APSN海外CME参加報告について
中国腎臓学会でのAPSN-CME courseに参加して
中国腎臓学会でのAPSN-CME courseに参加して
東京大学 腎臓・内分泌内科 長谷川頌
2019年9月19日から21日まで中国腎臓学会(Chinese Society of Nephrology; CSN)およびAPSN-CME courseに参加させていただきましたので、ご報告いたします。
本年度のCSNは、かつて「東方見聞録」の中でマルコ・ポーロがその美しさを絶賛した 浙江省・杭州市で行われました。 9月19日は成田空港から4時間のフライトで杭州蕭山国際空港に到着し、そのまま会場併設のホテルに向かいました。 案内されたホテルは快適でしたが、英語を話せる方は少なかったので、杭州は北京・上海とは違って海外からの来客に慣れていないのかもしれません。 到着してまずはCSN&KDIGO Joint Symposiumに向かったところ、Nan Chen先生の講演が行われていました。ちょうど新規腎性貧血治 療薬であるHIF-PH阻害薬の中国におけるPhase3試験の結果がNew England Journal of Medicineに掲載されたところであり (保存期腎不全患者 [N Engl J Med 2019;381:1001-1010]、透析患者[N Engl J Med 2019; 381:1011 1022])、それらの著者である Chen先生の口演後はディスカッションが大変盛り上がっていました。中国語で行われているその他のセッションも少し覗きましたが、症例をベースにしたカンファレンスなど 日常臨床に生かせるものが多いことも印象的でした。
9月20日の朝からAPSN-CME courseが始まりました。ISNおよびAPSNで中心的な仕事を担っている先生方(David Harris先生、南学 正臣先生、Sydney Tang先生)と中国国内の先生方が1人ずつセットで司会をするスタイルで行われました。講演は基礎から臨床まで幅広い内容でしたが、特に中国で行われる臨床研究のデータベースの豊富さ・患 者数の強みが印象的でした。基礎研究の講演では、「米国にある中国人のラボ」からの報告も多く見られました。最初は資金・人材を中国人が用意して米国の大学がそれを受け入 れて場所を提供してラボを立ち上げる、というスタイルは日本人にはあまり見られない形なので興味深く拝見すると共に、今後の科学界において中国のプレゼンスが上がっていくであろうことを実感させられました。 CME courseには日本からだけでなく、他のアジア太平洋諸国からの参加者も招待されており、中でも韓国のTae Hoon Kim先生とは昼食をとりながらお互いの臨床・研究環境について意見を交わすこともでき、 楽しい時間を過ごすことができました(ちなみに、日本で行われるCME courseでも日本に来ている留学生の先生方との交流を通して色々な世界を知ることができたので、国際交流に興味のある先 生にはお勧めです)。最後に、今回のCSN学会長であるJianghua Chen先生・演者の先生方・APSNからの派遣者で写真を撮り、セッションは終了しました。
9月21日は帰りの飛行機まで少し時間があったので、メイン会場で行われる講演を覗くことにしました。 基本的には中国語で行われるのですが、海外からの演者の場合はスライドが中国語に訳されます(英語のスライドと翻訳された中国語のスライドが2画面で同時に映し出されるスタイルです)。 英語では南学正臣先生・Benjamin Humphreys先生の講演があったのですが、南学先生の講演時間に会場に行くと、なぜか講演がすでに終わって 南学先生が盾をもらっているところでした。後で南学先生に伺うと、「会場に到着すると突然の時間変更で自分が講演する時間が30分早まっており、次のHumphreys先生も Masaomiの講演を聞きに来たつもりが今から講演してくださいと言われて少し驚いていらっしゃった」とのことで、そのように想定外の出来事が起こるのも海外学会らしいのかもしれません。
なお、CME course以外でも学会中に思いがけない再会がありました。私は、以前に勤めていた国立国際医療研究センターにおける海外交流の一環でベトナムのbach mai hospitalを見学したことがあるのですが(2015年)、 その時に案内してくれて、日本にも見学に来てくれた同世代のThuy An先生と偶然会場で会うことができました。このような 活動を通して世界が広がり、将来的には自分たちの世代でも国際的な共同研究につなげることができればよいなと思っております。
最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった日本腎臓学会グローバル連携 強化委員会の先生方・過去の参加経験についてご教示くださった東京大学小児科の張田 豊先生に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
韓国のDr. Tae Hoon Kimと
ベトナムのThuy An先生と
Asian Pacific Society of Nephrology (APSN)
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