つ目は腎機能が低下する事により産生の場をなくす事、2つ目は血清リンの上昇により1α-hydroxylaseを抑制しビタミンD活性化障害を助長する(Arch Biochem Biophys 154:566-574, 1973)事などがあげられる。つまり、高リン血症が末期腎不全患者における1,25(OH)2D産生低下の一因となると考えられてきたが、保存期である早期のCKDでは血清リン値は正常範囲で推移している事から、保存期における1,25(OH)2D産生低下における関与は否定的であり、これだけでは早期のCKDにおける1,25(OH)2D産生低下の説明は困難であった。その後FGF23が発見され、FGF23分泌は腎機能やPTHとは独立して1,25(OH)2D濃度を規定する事が示され、(J Am Soc Nephrol 16:2205-2215, 2005)1,25(OH)2D産生低下の3つ目の機序として、早期CKDにおけるFGF23上昇が主たる要因として挙げられた。

    問題3. 解答:b
    解説
    CKD-MBDにおけるP、Ca管理の基本を問う問題である。

    × a 血清Caは予後への寄与度は血清Pより低いが、国内外のコホート研究から正常上限をわずかに超えた高Ca血症でも予後の悪化が示され、2017年に発表されたKDIGOガイドライン改訂版では、高Ca血症の回避がステートメントに盛り込まれた。
    b PTH抑制のために使用されるカルシウム受容体作動薬は、活性型ビタミンD製剤とは異なり、血清カルシウム濃度を低下させる。
    × c, d 上記ガイドラインや日本腎臓学会編のCKDステージ3b-5診療ガイドライン2017では保存期CKDでは正常範囲内の血清Pに対するP吸着薬投与は推奨されず、生命予後改善の観点から食事療法を実施しても血清Pが正常範囲でない場合にP吸着薬投与が推奨される。なお、Ca含有P吸着薬は原則投与量の制限が示され、薬剤は血清Caに応じて選択する。
    × e 高P血症に対するP制限の基本は吸収率が高くP含有の多い無機Pを含む加工食品や飲料水の制限、P/タンパク含有比の高い食品の制限である。またタンパクの由来(動物性、植物性)も腸管からのP吸収に差があるため、考慮すべきである。逆に極端なタンパク制限は栄養障害の原因となり、生命予後を逆に悪化させる可能性がある。

    問題4. 解答:e
    解説
    慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常の治療方針を問う問題である。血管石灰化、骨折、総死亡のアウトカムに関連するので、慢性腎臓病患者の全身管理として重要である。
    症例は活性型ビタミンD、カルシウム非含有リン吸着薬、高カルシウム透析液を使用している血液透析患者で、アルブミンで補正すると明らかな高カルシウム血症、高リン血症を呈している。

    × 1) 骨生検はKDIGOガイドラインでは、予期せぬ骨折、難治性の高カルシウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症治療に非典型的な反応を示す場合、骨軟化症を疑い、標準的治療にも関わらず骨密度が低下していく症例を考慮するよう記されている。この症例では、まず骨代謝マーカーで見る。ルーチン検査のALPに加えて、腎機能に影響されない骨型ALP, TRACP-5bも有用である。
    × 2) アルファカルシドールの増量は高カルシウム血症、高リン血症をさらに増悪させる危険がある。
    × 3) 炭酸カルシウムは高リン血症を改善するかもしれないが、高カルシウム血症を増悪させる危険がある。
    4) 透析液カルシウム濃度の低下は高カルシウム血症を改善することが期待される。
    5) 炭酸ランタンの増量は高カルシウム血症を増悪させずに、高リン血症を改善することが期待される。

    問題5. 解答:c,e
    解説

    × a 保存期CKD患者では,シナカルセト塩酸塩の使用は推奨されず,保険適応にもなっていない。これは,保存期においてPTHはミネラル代謝の恒常性を維持するために分泌が亢進しており,シナカルセト塩酸塩を使用すると,低カルシウム血症,高リン血症が顕在化するためである。尚,腎移植後の遷延性副甲状腺機能亢進症では,シナカルセト塩酸塩により高カルシウム血症が改善することが示されているが,予後への効果は明らかでなく,やはり保険適応にはなっていない。
    × b エテルカルセチド塩酸塩は静注製剤のカルシウム受容体作動薬である。透析終了時に透析回路から投与可能であることから,確実な投与が可能となるとともに,服薬負担の軽減が期待される。
    c シナカルセト塩酸塩は,活性型ビタミンD製剤とは異なり,PTH分泌を抑制するとともに血清カルシウム,リン値を低下させる。この機序としては,PTH抑制による骨吸収の低下とともに,一過性の骨形成促進により骨へのカルシウム,リン移行が促進される病態が考えられる。また血清カルシウム値の低下のため炭酸カルシウムが増量され,その結果,血清リン値が低下する場合もある。
    × d KDIGOガイドラインではPTH値の管理目標として正常上限値の2倍から9倍(intact PTH 130~585 pg/mlに相当)と設定されている。一方,わが国では,日本透析医学会の統計調査の結果に基づき,intact PTH 60~240 pg/mlというより厳格な管理目標が設定されている。欧米諸国では近年,KDIGOガイドラインを背景にPTH値は上昇傾向にあることが報告されている。
    e シナカルセト塩酸塩の登場後,わが国の副甲状腺摘出術の手術件数は低下傾向にあることが二次性副甲状腺機能亢進症に対するPTx研究会により示されている。

    問題6. 解答:d
    解説

    a FGF23には、intactアッセイとc-terminalアッセイがあるが、そのいずれも透析導入などの腎予後を予測する。日本の臨床研究では前者が、欧米の研究では主に後者のアッセイが多く使われた。
    b 一般に、腎機能にかかわらず鉄の投与は、c-terminal FGF23を低下させることが報告されているが、クエン酸第二鉄に関しては保存期においてintact FGF23も低下させる。
    c 黒人では白人よりもPTH抵抗性が高い。
    × d 日本人の透析患者におけるintact PTH目標値は60~240 pg/mLであるが、KDIGOガイドラインでは、その目標管理域は正常上限値の2倍から9倍であり、日本人のそれより高い値まで許容している。
    e 日本では、25(OH)Dの測定はビタミンD欠乏性くる病/骨軟化症でしか保険償還されないが、KDIGOガイドラインでは保存期にPTHがかなり高い、あるいは上昇しつづける場合にその測定が推奨されており、低い場合には補正が推奨されている。
  • 問題1. 解答:b
    解説

    近年,糖尿病性腎症を含む様々な腎疾患の進展に,慢性炎症が深く関与することが知られている.炎症をコントロールする機構として,toll like receptor(TLR)に代表される細胞膜局在のpattern recognized receptors (PRR)に加え,細胞内局在のPRRとの関与が報告されている.このうち,NOD-like receptor family, pyrin domain-containing protein 3 (NLRP3)は,痛風,動脈粥状硬化などの無菌性炎症を惹起する刺激に応答することが知られている.

    × a NLRP1は炭疽菌毒素,細菌の細胞壁成分である,ムラミルジペプチド(MDP)を認識する.
    b NLRP3は尿酸結晶,シリカ,コレステロール結晶,アスベスト,アミロイドを認識する.また,近年糖尿病性腎症,ループス腎炎との関連も指摘されている.
    × c NLRC4はサルモネラ,レジオネラ菌などの鞭毛成分フラジェリンを認識する.
    × d AIM2は細菌,ウイルス由来の細胞質のDNA, RNAで活性化される.
    × e NLRP6は腸内の嫌気性菌であるバクテロイデスの認識に関わり,腸内細菌叢の恒常性の維持に関与することが知られている.

    問題2. 解答:a
    解説

    糸球体に結節をきたす疾患は、糖尿病性腎症以外でも単クローン性免疫グロブリン沈着症(monoclonal immune deposition disease, MIDD)、特発性結節性糸球体硬化症(idiopathic nodular glomerulosclerosis、INGS)、アミロイドーシス、イムノタクトイド/fibrillary腎炎などがある。

    a タンパク尿量は糖尿病でもネフローゼではないことも多く、またいずれの疾患でもタンパク尿量は多様であり、鑑別に有用とは言えない。
    × b INGSでは動脈硬化病変と重喫煙歴が重要である。
    × c MIDDを除外するために蛍光抗体法は必要である。
    × d イムノタクトイド腎症やfibrillary腎炎は電子顕微鏡により分類されるため必要である。
    × e MIDDでは、血中や尿中のM蛋白が重要で、特にMIDDのうち頻度の高い鎖沈着症では、血中の遊離軽鎖比や尿中ベンスジョーンズ蛋白が鑑別に重要である。

    問題3. 解答:d
    解説

    C3腎症(C3 glomerulopathy)は、dense deposit disease (DDD)とC3 glomerulonephritisの総称である。Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conferenceによる報告では、C3腎症の病理の特徴に補体の沈着、特にC3の有意な糸球体への沈着所見が重要で、C3腎症の原因を異常な補体の活性化、沈着、またはdegradationに関わるものとして、補体系の異常を含んでいるという表現になっている[1]。

    × 1. 補体異常が関与するC3腎症は、補体系の中でも第二経路(Alternative pathway)の過剰な活性化が病院と考えられている。このため、低C3血症を伴うことが多いが、低C4血症を伴うことは少ない。
    × 2. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conference [1]による報告にも記載されている通り、現在では必ずしも膜性増殖性糸球体腎炎像は必須ではない。
    3. これまでの補体活性化異常が関与する報告では、補体制御因子の分子異常、C3やB因子の異常による症例も報告されているが、自己抗体であるNefや抗H抗体を持つ症例の方が多く、特にDDDではその割合は80%程度とされている[2]。
    4. 解説のとおり、IF所見が診断に重要である [1]。
    × 5. C3腎症は補体依存性aHUSと同様の補体系分子異常、もしくは自己抗体が原因となるが、補体依存性aHUSと異なり、現時点ではエクリツマブの有効性については議論のあるところであり、エクリツマブはC3腎症の治療の第一選択薬として推奨されていない。

    参考文献:
    1. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conference. Kidney Int. 91, 539-551, 2017.
    2. Servais A, Noёl LH, Roumenina LT, Le Quintec M, Ngo S, Dragon-Durey MA, Zuber J, Karras A, Provot F, Moulin B, Grünfeld JP, Niaudet P, Lesavre P, Frémeaux-Bacchi V.: Acquired and genetic complement abnormalities play a critical role in dense deposit disease and other C3 glomerulopaties. Kidney Int. 82, 454-464,2012


    問題4. 解答:b
    解説

    1. SGLT2阻害薬を服用すると、空腹時の血中ケトン体濃度が軽度上昇する。心血管疾患関連死の抑制に寄与している可能性がある一方で、ケトアシドーシスを助長する懸念もある。
    × 2. 同等の血糖降下を有する薬剤ではSGLT2阻害薬ほど心血管疾患関連死抑制効果を認めないことから、別の機序が想定されている。
    × 3. 糖尿病性腎症ではポドサイトや尿細管細胞において、ミトコンドリアの形態は分裂(fission)に傾く。ミトコンドリアの分裂は一般的にその機能低下状態において認めやすく、ミトコンドリア膜電位の低下、ATP産生低下、アポトーシスと関連するとされる。
    × 4. マイクロRNAと標的遺伝子の関係は「多対多」であることが多い。
    5. 糖尿病合併オートファジー不全マウスの表現型から、オートファジーは糖尿病性腎症において腎保護的に機能すると考えられている。
  • 問題1. 解答:a
    解説

    AKIは年々増加傾向にあり、合併すると患者予後に影響することが多く報告され、近年注目を集めている疾患群である。本邦では2016年に日本腎臓学会、日本集中治療医学会、日本透析医学会、日本急性血液浄化学会、日本小児腎臓病学会の5学会合同で『AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016』が刊行されている。

    a KDIGO基準におけるAKIステージ2は、クレアチニン基準で2.0〜2.9倍上昇とされている。本邦の『AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016』では、KDIGO基準はRIFLE、AKIN基準と比較し生命予後の予測能に関して同等もしくは優れていると報告されていることから、KDIGO基準を使用することが提案されている(2C)。
    × b 血清クレアチニン値はAKI発症の24~48時間後に上昇する一方、尿中NGALは約2時間後から上昇するとされており、AKIの早期診断に用いられている。
    × c 低用量(1-3μg/kg/min)のドパミン投与は健常人において腎保護作用が期待されてきたが、近年のメタアナリシスで低用量ドパミンは生存期間を延長しないこと、透析導入率を低下させないこと、腎機能を改善させないことなどが明らかにされ、KDIGOのガイドラインではAKIの予防および治療目的では低用量ドパミンを使用しないことが推奨されている(1A)。
    × d 敗血症はAKIをきたす最も頻度の高い病態であり、50~60%にAKIが発症すると報告されている。
    × e 従来可逆性と考えられていたAKIは実は高率にCKDに進展することが近年報告されている。2012年のメタアナリシスではAKIを発症するとその後のCKDのハザード比は8.8倍、ESRDのハザード比は3.1倍に上ると報告されている。

    問題2. 解答:c, d
    解説

    a 経過中の血圧が130/80mmHg未満であると腎予後がよいことが報告されている。
    b 尿蛋白量は1g/日以上であると腎予後が不良である。
    × c 肉眼的血尿のエピソードが予後不良因子となる報告はない。
    × d 予後との関連性を示す報告はない
    e  

    問題3. 解答:e
    解説

    常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の診断基準は,表に示す通りである。
    本症例は,両親は精査をしていないためADPKDかどうか不明である.祖母はADPKDの重要な合併症である,くも膜下出血を発症しているためADPKDの可能性はあるが,確定はできない.
    家族内発症が確認されていない15歳以下では,CT,MRI,または超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認されることがADPKDの診断基準である.また,15歳未満で超音波検査をした場合,嚢胞腎を受け継いでいても検査で嚢胞が見つからない場合が10%弱にあり,30代で検査をすれば,98%以上の確立で診断ができるとされる.よって,本症例はADPKDである可能性があるが,現時点では確定診断がつかない.両親(特に母親)の精査を行うことが必要である.もし両親のどちらかがADPKDと診断された場合には,本例はADPKDの可能性があるため経過観察が必要である.

    表1


    問題4. 解答:a
    解説

    ループス腎炎の寛解導入療法の治療効果をみる臨床試験は,24週後あるいは12ヶ月後の腎炎に対する治療奏功率(response rate)の優劣で評価されることが多い1-3).治療奏功率は臨床試験毎に事前に設定される.尿蛋白量,尿沈渣,血清Cr値により治療奏功が定義されることが多い.例えば,「治療開始24週後の評価で,1)尿蛋白 0.5g/日未満,2)尿沈渣 正常,3)血清Cr値 正常またはベースラインの120%未満をすべて満たす場合に治療奏功とする」のように定義される.血清補体価や抗dsDNA抗体価は,SLE Disease Activity Index (SLEDAI)の評価項目に入っており,全身性エリテマトーデスの評価においては重要であるが,ループス腎炎の治療効果をみる主要エンドポイントに含まれることは通常ない.

    参考文献
    1) Appel GB, Contreras G, Dooley MA, Ginzler EM, Isenberg D, Jayne D, Li LS, Mysler E, Sanchez-Guerrero J, Solomons N, Wofsy D: Mycophenolate mofetil versus cyclophosphamide for induction treatment of lupus nephritis. J Am Soc Nephrol 2009;20:1103-1112.
    2) Wofsy D, Hillson JL, Diamond B: Abatacept for lupus nephritis: Alternative definitions of complete response support conflicting conclusions. Arthritis Rheum 2012;64:3660-3665.
    3) Furie R, Nicholls K, Cheng TT, Houssiau F, Burgos-Vargas R, Chen SL, Hillson JL, Meadows-Shropshire S, Kinaszczuk M, Merrill JT: Efficacy and safety of abatacept in lupus nephritis: a twelve-month, randomized, double-blind study. Arthritis Rheumatol 2014;66:379-389.

  • 問題1. 解答:a
    解説

    a 最近の調査では、小児期発症の微小変化型ネフローゼ症候群の30-40%は、成人期でも再発を繰り返すため、移行期医療の対象疾患と考えられるようになってきた。
    × b 成人のMCNSに対する初回治療のPSL投与期間は1-2年が一般的であるのに対して、小児期発症のNSの初期治療としては、PSLの8週間投与(国際法)が一般的である。
    × c 小児期のネフローゼ症候群の治療では、ステロイドによる成長障害(低身長)を防ぐため、免疫抑制薬を積極的に併用し、ステロイドの減量中止を行う。
    × d 平成27年7月に成人に対する医療費助成制度が充実し、ネフローゼ症候群が指定難病に追加された。 成人期を迎えたネフローゼ症候群患者に対しても高額な免疫抑制薬を処方しやすくなったため、今後はスムーズな移行が期待される。
    × e 2016年に発表された、「思春期・青年期の患者のためのCKD診療ガイド」には、移行プログラム作成の要点が記載されており、移行プログラムの作成が期待される。

    問題2. 解答:d
    解説

    臨床経過と3主徴[破砕状赤血球を伴う溶血性貧血(Hb10 g/dL未満)、血小板減少(15 万/μL未満)、急性腎障害(血清クレアチニンが年齢基準値の1.5倍以上)から志賀毒素産生性大腸菌によるHUS(STEC-HUS)が最も疑われる。 なみに3歳児の血清クレアチニン基準値は0.27 mg/dLである。

    a.b.c 志賀毒素による内皮細胞障害から微小血管症性溶血性貧血が惹起される。このため、溶血によるLDH上昇、ハプトグロビン低下、ビリルビン上昇を伴う。
    × d 自己免疫性溶血性貧血ではないためクームス試験は陰性である。
    e STEC感染症がHUSに進展する危険因子として、末梢血WBC数増多と血清CRP上昇が知られている(溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン、五十嵐隆 編集、東京医学社、2014)。

    問題3. 解答:d
    解説

    腎疾患の移行期医療における主に小児と成人の違いについて出題した。

    × a CAKUTでは塩分喪失性の状態が多く小児期では塩分摂取を推奨されているケースが多く、成人期においてもその塩分喪失状態に応じて塩分摂取の推奨を継続する可能性は高い。 しかしながら、成人期において高血圧や肥満が合併してくると、状態に合わせた塩分制限が必要となりうる事は理解する必要がある。
    × b 詳細な紹介状は大変重要であるがそれ単独で移行プログラムが完了するわけではなく、医師のみでなく専門看護師、心理職、ソーシャルワーカーなどのチームによって進められるべきである。
    × c 成人ネフローゼ症候群においてステロイド隔日投与の有効性は明らかではない。そのため、小児期でステロイド隔日投与を実施していた場合は、必ずしも踏襲する必要性はない。
    d 成人のIgA腎症において、扁摘パルス群はステロイドパルス療法単独治療群より尿蛋白減少率が高いという報告がある[Kawamura et al. Nephrol Dial Transplant 2014;29(8):1546-1553.]。 我が国においては、非寛解例においては腎機能を考慮し扁摘パルス療法も考慮される。(エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2017)。
    × e 小児ループス腎炎の治療に関するエビデンスは乏しく、成人ループス腎炎の治療ガイドラインに沿って治療を行う。シクロホスファミドとミコフェノール酸モフェチル
  • 問題1. 解答:d
    解説

    × a RASS:正常血圧正常アルブミン尿1型糖尿病症例に対するRAS阻害薬の微量アルブミン発症抑制効果を検討、結果、予想外にロサルタン群では微量アルブミン尿発症が増加した。
    × b VA NEPHRON-D:顕性腎症症例に対してACE阻害薬--ARB腎障害発症抑制効果を検討したが、有害事象増加で中止された。
    × c Kumamoto Study:2型糖尿病症例に対して厳格血糖管理により細小血管障害の発症抑制効果が確認された。合計110例の規模で行われているため、死亡率や末期腎不全への進行を観察するには適さない。
    d ADVANCE:2型糖尿病症例に対して血糖降下薬としてグリクラジドを優先して用い、強化療法群(HbA1c値≦6.5%を目標)と通常療法群(7~8%を目標)を比較検討した試験である。HbA1c値は強化療法群では6.5%(通常療法群は7.3%)と、優れた血糖管理が達成された。その結果、強化療法群で腎症(蛋白尿)が21%減少し、末期腎不全もHR0.35(95%CI 0.18-0.70)で有意に抑制した。しかしながら、他の大規模試験でこのような厳格血糖管理の腎不全進行効果は確認されていない。(そのほかの選択肢)
    × e ALTITUDE:イベントリスクの高い2型糖尿病症例に対してレニン阻害薬アリスキレンをACE阻害薬・ARBに上乗せしたベネフィットが確認されず、有害事象が増加した。

    問題2. 解答:b, c
    解説

    × a GLP-1受容体作動薬は膵臓からのインスリン分泌を促進するとともに、グルカゴンの分泌を抑制する作用を持つ。
    b GLP-1受容体作動薬は食欲を抑制して体重を減少させる。
    c GLP-1受容体作動薬は血圧を低下させることが知られており、これには利尿作用が関わっている可能性がある。
    × d GLP-1受容体作動薬は血管拡張作用を示すことが報告されている。
    × e GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体に作用して、AMP-kinase活性を亢進させる。

    問題3. 解答:c
    解説

    糖尿病性腎臓病におけるアルドステロン拮抗薬についての基本的な知識を問う問題である。

    a 添付文書で定められている。
    b スピロノラクトン、エプレレノン、フィネレノンのいずれにおいてもRCTにおいてアルブミン減少効果が示されている。
    × c エプレレノンで示されているのは心不全合併例における心保護効果であり、心不全を合併していない症例への予防効果については明らかになっていない。
    d 添付文書で定められている。
    e RA系阻害薬との併用により、高カリウム血症のリスクが高くなる可能性がある。

    問題4. 解答:b(1.5)
    解説

    バルドキソロンメチルは、糖尿病性腎臓病をはじめとした慢性腎臓病における腎保護効果に関して臨床試験が進行中の薬である。国内外の第II, III相試験では本薬剤の投与により糸球体濾過量が増加することが報告されており、主な作用機序は酸化ストレス応答に寄与する転写因子Nrf2を安定化することによるとされる。

    1. Nrf2は酸化ストレス応答にかかわる転写因子である。
    × 2. 酸化ストレス非存在下ではNrf2は転写・翻訳後にユビキチン-プロテアソーム系で常に分解され、一定の低濃度に保たれている。一方、酸化ストレス下ではNrf2がユビキチン化を逃れて核内に移行する。
    × 3. バルドキソロンメチル投与下でも酸化ストレス下と同様に、Nrf2の分解が減少し、核内への移行が増える。これにより、抗酸化ストレス・抗炎症にかかわる遺伝子の発現が増加する。
    × 4. 慢性腎臓病のある糖尿病患者においてバルドキソロンメチル投与による糸球体濾過量の上昇が報告されている。
    5. バルドキソロンメチルは国外第3相試験であるBEACON試験において心不全の報告が多く、試験途中で中止となった。その後、日本国内では心不全のリスクが高い患者を除き、第2相試験より再開された。

    問題5. 解答:c(2.3)
    解説

    PHD阻害薬は、現在国内外にて大規模臨床試験が進行中の新規腎性貧血治療薬である。低酸素誘導因子HIFの安定化をもたらす本薬剤は、EPO遺伝子の転写を促進することで貧血を改善する。従来のESA注射製剤と比較して低侵襲であり、生理的なEPO濃度で貧血改善効果がもたらされることや鉄代謝の適正化などが報告されている。

    × 1. 慢性炎症刺激はNF-κBによる調節などを介してエリスロポエチン(EPO)遺伝子発現を抑制する。一方、低酸素刺激は生体内におけるEPO発現を増加させる。
    2. PHDはHIFα鎖のプロリン残基を水酸化し、ユビキチン・プロテアソーム分解をもたらす酵素である。同阻害によってHIFは安定化し、赤血球造血が亢進する。
    3. PHD阻害薬は経口内服可能な小分子化合物であり、従来のESA注射製剤と比較して低侵襲であることが期待される。
    × 4. PHD阻害薬による赤血球造血の主な作用部位は尿細管周囲の線維芽細胞様細胞であり、REP細胞(renal erythropoietin-producing cell)とも称される。
    × 5. PHD阻害薬による腎性貧血治療は、血清ヘプシジン値を低下させる。EPOによる造血刺激によって赤芽球からエリスロフェロンが産生され、同因子を介して間接的にヘプシジン産生が抑制される。ヘプシジンは消化管からの鉄吸収やマクロファージからの鉄リサイクルを抑制する。

    問題6. 解答:d
    解説

    抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブ(Eculizumab: ECZ)は典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome: aHUS)の特効薬であるが、髄膜炎菌感染症が重篤な合併症として知られている。本剤により髄膜炎菌感染リスクは健常者の1,000倍以上に増加しかつ重篤化する。本邦でもECZ治療を受けていた患者の髄膜炎菌感染症による死亡が複数報告されている。髄膜炎菌感染症の感染予防の為には、本剤投与開始の2週間前までに、本剤使用者に保険適応がある4価髄膜炎菌ワクチンの接種が必要とされている。しかしながら、補体が作用しない環境下では、ワクチンでは髄膜炎菌感染への防御には不十分である。そのため、例えワクチンを接種していても、その髄膜炎菌感染症を少しでも疑った際には速やかに第三世代セフェムの投与を行う必要がある。髄膜炎菌感染症による頭痛、嘔気・嘔吐、関節痛などの症状はインフルエンザウイルスにも類似するため注意すべきである。一方、本患者は末梢血WBCの増加やCRPの上昇を認める点が、インフルエンザウイルス感染とは異なっており、髄膜炎菌感染症の可能性を疑った対応をすべきであり、血液培養実施後に第三世代セフェムの投与を行い、入院下で経過観察すべきである。

    × a 髄膜炎菌感染症は発症24時間以内の死亡事例も多い。疑いがある際は入院加療させるべきである。
    × b 検査上は軽度の脱水が推測させるために輸液を行っても良いが、優先度はdに及ばない。
    × c インフルエンザウイルス感染症と検査所見が異なっており、迅速検査も陰性であったため、現時点では必要がない。
    d 正解。複数セットの血液培養実施後に速やかに投与されるべきである。
    × e aHUSの再発を疑わせる検査所見はないため不適切である。

    問題7. 解答:c(2.3)
    解説

    × 1. チオプリン製剤(アザチオプリン、6-メルカプトプリン)は核酸のプリン代謝経路で代謝され、プリンアナログとして細胞障害を引き起こす。NUDT15はチオプリン製剤の代謝に関与する酵素であり遺伝子多型が存在する。活性低下型アレルをホモで持つ患者では、重篤な副作用(急性白血球減少症、全脱毛)が高頻度に生じることが最近明らかとなった。活性低下型アレルの頻度は日本人をはじめ東アジア人で高い。
    2. ミコフェノール酸モフェチルはプリン代謝拮抗薬であり、de novo経路のプリン合成の律速段階となるIMPDHを阻害する薬剤である。
    3. ベリムマブはBリンパ球の生存に寄与するサイトカインであるBLySを標的とした完全ヒト型モノクローナル抗体である。
    × 4. ミゾリビンはプリン代謝拮抗薬であり、ミコフェノール酸モフェチルと同じくIMPDHを阻害することで核酸合成を抑制する。TPMTはチオプリン製剤の代謝に関与する酵素であり、その遺伝子多型による活性低下は、主に欧米人(白人)でみられるチオプリン製剤による重篤な骨髄抑制と関連する。
    × 5. リツキシマブはヒトのB細胞が発現するCD20を標的としたモノクローナル抗体であり、マウス由来可変領域とヒト由来定常領域から成るキメラ抗体である。
  • 問題1. 解答:c
    解説

    a 糖新生は主に肝臓で行われるが、長期の絶食では肝臓と腎臓の糖産生比率はほぼ同等となる。参考文献:Owen OE, Felig P, Morgan AP, Wahren J, Cahill GF Jr. Liver and kidney metabolism during prolonged starvation. J Clin Invest. 1969; 48: 574-83.
    b 腎臓は部位によって異なるエネルギー源を利用する。参考文献:Gullans SR. Metabolic basis of ion transport. The Kidney, 6 th ed. 2000: 215-246.
    × c 糸球体で濾過された大部分の糖がSGLT2を介して再吸収される。参考文献:Ghezzi C, Loo DDF, Wright EM. Physiology of renal glucose handling via SGLT1, SGLT2 and GLUT2. Diabetologia. 2018; 61: 2087-2097.
    d 糖尿病患者では、空腹時・食後ともに腎臓での糖取り込みが増加している。参考文献:Meyer C, Stumvoll M, Nadkarni V, Dostou J, Mitrakou A, Gerich J. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998; 102: 619-24.
    e 予後は良好である。参考文献:Rieg T, Vallon V. Development of SGLT1 and SGLT2 inhibitors. Diabetologia. 2018; 61: 2079-2086.

    問題2. 解答:b
    解説

    × a 食品のたんぱく質の栄養価には、含まれるアミノ酸に基づくアミノ酸スコアと、摂取したたんぱく質の消化吸収率(DIAAS)の2つが重要である。一般的にDIAASは動物性たんぱく質の方が高い。
    b 赤肉など消化吸収がよい食品はHFが起きやすい。
    × c 植物性たんぱく質のリン含有量は多いが、フィチン酸と結合しているため消化管からの吸収率が低く、血清リン濃度は上昇しにくい。
    × d AGEsは焼く、揚げるなど高温で乾燥した加熱調理法で生じやすく、とろ火で煮る(stewing)、蒸す、ゆでるなど低温で高湿度の調理法では生じにくい。
    × e DASH食とは果物・野菜を多く摂取し、飽和脂肪酸が少ない食事パターンである。オリーブオイルを多く用いる食事は地中海食である。

    問題3. 解答:b, d
    解説

    × a CKD患者において、食塩摂取量は血圧・尿蛋白と正の関連がある。
    b 24時間蓄尿がゴールドスタンダードとされている。
    × c Tanakaの式はCKD患者において起床後第1尿を用いた場合信頼性が高いとされている。健常人ではそれ以外の随時尿に対しても使用可能である。第2尿を用いるのはKawasakiの式である。
    d 食塩摂取量の多寡は、心血管疾患の発症と関連するという報告がある。
    × e 高齢CKD患者の食塩摂取制限は慎重を要するが、必要がないわけではない。

    問題4. 解答:e
    解説

    以前よりたんぱく質制限はリン制限につながることが知られており、リン制限はたんぱく質制限と同等に扱われてきたが、近年、主に透析期を中心に、たんぱく質を摂りながらリンを制限した方が予後に良好な影響を与えると考えられるようになってきた。

    × a 高エネルギー補助食品による総エネルギー量の維持がたんぱく質制限による低エネルギーの問題を解決するかについては証明されていない。保存期CKDにおける筋肉量減少を介して実現された血清Crの相対的低値が、透析期の予後不良因子に通じることを考えれば、特に低栄養に陥りやすい高齢者に闇雲にたんぱく質制限は勧められないであろう。
    × b もちろん、リン制限が不要というわけではなく、食事からの不必要なリン摂取は減らしつつ、効果的にリン吸着薬を使っていくことが肝要である。特に食品添加物に含まれることが多い無機リンは有機リンに比べて腸管からの吸収効率が高く、避けるべきとされている。
    × c 一方、カルシウム製剤については血管石灰化を惹起する恐れがあることから、必要最小限に留めるべきと考えられている。血清カルシウム濃度を基準値内に保つことの正当性は証明されておらず、むしろ予後を悪化させることが懸念されている。
    × d マグネシウムに関しては、これまで高マグネシウム血症による弊害ばかりが取り沙汰されてきたが、近年その抗石灰化作用が注目を集めており、低マグネシウム血症を放置することのデメリットが指摘されている。
    e 確かにタンパク質制限を徹底するとリン摂取量は減少するが、同時に低エネルギーに陥りやすくなるため、必ずしも予後の改善にはつながらない(本文図1)。

    問題5. 解答:d
    解説

    a 適切なエネルギー投与量とは、患者個々の総エネルギー消費量に見合った量である。総エネルギー消費量は基礎代謝量、食事誘導性熱産生、身体活動によるエネルギー消費量、の合計である。
    b 間接カロリメーターは三大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)の酸化過程で消費される酸素と、産生される二酸化炭素を測定してエネルギー消費量を算出する方法であり、測定条件や測定方法が適切であればエネルギー投与量の算出方法として有用性が高い。
    c Harris-Benedict式は今から100年近く前に作られた基礎(安静時)エネルギー消費量の予測式であるが、高齢女性では実測値よりも多めに算出される。安定したCKD患者においても、実測値よりも多めに算出されることを念頭に置く必要がある。
    × d 保存期CKD患者では、基礎(安静時)エネルギー消費量は健常人と同じ、または軽度低下しているとの報告が多い。
    e 週3回のHDおよびCAPD患者に対するエネルギー摂取量としては、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では30~35 kcal/kg 標準体重(BMI=22)/日を推奨している。

    問題6. 解答:e
    解説

    × a 血清アルブミン値の測定法は、従来のBCG法と改良BCP法が混在している。そのため、血清アルブミン値を比較する際には、施設間や測定のタイミングに注意を要する。
    × b 現在のダイアライザーは、β2-ミクログロブリンクリアランスとアルブミンふるい係数によりⅠ-a、Ⅰ-b、Ⅱ-a、Ⅱ-b、の4種の他、S型を合わせた計5種に機能分類されている。
    × c 血清アルブミン値は、低栄養だけでなく炎症、肝障害、悪性腫瘍の合併、透析などの因子の影響を受ける。低栄養以外の原因が存在しないか精査する必要がある。
    × d Protein energy wastingの診断基準には、心血管疾患の既往歴とC反応性蛋白は、含まれていない。
    e nPCRは年齢とともに低下する傾向がある。日本腎臓学会による「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」や日本透析医学会による「慢性透析患者の食事療法基準」の基準値0.9~1.2 g/kg/dayよりも少ない患者が多数存在する。
  • 問題1. 解答:a
    解説

    腹部膨満、若年からの高血圧、慢性腎不全とくも膜下出血の家族歴から多発性嚢胞腎患者であり、発熱、左背部の鈍痛、尿所見で白血球>100から腎嚢胞感染と診断される。

    a 閉鎖腔である嚢胞感染に対し、脂溶性で嚢胞透過性良好なニューキノロン系抗菌薬は、嚢胞感染症治療の第一選択として推奨される。
    × b 胞感染の起因菌としては大部分が腸管内由来の細菌で、なかでもグラム陰性桿菌が多い。
    × c 経静脈的にニューキノロン系抗菌薬を1〜2週間投与しても発熱が続いている場合は、治療抵抗性と判断しドレナージの適応と考えられる。
    × d 超音波、CTスキャン、およびMRIで感染嚢胞を検出できなかった割合はそれぞれ94%、82%、および60%であり、これらの画像診断では感染した嚢胞の同定は困難であり、最近では感染嚢胞の検出におけるPET-CT有用性が報告されているが、保険適用外である。
    × e 我が国の透析患者の死因ではADPKDでは心不全、脳血管障害についで感染症は第3位である。

    問題2. 解答:c
    解説

    最も多い腎嚢胞性疾患は単純性腎嚢胞である。50代の女性では10%弱に単純性腎嚢胞を認めると報告されている。本症例では現在のところ家族歴を認めないため、単純性腎嚢胞を否定できない。しかし、高血圧やクレアチニン値の上昇を認めるため、最も多い遺伝性腎疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)も否定できない。本症例で次に必要な検査は腹部単純CTを行い、腎嚢胞の数、位置、大きさを確認することで、確定診断できる可能性が高い。

    × a 腎生検が必要とされる場合も稀にあるが、侵襲的な検査であり、次に行うべき検査ではない。
    × b ADPKDと診断された場合には頭部MRAを行い、脳動脈瘤の有無を確認する必要がある。
    c 腹部単純CTを行うことで、腎嚢胞の個数、数、大きさがわかり、確定診断が可能となる。
    × d 腹部単純CTで単純性腎嚢胞やADPKDに特徴的な腎嚢胞ではない場合、他の嚢胞性腎疾患との鑑別に遺伝子診断が必要とされることもある。
    × e 正確な腎機能を確認するためにはイヌリンクリアランスが望ましいが、確定診断されていない状況で次に行うべき検査ではない。

    問題3. 解答:b
    解説

    主な遺伝性嚢胞性腎疾患の責任遺伝子について問う問題。

    × a 最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎の責任遺伝子はPKD1が85%、PKD2が15%とされていた。 しかし近年、GANAB遺伝子など、その他の責任遺伝子の報告も散見される。
    b 集合管の拡張と胆管異形成および肝内門脈周囲の線維化を含む肝病変を特徴とする常染色体劣性多発性嚢胞腎は、新生児期に症候を示す場合が多い。 主な責任遺伝子はPKHD1である。なお、問題文中のNPHP1はネフロン癆(古典的には若年性ネフロン癆)の責任遺伝子である。
    × c ネフロン癆は腎髄質に嚢胞形成を認める疾患であり、組織学的には、進行性の硬化、硝子化糸球体を伴う尿細管間質性腎炎像を呈する。 遺伝形式は主として常染色体劣性遺伝を示し、責任遺伝子は20種類以上ある。NPHP3は古典的には平均年齢19歳頃に末期腎不全に至る思春期ネフロン癆の責任遺伝子である。
    × d 髄質嚢胞性腎疾患は、常染色体優性遺伝形式をとる進行性の尿細管間質障害を示す疾患であるが、疾患名に反し多くの症例で病初期には腎嚢胞を認めないことから、 近年、常染色体優性尿細管間質性腎疾患と呼称されるようになった。UMODはその責任遺伝子の1つである。
    × e ジュベール症候群は筋緊張低下、呼吸異常、眼球運動失行、小脳虫部低形成あるいは欠損を呈する疾患であり、常染色体劣性遺伝形式をとる。 一次繊毛の障害が原因であり、ネフロン癆関連繊毛病の1つである。CEP290を含め、複数の責任遺伝子が報告されている。

    問題4. 解答:a
    解説

    ARPKDでは、これまで考えられたよりも軽症例が相当数存在することが明らかになってきた。したがって、ARPKDは成人においても考慮すべき鑑別疾患である。よって、いかなる年齢においても診断しえる。腎臓に嚢胞を形成する疾患は多数存在し、そのいずれもが鑑別診断となる。現在国際的によく使用されているARPKDの診断基準を表に示す。遺伝性嚢胞性腎疾患では、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)が鑑別すべき疾患として重要である。実際的にはエコー所見と、同胞の本疾患既往が重要である。診断に遺伝子解析は必須ではないが、診断が困難な症例では有用である。

    a ARPKDは成人においても考慮すべき鑑別疾患であり、いかなる年齢においても診断しえる。
    × b 基本的に頻度に性差はみられない1)
    × c 臨床・病理的に診断可能で、診断には遺伝子解析は必須ではない。
    × d 集合管の拡張が腎の主病変である。
    × e 胆管の異形成と肝内門脈周囲の線維化を特徴とする。

    1に加えて2の一項目以上を認める場合にARPKDと診断する。

    1.皮髄境界が不明瞭で腫大し高輝度を示す典型的超音波画像所見

    2.a) 両親に腎嚢胞を認めない、特に30歳以上の場合
       b) 臨床所見、生化学検査、画像検査などにより確認される肝線維症
       c) ductal plateの異常を示す肝臓病理所見
       d) 病理学的にARPKDと確認された同胞の存在
       e) 両親の近親婚


    (文献1)の英文を翻訳)
    文献
    1) Sweeney WE, Gunay-Aygun M, Patil A, Avner ED. Childhood Polycystic kidney disease. In: Avner ED, Harmon WE, Niaudet P, Yoshikawa N, Emma F, Goldstein SL (eds) Pediatric Nephrology, 7th edition. Heidelberg: Springer, 2016:1103-1153


    問題5. 解答:a
    解説

    生来健康で偶然の血液検査時に腎機能障害を指摘された例である。同胞がネフロン癆と診断されており、本例も同じ疾患である可能性が高い。

    a 腎外症状を認めない狭義のネフロン癆としては20種類の遺伝子が原因遺伝子として報告されているが、NPHP1は最多の原因遺伝子でネフロン癆の半数以上を占める。さらに、ネフロン癆に網膜色素変性症や骨疾患、多指などの腎外症状を合併するネフロン癆関連シリオパチー(Senior-Løken症候群、Bardet-Biedl症候群など)を含めると、約100種類の遺伝子がネフロン癆の原因遺伝子として報告されている。
    × b 特異的な治療はない。
    × c ネフロン癆は常染色体劣性遺伝疾患であり、基本的に親子での遺伝はない。
    × d 学校検尿では検出が難しく、感冒での医療機関の受診時に血液検査をした場合や、職場での健康診断時に偶然発見される例が多い。
    × e ネフロン癆では皮髄質境界部に遠位尿細管起源と考えられる嚢胞が多数見られる。また尿細管基底膜の不均一像が特徴的である(杉本圭相、小児科診療61; 1731-1737, 2018)。一方で嚢胞が目立たず間質障害が著明な例も存在する。糸球体基底膜の肥厚はAlport症候群の所見である。

    問題6. 解答:a(1.2.3)
    解説

    1. ADTKDの病理所見は、選択肢の文章のように、非特異的なものとなっている。
    2. 早期からの尿酸値上昇がADTKD-UMODの臨床症状の特徴である。これは、異常uromodulin蛋白が、NKCC2やROMKの蛋白輸送に影響を及ぼし、これら蛋白の機能が阻害されることによって、近位尿細管でのNa及び尿酸再吸収が増加し、尿酸排泄が低下するためと考えられている。
    3. ADTKD-MUC1では、ほとんどの遺伝子異常がvariable number tandem repeats (VNTRs)内に認められ、この部位はPCRが困難であることから遺伝子解析が難しい場合が多い。
    × 4. 検尿異常が乏しいことが、ADTKDの特徴である。
    × 5. ADTKDでは、腎臓のサイズが保たれる事が知られている。