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アンケート調査「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」の結果がCENに掲載
日本腎臓学会会員の皆様へ
日本腎臓学会評議員を対象としたアンケート調査「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」の結果がClinical and Experimental Nephrologyに掲載されました。
論題 Gross hematuria after SARS-CoV-2 vaccination: questionnaire survey in Japan
著者 Matsuzaki K, Aoki R, Nihei Y, Suzuki H, Kihara M, Yokoo T, Kashihara N, Narita I, Suzuki Y.
雑誌 Clinical and Experimental Nephrology. 2021 Nov 13. Epub ahead of print.
doi: 10.1007/s10157-021-02157-x.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34773533/
日本腎臓学会と厚生労働省「難治性腎障害に関する調査研究」の合同研究班は、日本腎臓学会評議員581名(382施設)を対象としたWebアンケート(2021年6月2日~20日)を行い、27例の肉眼的血尿陽性者を確認しました。また、この27例について追跡調査(2021年7月9日~19日)を行い、血清クレアチニン上昇の有無、血尿・蛋白尿継続の有無、(腎生検が行われた場合の)腎生検結果について確認しました。
肉眼的血尿陽性者は、ファイザー社のmRNAワクチンの接種者が全体の88.9%を占め、66.7%が40歳未満、81.5%が女性でした。これは、早期接種における医療従事者の接種ワクチンがファイザー社のものであったこと、早期接種が行われた医療従事者の年齢、性別構成が反映された可能性を考えています。追加調査では25例から回答が得られ、23例(85.2%)に肉眼的血尿の改善を認めていました。4例で腎生検が行われており、全ての方がIgA腎症と診断されていました。なお、今回の調査では1例に軽度の血清クレアチニン上昇を認めていたのみで重篤な腎機能障害に至った症例はありませんでしたが、今後も注意深く観察していく必要があると考えています。現在合同研究班では、ワクチン後の肉眼的血尿出現者の臨床経過の追跡と各種バイオマーカーの変化などを検討する前向きの全国調査を行っています。こちらも結果が出次第、ご報告させて頂きます。
既に厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)では3回目の新型コロナウイルスワクチン接種に向けた議論がなされており、今後もワクチン接種後の肉眼的血尿を主訴に外来を受診するケースは続くと考えられます。IgA腎症患者ではワクチン接種後に肉眼的血尿が出現する可能性があるものの、新型コロナウイルス感染のリスクを考慮しつつ、ワクチン接種をご指導頂ければと思います。また、IgA腎症と診断されていない症例でも、ワクチン接種後に肉眼的血尿陽性が生じた場合、IgA腎症の可能性を考えご診療頂くと同時に、医療連携先の一般医家の先生への啓蒙も併せてご検討いただければと思います。
皆様の御協力に改めて感謝し、以上ご報告いたします。
日本腎臓学会 理事長 柏原直樹
厚生労働科学研究費補助金「難治性腎障害に関する調査研究」班 代表 成田一衛
同 IgA腎症ワーキンググループ 鈴木祐介、松崎慶一