Journal(学会誌)
腎臓移植推進に向けて
腎臓移植推進に向けて
日本腎臓学会誌への総説「腎移植」連載開始のご案内
日本腎臓学会理事長 浅野 泰
日本腎臓学会の定款に記されている目的は、腎臓学およびこれに関連する諸分野の研究調査を行なうと共に、知識の普及を図り、もって学術の発展に寄与することとあります。
わが国の腎疾患の診断・治療水準は欧米諸国と比較し遜色ないものです。末期腎不全の原疾患に占める比率の高い、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎臓病などの領域において、基礎研究から臨床において大きな成果を残しています。一方、統計が示すように、わが国の末期腎不全患者数は米国に次いで多く、人口比では世界一であるのも事実です。わが国の末期腎不全治療法、特に、血液透析療法の成績が世界で群を抜いて優れていることも周知されています。しかし、わが国の腎移植数は、先進国中では、比較することができないほど少ないのが実情です。末期腎不全治療法として、透析療法と腎移植は両者ともに不可欠で車の両輪に例えられます。日本腎臓学会として、わが国の腎移植を適正に推進させることが重要と考え、理事長就任時の基本方針の一つに取り上げました。
日本腎臓学会として、腎移植の推進に協力する取り組みを開始する企画を渉外企画委員会(菱田 明委員長)に依頼し、腎移植推進小委員会(両角國男委員長)を立ち上げていただきました。
腎移植推進小委員会にて、わが国ではなぜ腎移植数が少ないかの解析を行なったところ、末期腎不全治療を開始した際、治療法選択について、腎移植を含めた説明を受けたかの質問に、多くの回答は、"透析療法だけの説明を受けた"でした。腎不全治療を担当する腎臓病専門医として、末期腎不全治療法全体の概要を把握し、患者に充分説明できることは不可欠なことです。
腎臓専門医研修カリキュラムの症例項目では、腎移植症例(拒絶反応など)は、指導医のもとに経験すること(共同でも良いから受け持つ)とあります。しかし、わが国では、腎移植数が少なく、腎臓専門医が腎移植に触れる機会が少ないのが実情です。また、免疫抑制療法の開発と臨床応用は速く、腎移植の臨床は最近の20年間を振り返っても5年を一区切りに大きく進歩しています。
ABO血液型不適合腎移植は、15年前には禁忌が医学常識でしたが、現在ではわが国の腎移植の10%以上を占めています。新しい免疫抑制薬の登場により、腎移植成績は向上し、生体腎移植の5年生着率は95%に近づいています。新しい免疫抑制薬は腎疾患治療薬としても期待されています。腎移植には腎臓病の病因や治療を考える多くの課題があります。長期移植腎成績の向上は、生活習慣病に対する腎臓病学の知識なくしては望めない腎臓内科医の領域です。
そこで、日本腎臓学会誌に「腎移植」の総説を連載し、腎移植の諸外国とわが国の実情から、最新の腎移植の進歩までを日本腎臓学会員の諸先生にご理解いただくことが、腎移植の推進にきわめて有用であると考え、清水不二雄委員長をはじめ編集委員会のご理解とご協力をいただき、この企画が始まりました。
腎移植は腎臓病を学ぶうえで不可欠な重要項目であると考えます。この総説「腎移植」が、腎臓学会員の先生方にとり有益であり、日本の腎移植の推進に寄与することを願います。