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プロトンポンプ阻害薬(PPI)と慢性腎臓病(CKD)の関連性について

会員各位

従来よりPPIと急性腎障害(AKI)およびCKDとの関連性を示唆する観察研究の論文が報告されてきたが、メタ解析*によってPPIとCKDとの有意な関連性が示されたことから、2017年11月8日付で米国消化器病学会(American Gatroenterological Association::AGA)から注意喚起がなされた。(http://www.gastro.org/news_items/more-data-on-ppi-use-and-kidney-disease)この中で、PPI投与とCKD発症に有意な相関関係が認められたため、PPIの適応患者においては、PPI治療のベネフィットがCKD発症のリスクを上回る場合に処方すべきであるとされている。ただしこれは観察研究の結果であり、因果関係が実証されたわけではなく、さらなるデータの蓄積が必要であることも述べられている。
 別の新しいメタ解析**でも同様の結論であったが、これらのメタ解析に採用された観察研究の対象に日本人は含まれておらず(アジア人では中国人のみ)、これらの結果をそのまま我が国に当てはめることは妥当とは言えず、今後は日本人を対象としたエビデンスの創出が重要である。ただしPPIは我が国でも汎用されている薬剤であり、またCKDの高い有病率も問題となっていることから、日本腎臓学会としても何らかのコメントを出すべきと判断した。そこで以下の注意喚起をはかりたい。
「あくまで海外データではありますが、PPI長期投与とCKD発症に関連性が認められ、米国消化器病学会(American Gatroenterological Association)から注意喚起の声明が出されました。今後、日本人を対象とした検証が必要でありますが、すべての薬物療法と同様に、PPI処方中はその必要性を定期的に見直し、患者へ与えるリスクとベネフィットを勘案して、漫然とした長期投与を避ける注意が必要と考えます。」

日本腎臓学会学術委員長    岡田浩一
日本腎臓学会理事長      柏原直樹


*Wijarnpreech K, et al. Dig Dis Sci 2017, 62:2821-2827
**Nochaiwong S, et al. Nephrol Dial Transplant 2017 Feb 23. doi: 10.1093/ndt/gfw470.