専門医制度

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日腎誌特集号関連領域専門医レベル セルフトレーニングの解答と解説

  • 問題1. 解答:c
    解説

    × a CKDや糖尿病に特徴的な血管石灰化のタイプは、メンケベルグ型石灰化である。
    × b メンケベルグ型石灰化は、血管平滑筋細胞の中にPit-1を通してリンが取り込まれることによって、骨芽細胞様細胞への形質転換をきたし、進行していく。
    c 正しい。
    × d 複数の大規模なRCTでは、弁石灰化抑制に関してスタチンの有用性は示されていない。
    × e 25(OH)Vit.Dではなく、活性型ビタミンD(1,25(OH)2Vit.D)は腎臓および腸管からのリンの再吸収を増加させる。

    問題2. 解答:a, b
    解説

    a, b 2000年に新たにリン利尿ホルモンであるFGF23が同定され、ミネラル代謝に関する報告が多く見られるようになった。血清リンの上昇は末期腎不全になって初めて認められるが、リンの体内への蓄積はCKDのより早期の段階から始まっており、その刺激がPTHやFGF23といったリン利尿ホルモンの分泌を促す事が分かってきた。特にFGF23の上昇はPTHの上昇よりも早く、CKD stage G2の段階ですでに生じていることが報告され、活性型ビタミンD低下に関わっている。FGF23は、骨細胞および骨芽細胞によって産生され、常染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(autosomal dominant hypophosphatemic reckets/osteomalacia:ADHR) (Nat Genet 26:345-348, 2000)などの低リン血症性疾患の責任因子として発見されたフォスファトニン(リン排泄調節性ホルモン)である。FGF23がこのような生理作用を発揮するためには、標的臓器の細胞にFGF23受容体(FGFR1)と、その共役因子であるKlothoの発現が必要である事も明らかとなった(Nature 444:770-774, 2006) (J Biol Chem 281 6120-6123,2006)。Klothoの高発現は、近位および遠位の腎尿細管、副甲状腺、および脳といった組織に限定され、FGF23作用の主要標的となっている。したがって膜型Klothoのみではリン尿作用を有するとは言えない。分泌型klothoだと、FGF23依存無く、直接的にリン利尿作用があるという報告もある。
    × c カルシウムにはリン利尿作用はない。
    × d, e CKDにおいてビタミンD欠乏は高頻度に見られ、25-水酸化ビタミンDも活性型ビタミンDも共に低下する。活性型ビタミンDの産生抑制の機序として1つ目は腎機能が低下する事により産生の場をなくす事、2つ目は血清リンの上昇により1α-hydroxylaseを抑制しビタミンD活性化障害を助長する(Arch Biochem Biophys 154:566-574, 1973)事などがあげられる。つまり、高リン血症が末期腎不全患者における1,25(OH)2D産生低下の一因となると考えられてきたが、保存期である早期のCKDでは血清リン値は正常範囲で推移している事から、保存期における1,25(OH)2D産生低下における関与は否定的であり、これだけでは早期のCKDにおける1,25(OH)2D産生低下の説明は困難であった。その後FGF23が発見され、FGF23分泌は腎機能やPTHとは独立して1,25(OH)2D濃度を規定する事が示され、(J Am Soc Nephrol 16:2205-2215, 2005)1,25(OH)2D産生低下の3つ目の機序として、早期CKDにおけるFGF23上昇が主たる要因として挙げられた。

    問題3. 解答:b
    解説
    CKD-MBDにおけるP、Ca管理の基本を問う問題である。

    × a 血清Caは予後への寄与度は血清Pより低いが、国内外のコホート研究から正常上限をわずかに超えた高Ca血症でも予後の悪化が示され、2017年に発表されたKDIGOガイドライン改訂版では、高Ca血症の回避がステートメントに盛り込まれた。
    b PTH抑制のために使用されるカルシウム受容体作動薬は、活性型ビタミンD製剤とは異なり、血清カルシウム濃度を低下させる。
    × c, d 上記ガイドラインや日本腎臓学会編のCKDステージ3b-5診療ガイドライン2017では保存期CKDでは正常範囲内の血清Pに対するP吸着薬投与は推奨されず、生命予後改善の観点から食事療法を実施しても血清Pが正常範囲でない場合にP吸着薬投与が推奨される。なお、Ca含有P吸着薬は原則投与量の制限が示され、薬剤は血清Caに応じて選択する。
    × e 高P血症に対するP制限の基本は吸収率が高くP含有の多い無機Pを含む加工食品や飲料水の制限、P/タンパク含有比の高い食品の制限である。またタンパクの由来(動物性、植物性)も腸管からのP吸収に差があるため、考慮すべきである。逆に極端なタンパク制限は栄養障害の原因となり、生命予後を逆に悪化させる可能性がある。

    問題4. 解答:e
    解説
    慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常の治療方針を問う問題である。血管石灰化、骨折、総死亡のアウトカムに関連するので、慢性腎臓病患者の全身管理として重要である。
    症例は活性型ビタミンD、カルシウム非含有リン吸着薬、高カルシウム透析液を使用している血液透析患者で、アルブミンで補正すると明らかな高カルシウム血症、高リン血症を呈している。

    × 1) 骨生検はKDIGOガイドラインでは、予期せぬ骨折、難治性の高カルシウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症治療に非典型的な反応を示す場合、骨軟化症を疑い、標準的治療にも関わらず骨密度が低下していく症例を考慮するよう記されている。この症例では、まず骨代謝マーカーで見る。ルーチン検査のALPに加えて、腎機能に影響されない骨型ALP, TRACP-5bも有用である。
    × 2) アルファカルシドールの増量は高カルシウム血症、高リン血症をさらに増悪させる危険がある。
    × 3) 炭酸カルシウムは高リン血症を改善するかもしれないが、高カルシウム血症を増悪させる危険がある。
    4) 透析液カルシウム濃度の低下は高カルシウム血症を改善することが期待される。
    5) 炭酸ランタンの増量は高カルシウム血症を増悪させずに、高リン血症を改善することが期待される。

    問題5. 解答:c,e
    解説

    × a 保存期CKD患者では,シナカルセト塩酸塩の使用は推奨されず,保険適応にもなっていない。これは,保存期においてPTHはミネラル代謝の恒常性を維持するために分泌が亢進しており,シナカルセト塩酸塩を使用すると,低カルシウム血症,高リン血症が顕在化するためである。尚,腎移植後の遷延性副甲状腺機能亢進症では,シナカルセト塩酸塩により高カルシウム血症が改善することが示されているが,予後への効果は明らかでなく,やはり保険適応にはなっていない。
    × b エテルカルセチド塩酸塩は静注製剤のカルシウム受容体作動薬である。透析終了時に透析回路から投与可能であることから,確実な投与が可能となるとともに,服薬負担の軽減が期待される。
    c シナカルセト塩酸塩は,活性型ビタミンD製剤とは異なり,PTH分泌を抑制するとともに血清カルシウム,リン値を低下させる。この機序としては,PTH抑制による骨吸収の低下とともに,一過性の骨形成促進により骨へのカルシウム,リン移行が促進される病態が考えられる。また血清カルシウム値の低下のため炭酸カルシウムが増量され,その結果,血清リン値が低下する場合もある。
    × d KDIGOガイドラインではPTH値の管理目標として正常上限値の2倍から9倍(intact PTH 130~585 pg/mlに相当)と設定されている。一方,わが国では,日本透析医学会の統計調査の結果に基づき,intact PTH 60~240 pg/mlというより厳格な管理目標が設定されている。欧米諸国では近年,KDIGOガイドラインを背景にPTH値は上昇傾向にあることが報告されている。
    e シナカルセト塩酸塩の登場後,わが国の副甲状腺摘出術の手術件数は低下傾向にあることが二次性副甲状腺機能亢進症に対するPTx研究会により示されている。

    問題6. 解答:d
    解説

    a FGF23には、intactアッセイとc-terminalアッセイがあるが、そのいずれも透析導入などの腎予後を予測する。日本の臨床研究では前者が、欧米の研究では主に後者のアッセイが多く使われた。
    b 一般に、腎機能にかかわらず鉄の投与は、c-terminal FGF23を低下させることが報告されているが、クエン酸第二鉄に関しては保存期においてintact FGF23も低下させる。
    c 黒人では白人よりもPTH抵抗性が高い。
    × d 日本人の透析患者におけるintact PTH目標値は60~240 pg/mLであるが、KDIGOガイドラインでは、その目標管理域は正常上限値の2倍から9倍であり、日本人のそれより高い値まで許容している。
    e 日本では、25(OH)Dの測定はビタミンD欠乏性くる病/骨軟化症でしか保険償還されないが、KDIGOガイドラインでは保存期にPTHがかなり高い、あるいは上昇しつづける場合にその測定が推奨されており、低い場合には補正が推奨されている。
  • 問題1. 解答:b
    解説

    近年,糖尿病性腎症を含む様々な腎疾患の進展に,慢性炎症が深く関与することが知られている.炎症をコントロールする機構として,toll like receptor(TLR)に代表される細胞膜局在のpattern recognized receptors (PRR)に加え,細胞内局在のPRRとの関与が報告されている.このうち,NOD-like receptor family, pyrin domain-containing protein 3 (NLRP3)は,痛風,動脈粥状硬化などの無菌性炎症を惹起する刺激に応答することが知られている.

    × a NLRP1は炭疽菌毒素,細菌の細胞壁成分である,ムラミルジペプチド(MDP)を認識する.
    b NLRP3は尿酸結晶,シリカ,コレステロール結晶,アスベスト,アミロイドを認識する.また,近年糖尿病性腎症,ループス腎炎との関連も指摘されている.
    × c NLRC4はサルモネラ,レジオネラ菌などの鞭毛成分フラジェリンを認識する.
    × d AIM2は細菌,ウイルス由来の細胞質のDNA, RNAで活性化される.
    × e NLRP6は腸内の嫌気性菌であるバクテロイデスの認識に関わり,腸内細菌叢の恒常性の維持に関与することが知られている.

    問題2. 解答:a
    解説

    糸球体に結節をきたす疾患は、糖尿病性腎症以外でも単クローン性免疫グロブリン沈着症(monoclonal immune deposition disease, MIDD)、特発性結節性糸球体硬化症(idiopathic nodular glomerulosclerosis、INGS)、アミロイドーシス、イムノタクトイド/fibrillary腎炎などがある。

    a タンパク尿量は糖尿病でもネフローゼではないことも多く、またいずれの疾患でもタンパク尿量は多様であり、鑑別に有用とは言えない。
    × b INGSでは動脈硬化病変と重喫煙歴が重要である。
    × c MIDDを除外するために蛍光抗体法は必要である。
    × d イムノタクトイド腎症やfibrillary腎炎は電子顕微鏡により分類されるため必要である。
    × e MIDDでは、血中や尿中のM蛋白が重要で、特にMIDDのうち頻度の高い鎖沈着症では、血中の遊離軽鎖比や尿中ベンスジョーンズ蛋白が鑑別に重要である。

    問題3. 解答:d
    解説

    C3腎症(C3 glomerulopathy)は、dense deposit disease (DDD)とC3 glomerulonephritisの総称である。Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conferenceによる報告では、C3腎症の病理の特徴に補体の沈着、特にC3の有意な糸球体への沈着所見が重要で、C3腎症の原因を異常な補体の活性化、沈着、またはdegradationに関わるものとして、補体系の異常を含んでいるという表現になっている[1]。

    × 1. 補体異常が関与するC3腎症は、補体系の中でも第二経路(Alternative pathway)の過剰な活性化が病院と考えられている。このため、低C3血症を伴うことが多いが、低C4血症を伴うことは少ない。
    × 2. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conference [1]による報告にも記載されている通り、現在では必ずしも膜性増殖性糸球体腎炎像は必須ではない。
    3. これまでの補体活性化異常が関与する報告では、補体制御因子の分子異常、C3やB因子の異常による症例も報告されているが、自己抗体であるNefや抗H抗体を持つ症例の方が多く、特にDDDではその割合は80%程度とされている[2]。
    4. 解説のとおり、IF所見が診断に重要である [1]。
    × 5. C3腎症は補体依存性aHUSと同様の補体系分子異常、もしくは自己抗体が原因となるが、補体依存性aHUSと異なり、現時点ではエクリツマブの有効性については議論のあるところであり、エクリツマブはC3腎症の治療の第一選択薬として推奨されていない。

    参考文献:
    1. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conference. Kidney Int. 91, 539-551, 2017.
    2. Servais A, Noёl LH, Roumenina LT, Le Quintec M, Ngo S, Dragon-Durey MA, Zuber J, Karras A, Provot F, Moulin B, Grünfeld JP, Niaudet P, Lesavre P, Frémeaux-Bacchi V.: Acquired and genetic complement abnormalities play a critical role in dense deposit disease and other C3 glomerulopaties. Kidney Int. 82, 454-464,2012


    問題4. 解答:b
    解説

    1. SGLT2阻害薬を服用すると、空腹時の血中ケトン体濃度が軽度上昇する。心血管疾患関連死の抑制に寄与している可能性がある一方で、ケトアシドーシスを助長する懸念もある。
    × 2. 同等の血糖降下を有する薬剤ではSGLT2阻害薬ほど心血管疾患関連死抑制効果を認めないことから、別の機序が想定されている。
    × 3. 糖尿病性腎症ではポドサイトや尿細管細胞において、ミトコンドリアの形態は分裂(fission)に傾く。ミトコンドリアの分裂は一般的にその機能低下状態において認めやすく、ミトコンドリア膜電位の低下、ATP産生低下、アポトーシスと関連するとされる。
    × 4. マイクロRNAと標的遺伝子の関係は「多対多」であることが多い。
    5. 糖尿病合併オートファジー不全マウスの表現型から、オートファジーは糖尿病性腎症において腎保護的に機能すると考えられている。
  • 問題1. 解答:a
    解説

    AKIは年々増加傾向にあり、合併すると患者予後に影響することが多く報告され、近年注目を集めている疾患群である。本邦では2016年に日本腎臓学会、日本集中治療医学会、日本透析医学会、日本急性血液浄化学会、日本小児腎臓病学会の5学会合同で『AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016』が刊行されている。

    a KDIGO基準におけるAKIステージ2は、クレアチニン基準で2.0〜2.9倍上昇とされている。本邦の『AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016』では、KDIGO基準はRIFLE、AKIN基準と比較し生命予後の予測能に関して同等もしくは優れていると報告されていることから、KDIGO基準を使用することが提案されている(2C)。
    × b 血清クレアチニン値はAKI発症の24~48時間後に上昇する一方、尿中NGALは約2時間後から上昇するとされており、AKIの早期診断に用いられている。
    × c 低用量(1-3μg/kg/min)のドパミン投与は健常人において腎保護作用が期待されてきたが、近年のメタアナリシスで低用量ドパミンは生存期間を延長しないこと、透析導入率を低下させないこと、腎機能を改善させないことなどが明らかにされ、KDIGOのガイドラインではAKIの予防および治療目的では低用量ドパミンを使用しないことが推奨されている(1A)。
    × d 敗血症はAKIをきたす最も頻度の高い病態であり、50~60%にAKIが発症すると報告されている。
    × e 従来可逆性と考えられていたAKIは実は高率にCKDに進展することが近年報告されている。2012年のメタアナリシスではAKIを発症するとその後のCKDのハザード比は8.8倍、ESRDのハザード比は3.1倍に上ると報告されている。

    問題2. 解答:c, d
    解説

    a 経過中の血圧が130/80mmHg未満であると腎予後がよいことが報告されている。
    b 尿蛋白量は1g/日以上であると腎予後が不良である。
    × c 肉眼的血尿のエピソードが予後不良因子となる報告はない。
    × d 予後との関連性を示す報告はない
    e  

    問題3. 解答:e
    解説

    常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の診断基準は,表に示す通りである。
    本症例は,両親は精査をしていないためADPKDかどうか不明である.祖母はADPKDの重要な合併症である,くも膜下出血を発症しているためADPKDの可能性はあるが,確定はできない.
    家族内発症が確認されていない15歳以下では,CT,MRI,または超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認されることがADPKDの診断基準である.また,15歳未満で超音波検査をした場合,嚢胞腎を受け継いでいても検査で嚢胞が見つからない場合が10%弱にあり,30代で検査をすれば,98%以上の確立で診断ができるとされる.よって,本症例はADPKDである可能性があるが,現時点では確定診断がつかない.両親(特に母親)の精査を行うことが必要である.もし両親のどちらかがADPKDと診断された場合には,本例はADPKDの可能性があるため経過観察が必要である.

    表1


    問題4. 解答:a
    解説

    ループス腎炎の寛解導入療法の治療効果をみる臨床試験は,24週後あるいは12ヶ月後の腎炎に対する治療奏功率(response rate)の優劣で評価されることが多い1-3).治療奏功率は臨床試験毎に事前に設定される.尿蛋白量,尿沈渣,血清Cr値により治療奏功が定義されることが多い.例えば,「治療開始24週後の評価で,1)尿蛋白 0.5g/日未満,2)尿沈渣 正常,3)血清Cr値 正常またはベースラインの120%未満をすべて満たす場合に治療奏功とする」のように定義される.血清補体価や抗dsDNA抗体価は,SLE Disease Activity Index (SLEDAI)の評価項目に入っており,全身性エリテマトーデスの評価においては重要であるが,ループス腎炎の治療効果をみる主要エンドポイントに含まれることは通常ない.

    参考文献
    1) Appel GB, Contreras G, Dooley MA, Ginzler EM, Isenberg D, Jayne D, Li LS, Mysler E, Sanchez-Guerrero J, Solomons N, Wofsy D: Mycophenolate mofetil versus cyclophosphamide for induction treatment of lupus nephritis. J Am Soc Nephrol 2009;20:1103-1112.
    2) Wofsy D, Hillson JL, Diamond B: Abatacept for lupus nephritis: Alternative definitions of complete response support conflicting conclusions. Arthritis Rheum 2012;64:3660-3665.
    3) Furie R, Nicholls K, Cheng TT, Houssiau F, Burgos-Vargas R, Chen SL, Hillson JL, Meadows-Shropshire S, Kinaszczuk M, Merrill JT: Efficacy and safety of abatacept in lupus nephritis: a twelve-month, randomized, double-blind study. Arthritis Rheumatol 2014;66:379-389.

  • 問題1. 解答:a
    解説

    a 最近の調査では、小児期発症の微小変化型ネフローゼ症候群の30-40%は、成人期でも再発を繰り返すため、移行期医療の対象疾患と考えられるようになってきた。
    × b 成人のMCNSに対する初回治療のPSL投与期間は1-2年が一般的であるのに対して、小児期発症のNSの初期治療としては、PSLの8週間投与(国際法)が一般的である。
    × c 小児期のネフローゼ症候群の治療では、ステロイドによる成長障害(低身長)を防ぐため、免疫抑制薬を積極的に併用し、ステロイドの減量中止を行う。
    × d 平成27年7月に成人に対する医療費助成制度が充実し、ネフローゼ症候群が指定難病に追加された。 成人期を迎えたネフローゼ症候群患者に対しても高額な免疫抑制薬を処方しやすくなったため、今後はスムーズな移行が期待される。
    × e 2016年に発表された、「思春期・青年期の患者のためのCKD診療ガイド」には、移行プログラム作成の要点が記載されており、移行プログラムの作成が期待される。

    問題2. 解答:d
    解説

    臨床経過と3主徴[破砕状赤血球を伴う溶血性貧血(Hb10 g/dL未満)、血小板減少(15 万/μL未満)、急性腎障害(血清クレアチニンが年齢基準値の1.5倍以上)から志賀毒素産生性大腸菌によるHUS(STEC-HUS)が最も疑われる。 なみに3歳児の血清クレアチニン基準値は0.27 mg/dLである。

    a.b.c 志賀毒素による内皮細胞障害から微小血管症性溶血性貧血が惹起される。このため、溶血によるLDH上昇、ハプトグロビン低下、ビリルビン上昇を伴う。
    × d 自己免疫性溶血性貧血ではないためクームス試験は陰性である。
    e STEC感染症がHUSに進展する危険因子として、末梢血WBC数増多と血清CRP上昇が知られている(溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン、五十嵐隆 編集、東京医学社、2014)。

    問題3. 解答:d
    解説

    腎疾患の移行期医療における主に小児と成人の違いについて出題した。

    × a CAKUTでは塩分喪失性の状態が多く小児期では塩分摂取を推奨されているケースが多く、成人期においてもその塩分喪失状態に応じて塩分摂取の推奨を継続する可能性は高い。 しかしながら、成人期において高血圧や肥満が合併してくると、状態に合わせた塩分制限が必要となりうる事は理解する必要がある。
    × b 詳細な紹介状は大変重要であるがそれ単独で移行プログラムが完了するわけではなく、医師のみでなく専門看護師、心理職、ソーシャルワーカーなどのチームによって進められるべきである。
    × c 成人ネフローゼ症候群においてステロイド隔日投与の有効性は明らかではない。そのため、小児期でステロイド隔日投与を実施していた場合は、必ずしも踏襲する必要性はない。
    d 成人のIgA腎症において、扁摘パルス群はステロイドパルス療法単独治療群より尿蛋白減少率が高いという報告がある[Kawamura et al. Nephrol Dial Transplant 2014;29(8):1546-1553.]。 我が国においては、非寛解例においては腎機能を考慮し扁摘パルス療法も考慮される。(エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2017)。
    × e 小児ループス腎炎の治療に関するエビデンスは乏しく、成人ループス腎炎の治療ガイドラインに沿って治療を行う。シクロホスファミドとミコフェノール酸モフェチル
  • 問題1. 解答:d
    解説

    × a RASS:正常血圧正常アルブミン尿1型糖尿病症例に対するRAS阻害薬の微量アルブミン発症抑制効果を検討、結果、予想外にロサルタン群では微量アルブミン尿発症が増加した。
    × b VA NEPHRON-D:顕性腎症症例に対してACE阻害薬--ARB腎障害発症抑制効果を検討したが、有害事象増加で中止された。
    × c Kumamoto Study:2型糖尿病症例に対して厳格血糖管理により細小血管障害の発症抑制効果が確認された。合計110例の規模で行われているため、死亡率や末期腎不全への進行を観察するには適さない。
    d ADVANCE:2型糖尿病症例に対して血糖降下薬としてグリクラジドを優先して用い、強化療法群(HbA1c値≦6.5%を目標)と通常療法群(7~8%を目標)を比較検討した試験である。HbA1c値は強化療法群では6.5%(通常療法群は7.3%)と、優れた血糖管理が達成された。その結果、強化療法群で腎症(蛋白尿)が21%減少し、末期腎不全もHR0.35(95%CI 0.18-0.70)で有意に抑制した。しかしながら、他の大規模試験でこのような厳格血糖管理の腎不全進行効果は確認されていない。(そのほかの選択肢)
    × e ALTITUDE:イベントリスクの高い2型糖尿病症例に対してレニン阻害薬アリスキレンをACE阻害薬・ARBに上乗せしたベネフィットが確認されず、有害事象が増加した。

    問題2. 解答:b, c
    解説

    × a GLP-1受容体作動薬は膵臓からのインスリン分泌を促進するとともに、グルカゴンの分泌を抑制する作用を持つ。
    b GLP-1受容体作動薬は食欲を抑制して体重を減少させる。
    c GLP-1受容体作動薬は血圧を低下させることが知られており、これには利尿作用が関わっている可能性がある。
    × d GLP-1受容体作動薬は血管拡張作用を示すことが報告されている。
    × e GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体に作用して、AMP-kinase活性を亢進させる。

    問題3. 解答:c
    解説

    糖尿病性腎臓病におけるアルドステロン拮抗薬についての基本的な知識を問う問題である。

    a 添付文書で定められている。
    b スピロノラクトン、エプレレノン、フィネレノンのいずれにおいてもRCTにおいてアルブミン減少効果が示されている。
    × c エプレレノンで示されているのは心不全合併例における心保護効果であり、心不全を合併していない症例への予防効果については明らかになっていない。
    d 添付文書で定められている。
    e RA系阻害薬との併用により、高カリウム血症のリスクが高くなる可能性がある。

    問題4. 解答:b(1.5)
    解説

    バルドキソロンメチルは、糖尿病性腎臓病をはじめとした慢性腎臓病における腎保護効果に関して臨床試験が進行中の薬である。国内外の第II, III相試験では本薬剤の投与により糸球体濾過量が増加することが報告されており、主な作用機序は酸化ストレス応答に寄与する転写因子Nrf2を安定化することによるとされる。

    1. Nrf2は酸化ストレス応答にかかわる転写因子である。
    × 2. 酸化ストレス非存在下ではNrf2は転写・翻訳後にユビキチン-プロテアソーム系で常に分解され、一定の低濃度に保たれている。一方、酸化ストレス下ではNrf2がユビキチン化を逃れて核内に移行する。
    × 3. バルドキソロンメチル投与下でも酸化ストレス下と同様に、Nrf2の分解が減少し、核内への移行が増える。これにより、抗酸化ストレス・抗炎症にかかわる遺伝子の発現が増加する。
    × 4. 慢性腎臓病のある糖尿病患者においてバルドキソロンメチル投与による糸球体濾過量の上昇が報告されている。
    5. バルドキソロンメチルは国外第3相試験であるBEACON試験において心不全の報告が多く、試験途中で中止となった。その後、日本国内では心不全のリスクが高い患者を除き、第2相試験より再開された。

    問題5. 解答:c(2.3)
    解説

    PHD阻害薬は、現在国内外にて大規模臨床試験が進行中の新規腎性貧血治療薬である。低酸素誘導因子HIFの安定化をもたらす本薬剤は、EPO遺伝子の転写を促進することで貧血を改善する。従来のESA注射製剤と比較して低侵襲であり、生理的なEPO濃度で貧血改善効果がもたらされることや鉄代謝の適正化などが報告されている。

    × 1. 慢性炎症刺激はNF-κBによる調節などを介してエリスロポエチン(EPO)遺伝子発現を抑制する。一方、低酸素刺激は生体内におけるEPO発現を増加させる。
    2. PHDはHIFα鎖のプロリン残基を水酸化し、ユビキチン・プロテアソーム分解をもたらす酵素である。同阻害によってHIFは安定化し、赤血球造血が亢進する。
    3. PHD阻害薬は経口内服可能な小分子化合物であり、従来のESA注射製剤と比較して低侵襲であることが期待される。
    × 4. PHD阻害薬による赤血球造血の主な作用部位は尿細管周囲の線維芽細胞様細胞であり、REP細胞(renal erythropoietin-producing cell)とも称される。
    × 5. PHD阻害薬による腎性貧血治療は、血清ヘプシジン値を低下させる。EPOによる造血刺激によって赤芽球からエリスロフェロンが産生され、同因子を介して間接的にヘプシジン産生が抑制される。ヘプシジンは消化管からの鉄吸収やマクロファージからの鉄リサイクルを抑制する。

    問題6. 解答:d
    解説

    抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブ(Eculizumab: ECZ)は典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome: aHUS)の特効薬であるが、髄膜炎菌感染症が重篤な合併症として知られている。本剤により髄膜炎菌感染リスクは健常者の1,000倍以上に増加しかつ重篤化する。本邦でもECZ治療を受けていた患者の髄膜炎菌感染症による死亡が複数報告されている。髄膜炎菌感染症の感染予防の為には、本剤投与開始の2週間前までに、本剤使用者に保険適応がある4価髄膜炎菌ワクチンの接種が必要とされている。しかしながら、補体が作用しない環境下では、ワクチンでは髄膜炎菌感染への防御には不十分である。そのため、例えワクチンを接種していても、その髄膜炎菌感染症を少しでも疑った際には速やかに第三世代セフェムの投与を行う必要がある。髄膜炎菌感染症による頭痛、嘔気・嘔吐、関節痛などの症状はインフルエンザウイルスにも類似するため注意すべきである。一方、本患者は末梢血WBCの増加やCRPの上昇を認める点が、インフルエンザウイルス感染とは異なっており、髄膜炎菌感染症の可能性を疑った対応をすべきであり、血液培養実施後に第三世代セフェムの投与を行い、入院下で経過観察すべきである。

    × a 髄膜炎菌感染症は発症24時間以内の死亡事例も多い。疑いがある際は入院加療させるべきである。
    × b 検査上は軽度の脱水が推測させるために輸液を行っても良いが、優先度はdに及ばない。
    × c インフルエンザウイルス感染症と検査所見が異なっており、迅速検査も陰性であったため、現時点では必要がない。
    d 正解。複数セットの血液培養実施後に速やかに投与されるべきである。
    × e aHUSの再発を疑わせる検査所見はないため不適切である。

    問題7. 解答:c(2.3)
    解説

    × 1. チオプリン製剤(アザチオプリン、6-メルカプトプリン)は核酸のプリン代謝経路で代謝され、プリンアナログとして細胞障害を引き起こす。NUDT15はチオプリン製剤の代謝に関与する酵素であり遺伝子多型が存在する。活性低下型アレルをホモで持つ患者では、重篤な副作用(急性白血球減少症、全脱毛)が高頻度に生じることが最近明らかとなった。活性低下型アレルの頻度は日本人をはじめ東アジア人で高い。
    2. ミコフェノール酸モフェチルはプリン代謝拮抗薬であり、de novo経路のプリン合成の律速段階となるIMPDHを阻害する薬剤である。
    3. ベリムマブはBリンパ球の生存に寄与するサイトカインであるBLySを標的とした完全ヒト型モノクローナル抗体である。
    × 4. ミゾリビンはプリン代謝拮抗薬であり、ミコフェノール酸モフェチルと同じくIMPDHを阻害することで核酸合成を抑制する。TPMTはチオプリン製剤の代謝に関与する酵素であり、その遺伝子多型による活性低下は、主に欧米人(白人)でみられるチオプリン製剤による重篤な骨髄抑制と関連する。
    × 5. リツキシマブはヒトのB細胞が発現するCD20を標的としたモノクローナル抗体であり、マウス由来可変領域とヒト由来定常領域から成るキメラ抗体である。
  • 問題1. 解答:c
    解説

    a 糖新生は主に肝臓で行われるが、長期の絶食では肝臓と腎臓の糖産生比率はほぼ同等となる。参考文献:Owen OE, Felig P, Morgan AP, Wahren J, Cahill GF Jr. Liver and kidney metabolism during prolonged starvation. J Clin Invest. 1969; 48: 574-83.
    b 腎臓は部位によって異なるエネルギー源を利用する。参考文献:Gullans SR. Metabolic basis of ion transport. The Kidney, 6 th ed. 2000: 215-246.
    × c 糸球体で濾過された大部分の糖がSGLT2を介して再吸収される。参考文献:Ghezzi C, Loo DDF, Wright EM. Physiology of renal glucose handling via SGLT1, SGLT2 and GLUT2. Diabetologia. 2018; 61: 2087-2097.
    d 糖尿病患者では、空腹時・食後ともに腎臓での糖取り込みが増加している。参考文献:Meyer C, Stumvoll M, Nadkarni V, Dostou J, Mitrakou A, Gerich J. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998; 102: 619-24.
    e 予後は良好である。参考文献:Rieg T, Vallon V. Development of SGLT1 and SGLT2 inhibitors. Diabetologia. 2018; 61: 2079-2086.

    問題2. 解答:b
    解説

    × a 食品のたんぱく質の栄養価には、含まれるアミノ酸に基づくアミノ酸スコアと、摂取したたんぱく質の消化吸収率(DIAAS)の2つが重要である。一般的にDIAASは動物性たんぱく質の方が高い。
    b 赤肉など消化吸収がよい食品はHFが起きやすい。
    × c 植物性たんぱく質のリン含有量は多いが、フィチン酸と結合しているため消化管からの吸収率が低く、血清リン濃度は上昇しにくい。
    × d AGEsは焼く、揚げるなど高温で乾燥した加熱調理法で生じやすく、とろ火で煮る(stewing)、蒸す、ゆでるなど低温で高湿度の調理法では生じにくい。
    × e DASH食とは果物・野菜を多く摂取し、飽和脂肪酸が少ない食事パターンである。オリーブオイルを多く用いる食事は地中海食である。

    問題3. 解答:b, d
    解説

    × a CKD患者において、食塩摂取量は血圧・尿蛋白と正の関連がある。
    b 24時間蓄尿がゴールドスタンダードとされている。
    × c Tanakaの式はCKD患者において起床後第1尿を用いた場合信頼性が高いとされている。健常人ではそれ以外の随時尿に対しても使用可能である。第2尿を用いるのはKawasakiの式である。
    d 食塩摂取量の多寡は、心血管疾患の発症と関連するという報告がある。
    × e 高齢CKD患者の食塩摂取制限は慎重を要するが、必要がないわけではない。

    問題4. 解答:e
    解説

    以前よりたんぱく質制限はリン制限につながることが知られており、リン制限はたんぱく質制限と同等に扱われてきたが、近年、主に透析期を中心に、たんぱく質を摂りながらリンを制限した方が予後に良好な影響を与えると考えられるようになってきた。

    × a 高エネルギー補助食品による総エネルギー量の維持がたんぱく質制限による低エネルギーの問題を解決するかについては証明されていない。保存期CKDにおける筋肉量減少を介して実現された血清Crの相対的低値が、透析期の予後不良因子に通じることを考えれば、特に低栄養に陥りやすい高齢者に闇雲にたんぱく質制限は勧められないであろう。
    × b もちろん、リン制限が不要というわけではなく、食事からの不必要なリン摂取は減らしつつ、効果的にリン吸着薬を使っていくことが肝要である。特に食品添加物に含まれることが多い無機リンは有機リンに比べて腸管からの吸収効率が高く、避けるべきとされている。
    × c 一方、カルシウム製剤については血管石灰化を惹起する恐れがあることから、必要最小限に留めるべきと考えられている。血清カルシウム濃度を基準値内に保つことの正当性は証明されておらず、むしろ予後を悪化させることが懸念されている。
    × d マグネシウムに関しては、これまで高マグネシウム血症による弊害ばかりが取り沙汰されてきたが、近年その抗石灰化作用が注目を集めており、低マグネシウム血症を放置することのデメリットが指摘されている。
    e 確かにタンパク質制限を徹底するとリン摂取量は減少するが、同時に低エネルギーに陥りやすくなるため、必ずしも予後の改善にはつながらない(本文図1)。

    問題5. 解答:d
    解説

    a 適切なエネルギー投与量とは、患者個々の総エネルギー消費量に見合った量である。総エネルギー消費量は基礎代謝量、食事誘導性熱産生、身体活動によるエネルギー消費量、の合計である。
    b 間接カロリメーターは三大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)の酸化過程で消費される酸素と、産生される二酸化炭素を測定してエネルギー消費量を算出する方法であり、測定条件や測定方法が適切であればエネルギー投与量の算出方法として有用性が高い。
    c Harris-Benedict式は今から100年近く前に作られた基礎(安静時)エネルギー消費量の予測式であるが、高齢女性では実測値よりも多めに算出される。安定したCKD患者においても、実測値よりも多めに算出されることを念頭に置く必要がある。
    × d 保存期CKD患者では、基礎(安静時)エネルギー消費量は健常人と同じ、または軽度低下しているとの報告が多い。
    e 週3回のHDおよびCAPD患者に対するエネルギー摂取量としては、「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では30~35 kcal/kg 標準体重(BMI=22)/日を推奨している。

    問題6. 解答:e
    解説

    × a 血清アルブミン値の測定法は、従来のBCG法と改良BCP法が混在している。そのため、血清アルブミン値を比較する際には、施設間や測定のタイミングに注意を要する。
    × b 現在のダイアライザーは、β2-ミクログロブリンクリアランスとアルブミンふるい係数によりⅠ-a、Ⅰ-b、Ⅱ-a、Ⅱ-b、の4種の他、S型を合わせた計5種に機能分類されている。
    × c 血清アルブミン値は、低栄養だけでなく炎症、肝障害、悪性腫瘍の合併、透析などの因子の影響を受ける。低栄養以外の原因が存在しないか精査する必要がある。
    × d Protein energy wastingの診断基準には、心血管疾患の既往歴とC反応性蛋白は、含まれていない。
    e nPCRは年齢とともに低下する傾向がある。日本腎臓学会による「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」や日本透析医学会による「慢性透析患者の食事療法基準」の基準値0.9~1.2 g/kg/dayよりも少ない患者が多数存在する。
  • 問題1. 解答:a
    解説

    腹部膨満、若年からの高血圧、慢性腎不全とくも膜下出血の家族歴から多発性嚢胞腎患者であり、発熱、左背部の鈍痛、尿所見で白血球>100から腎嚢胞感染と診断される。

    a 閉鎖腔である嚢胞感染に対し、脂溶性で嚢胞透過性良好なニューキノロン系抗菌薬は、嚢胞感染症治療の第一選択として推奨される。
    × b 胞感染の起因菌としては大部分が腸管内由来の細菌で、なかでもグラム陰性桿菌が多い。
    × c 経静脈的にニューキノロン系抗菌薬を1〜2週間投与しても発熱が続いている場合は、治療抵抗性と判断しドレナージの適応と考えられる。
    × d 超音波、CTスキャン、およびMRIで感染嚢胞を検出できなかった割合はそれぞれ94%、82%、および60%であり、これらの画像診断では感染した嚢胞の同定は困難であり、最近では感染嚢胞の検出におけるPET-CT有用性が報告されているが、保険適用外である。
    × e 我が国の透析患者の死因ではADPKDでは心不全、脳血管障害についで感染症は第3位である。

    問題2. 解答:c
    解説

    最も多い腎嚢胞性疾患は単純性腎嚢胞である。50代の女性では10%弱に単純性腎嚢胞を認めると報告されている。本症例では現在のところ家族歴を認めないため、単純性腎嚢胞を否定できない。しかし、高血圧やクレアチニン値の上昇を認めるため、最も多い遺伝性腎疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)も否定できない。本症例で次に必要な検査は腹部単純CTを行い、腎嚢胞の数、位置、大きさを確認することで、確定診断できる可能性が高い。

    × a 腎生検が必要とされる場合も稀にあるが、侵襲的な検査であり、次に行うべき検査ではない。
    × b ADPKDと診断された場合には頭部MRAを行い、脳動脈瘤の有無を確認する必要がある。
    c 腹部単純CTを行うことで、腎嚢胞の個数、数、大きさがわかり、確定診断が可能となる。
    × d 腹部単純CTで単純性腎嚢胞やADPKDに特徴的な腎嚢胞ではない場合、他の嚢胞性腎疾患との鑑別に遺伝子診断が必要とされることもある。
    × e 正確な腎機能を確認するためにはイヌリンクリアランスが望ましいが、確定診断されていない状況で次に行うべき検査ではない。

    問題3. 解答:b
    解説

    主な遺伝性嚢胞性腎疾患の責任遺伝子について問う問題。

    × a 最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎の責任遺伝子はPKD1が85%、PKD2が15%とされていた。 しかし近年、GANAB遺伝子など、その他の責任遺伝子の報告も散見される。
    b 集合管の拡張と胆管異形成および肝内門脈周囲の線維化を含む肝病変を特徴とする常染色体劣性多発性嚢胞腎は、新生児期に症候を示す場合が多い。 主な責任遺伝子はPKHD1である。なお、問題文中のNPHP1はネフロン癆(古典的には若年性ネフロン癆)の責任遺伝子である。
    × c ネフロン癆は腎髄質に嚢胞形成を認める疾患であり、組織学的には、進行性の硬化、硝子化糸球体を伴う尿細管間質性腎炎像を呈する。 遺伝形式は主として常染色体劣性遺伝を示し、責任遺伝子は20種類以上ある。NPHP3は古典的には平均年齢19歳頃に末期腎不全に至る思春期ネフロン癆の責任遺伝子である。
    × d 髄質嚢胞性腎疾患は、常染色体優性遺伝形式をとる進行性の尿細管間質障害を示す疾患であるが、疾患名に反し多くの症例で病初期には腎嚢胞を認めないことから、 近年、常染色体優性尿細管間質性腎疾患と呼称されるようになった。UMODはその責任遺伝子の1つである。
    × e ジュベール症候群は筋緊張低下、呼吸異常、眼球運動失行、小脳虫部低形成あるいは欠損を呈する疾患であり、常染色体劣性遺伝形式をとる。 一次繊毛の障害が原因であり、ネフロン癆関連繊毛病の1つである。CEP290を含め、複数の責任遺伝子が報告されている。

    問題4. 解答:a
    解説

    ARPKDでは、これまで考えられたよりも軽症例が相当数存在することが明らかになってきた。したがって、ARPKDは成人においても考慮すべき鑑別疾患である。よって、いかなる年齢においても診断しえる。腎臓に嚢胞を形成する疾患は多数存在し、そのいずれもが鑑別診断となる。現在国際的によく使用されているARPKDの診断基準を表に示す。遺伝性嚢胞性腎疾患では、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)が鑑別すべき疾患として重要である。実際的にはエコー所見と、同胞の本疾患既往が重要である。診断に遺伝子解析は必須ではないが、診断が困難な症例では有用である。

    a ARPKDは成人においても考慮すべき鑑別疾患であり、いかなる年齢においても診断しえる。
    × b 基本的に頻度に性差はみられない1)
    × c 臨床・病理的に診断可能で、診断には遺伝子解析は必須ではない。
    × d 集合管の拡張が腎の主病変である。
    × e 胆管の異形成と肝内門脈周囲の線維化を特徴とする。

    1に加えて2の一項目以上を認める場合にARPKDと診断する。

    1.皮髄境界が不明瞭で腫大し高輝度を示す典型的超音波画像所見

    2.a) 両親に腎嚢胞を認めない、特に30歳以上の場合
       b) 臨床所見、生化学検査、画像検査などにより確認される肝線維症
       c) ductal plateの異常を示す肝臓病理所見
       d) 病理学的にARPKDと確認された同胞の存在
       e) 両親の近親婚


    (文献1)の英文を翻訳)
    文献
    1) Sweeney WE, Gunay-Aygun M, Patil A, Avner ED. Childhood Polycystic kidney disease. In: Avner ED, Harmon WE, Niaudet P, Yoshikawa N, Emma F, Goldstein SL (eds) Pediatric Nephrology, 7th edition. Heidelberg: Springer, 2016:1103-1153


    問題5. 解答:a
    解説

    生来健康で偶然の血液検査時に腎機能障害を指摘された例である。同胞がネフロン癆と診断されており、本例も同じ疾患である可能性が高い。

    a 腎外症状を認めない狭義のネフロン癆としては20種類の遺伝子が原因遺伝子として報告されているが、NPHP1は最多の原因遺伝子でネフロン癆の半数以上を占める。さらに、ネフロン癆に網膜色素変性症や骨疾患、多指などの腎外症状を合併するネフロン癆関連シリオパチー(Senior-Løken症候群、Bardet-Biedl症候群など)を含めると、約100種類の遺伝子がネフロン癆の原因遺伝子として報告されている。
    × b 特異的な治療はない。
    × c ネフロン癆は常染色体劣性遺伝疾患であり、基本的に親子での遺伝はない。
    × d 学校検尿では検出が難しく、感冒での医療機関の受診時に血液検査をした場合や、職場での健康診断時に偶然発見される例が多い。
    × e ネフロン癆では皮髄質境界部に遠位尿細管起源と考えられる嚢胞が多数見られる。また尿細管基底膜の不均一像が特徴的である(杉本圭相、小児科診療61; 1731-1737, 2018)。一方で嚢胞が目立たず間質障害が著明な例も存在する。糸球体基底膜の肥厚はAlport症候群の所見である。

    問題6. 解答:a(1.2.3)
    解説

    1. ADTKDの病理所見は、選択肢の文章のように、非特異的なものとなっている。
    2. 早期からの尿酸値上昇がADTKD-UMODの臨床症状の特徴である。これは、異常uromodulin蛋白が、NKCC2やROMKの蛋白輸送に影響を及ぼし、これら蛋白の機能が阻害されることによって、近位尿細管でのNa及び尿酸再吸収が増加し、尿酸排泄が低下するためと考えられている。
    3. ADTKD-MUC1では、ほとんどの遺伝子異常がvariable number tandem repeats (VNTRs)内に認められ、この部位はPCRが困難であることから遺伝子解析が難しい場合が多い。
    × 4. 検尿異常が乏しいことが、ADTKDの特徴である。
    × 5. ADTKDでは、腎臓のサイズが保たれる事が知られている。
  • 問題1. 解答:e
    解説

    ABO血液型不適合の腎移植前には術前の抗血液型抗体除去と脾臓摘出が必須とされていたが、リツキシマブの術前投与と血漿交換による抗血液型抗体の除去により脾摘を回避したABO血液型不適合が実施されるようになった。

    × a リツキシマブ使用による脾摘回避ABO血液型不適合腎移植の成績はABO血液型適合腎移植と遜色なく、リツキシマブの高い有効性が報告されている(文献1、2)。
    × b,c,d 免疫抑制薬による薬物療法は、T細胞免疫とB細胞免疫の両面の免疫療法が必要である。開始時期の目安としては、T細胞性免疫は細胞性拒絶反応を予防するために移植直前から開始し、グラフトが生着している限りは終生必要となる。B細胞免疫は急性期の拒絶反応を予防するために移植前から開始し、生着が成立するまで(移植後1-2週間)が主体となる。その間の抗体価の上昇は急性拒絶反応を引き起こす可能性があるため、抗体産生を十分抑制する必要がある(文献3、4)。
    e 関節リウマチなどに用いられる分子標的治療薬の一つで、可溶性炎症性サイトカインの一つであるTNFに結合して作用を阻害する。脱感作療法には用いられない。

    参考文献:
    1. 「ABO血液型不適合腎移植におけるリツキシマブ脱感作療法ガイド」日本移植学会、日本ABO血液型不適合移植研究会、日本臨床腎移植学会
    2. Takahashi K, Saito K. ABO-incompatible kidney transplantation. Transplant Rev. 27(1):1-8. 2013
    3. Takahashi K. Timing of the start of immunosuppressive therapy (duration of desensitization therapy). In:Accommodation in ABO-incompatible Kidney Transplantation, Chapter 8. Amsterdam:Elsevier. 2004:94-95.
    4. Saito K, Nakagawa Y, Takahashi K, et al. Pinpoint targeted immunosuppression;Anti-CD20/MMF desensitization with anti-CD25 in successful ABO-incompatible kidney transplantation without aplenectomy. Xenotransplant 2006;13:111- 117.


    問題2. 解答:e
    解説

    × a KIM-1(kidney injury molecule-1)は近位尿細管障害を反映するタンパク質で、急性虚血性腎障害直後に転写及び翻訳レベルで尿細管での発現が上昇することが報告されている(J Biol Chem. 1998;273:4135-4142)。KIM-1は近位尿細管障害後に尿中に分泌されるが、血中へも移行し上昇することが知られている(J Am Soc Nephrol. 2014;25:2177-2186)。興味深いことに、DKDの患者において、血漿KIM-1値は尿中KIM-1値より腎予後予測バイオマーカーとして優れており、正常または微量アルブミン尿期のDKD患者の腎予後予測にも有用であることが報告されている(Kidney Int. 2016;89:459-46)。
    × b,d TNFR1(tumor necrosis factor receptor 1)およびTNFR2はTNFαのレセプターであり、TNFαとそれに引き続く炎症性サイトカイン経路活性を反映するマーカーとして知られている。血中TNFR1およびTNFR2は、1型及び2型糖尿病患者のDKD進展マーカーとして確立されている(J Am Soc Nephrol. 2012;23:507-515, J Am Soc Nephrol. 2012;23:516-524)が、これらマーカーと腎病理組織との関連を検討した研究がある(Kidney Int. 2016;89:226-34)。この研究では、研究的腎生検により糖尿病性腎症が確認された83人のAmerican Indianにおいて、電子顕微鏡による詳細な病理学的評価を含めた12項目の腎病理所見とTNFR1/2の関連を評価しているが、血清TNFR1およびTNFR2濃度のより高い値が、腎生検時のアルブミン尿や糸球体濾過量を含めた臨床因子とは独立して、糸球体内皮細胞fenestrationの減少とメサンギウム基質増加の双方に有意に関連していた。
    × c 糖尿病性腎症の早期では糸球体基底膜でのチャージバリアの破綻が起こり、IgG分画の中でもマイナス電荷のIgG4が特に濾過されやすくなるため、IgG4/IgGクリアランス比が低下することが示されている(Diabetes. 1991;40:1685-90)。
    e MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)はNF-κBの刺激下で単核球や尿細管上皮、ポドサイトなどから分泌されるケモカインで、糖尿病性腎症においては、炎症性サイトカイン経路の活性化などを介して病理学的変化に寄与していることが報告されている。特に、糖尿病性腎症における病理学的所見のうち、尿細管間質病変の程度と尿中に排泄されるMCP-1レベルが相関することが報告(Kidney Int. 2000;58:1492-1499)されている他、尿細管間質病変の進展予測マーカーとしての報告もある(Nephrol Dial Transplant. 2015;30:599-606)。細動脈硝子化の程度との関連についての報告はない。

    問題3. 解答:e
    解説

    糖尿病性腎臓病に関連した代謝経路の基礎知識を問う問題である。
    細胞内に取り込まれた脂肪酸はミトコンドリア外膜のアシルCoA合成酵素によってアシルCoAとなるが,ミトコンドリア内膜は通過できないためカルニチンと結合しアシルカルニチンとなりミトコンドリア内膜をとおりマトリックスに到達する。アシルCoAはβ酸化を受けアセチルCoAとなる。アセチルCoAはピルビン酸からも供給され,クエン酸経路で代謝されNADH,FADH2が生成する。酸化的リン酸化を行う電子伝達系はミトコンドリア内膜のクリステに存在する。NADH脱水素酵素複合体,シトクロムc還元酵素複合体,シトクロムc酸化酵素複合体によりNADH,FADH2からNAD+またはFAD,プロトンと電子に酸化される。プロトンは膜間腔にくみ出され内膜を挟んだプロトン勾配が生じATP合成酵素がADPとリン酸からATPを産生する。

    × a トリプトファンは腸から吸収され主に肝臓でキヌレニン経路にて代謝される。
    × b ミトコンドリア外膜にはポリンと呼ばれる輸送タンパクが含まれており,分子量5,000以下の親水性分子は自由に通過できる。一方内膜は膜輸送タンパクで運ばれるもの以外は通過できない。
    × c トリプトファンは腸内細菌によりインドール酢酸/酪酸に代謝される。
    × d シトクロムCはミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系の蛋白質である。
    e

    問題4. 解答:b
    解説

    糖尿病性腎臓病(DKD)に対するSGLT2阻害薬の腎イベント抑制効果が、EMPA-REG OUTCOME試験(エンパグリフロジン)、CANVAS試験(カナグリフロジン)、DECLARE-TIMI58試験(ダパグリフロジン)といった大規模臨床研究により発表された。これらの試験での腎イベント抑制効果は副次評価項目での評価であったが、その後、CREDENCE試験(カナグリフロジン)によりSGLT2阻害薬の腎イベント抑制効果が主要評価項目として検証された。DKDに対する腎イベント抑制効果を主要評価項目として検証した試験としては、ARBの有効性が示されたRENAAL試験やIDNT試験以来18年ぶりの試験となる。本問題はCREDENCE試験の対象基準を問うものであり、その対象基準は、30歳以上の成人2型糖尿病症例で、尿中アルブミン排泄量(300-5,000 mg/gCr)、eGFR 30-90 ml/min/1.73m2であった。このように、本研究の対象者は顕性蛋白尿を有しており、また、その多くが腎機能低下を呈する症例であることから、腎臓内科医が診療する機会も比較的多いと思われる。
    *CKD-EPI式:Levey AS et al. : A new equation to estimate glomerular filtration rate. Ann Intern Med. 150 : 604-612, 2009.

    × a CREDENCE試験は2型糖尿病症例のみを対象とした試験である。
    b CREDENCE試験の対象基準に合致する。
    × c CREDENCE試験では尿中アルブミン排泄量5,000mg/gCr以上の症例は対象ではない。
    × d CREDENCE試験では尿中アルブミン排泄量300mg/gCr未満(微量アルブミン尿期)の症例は対象ではない。
    × e CREDENCE試験でeGFR30 ml/min/1.73m2未満(微量アルブミン尿期)の症例は対象ではない。

    問題5. 解答:a,e
    解説

    近位尿細管に流入した糖は,Na+とともにSGLT2を介して近位尿細管局部(S1, S2セグメント)で再吸収される。そのため,慢性高血糖下では過剰な再吸収が起きるため,マクラデンサに到達するNa, Cl量の低下が惹起され, その結果, 輸入細動脈における収縮の抑制や抵抗の低下を生じさせ,糸球体の過剰濾過を起こす。
    糖尿病患者においては,糸球体過剰濾過や尿細管糸球体フィードバック (TGF: tubuloglomerular feedback)機構の破綻がみられる。
    SGLT2阻害薬は,近位尿細管局部での過剰な糖やNa+の再吸収を抑制することにより,マクラデンサに到達するNa, Clが正常化される。そのため,糸球体過剰濾過やTGFを是正し,それにより腎保護効果を示す可能性が示唆されている。しかし, 5/6腎摘モデルでSGLT2阻害薬が尿蛋白減少効果を示さないことや,一部の臨床研究でTGFが蛋白尿の減少に寄与する割合が少ないという結果も報告されており, エリスロポエチン (EPO: erythropoietin)や腎内VEGF (vascular endothelial growth factor)-Aの関与を含めて, 多面的にメカニズムを探求していく必要がある。

    a SGLT2は近位尿細管局部に存在し,近位尿細管に流入した糖やNaの再吸収に作用するため誤りである。
    × b SGTL2阻害薬は,糖尿病性腎症における糸球体過剰濾過や糸球体高血圧の是正やTGFを正常化させることにより腎保護効果を示す可能性があるためこの記述は正しい。
    × c EMPA-REG OUTCOME試験では,試験開始時に顕性アルブミン尿を有する症例は正常アルブミン尿や微量アルブミン尿の症例よりも腎保護効果が早期に確認された.この記述は正しい。
    × d SGLT2阻害薬は,空腹時の血中ケトン体濃度を上昇させることがあるため,ケトアシドーシスを助長する可能性がある. この記述は正しい。
    e SGLT2阻害薬には,心血管関連死抑制効果があるため誤りである. 経口抗酸化性炎症調節薬のバルドキソロンメチルの副作用として心不全の報告がある。

    問題6. 解答:a
    解説

    糖尿病例おける腎病理所見は、症例毎に大きな違いがある事が重要である。病理所見は、アルブミン尿が出現前から認められる。糸球体基底膜肥厚やメサンギウム増殖を主体とするびまん性病変は、比較的早期から見られる病理所見である。

    a 結節性病変やメサンギウム融解は、腎予後と強く関連する因子である。
    × b アルブミン尿出現以前から、腎病理変化が生じている。糸球体病変だけでなく、間質の線維化や血管硝子化なども、アルブミン尿出現前から見られることが多い。
    × c 糸球体肥大は、糖尿病による病理所見として良く知られているが、高血圧性腎硬化症などでも見られる。
    × 糖尿病による腎病理変化は、多様性に富む点が重要である。臨床所見だけから組織像を推測する事は困難である。
    × e 長期糖尿病歴や網膜症は糖尿病性腎症の病理診断を推測させる臨床所見であるが、他の腎疾患を除外できる訳では無い。他疾患の除外には、腎生検を施行する必要がある。

    問題7. 解答:a,d
    解説

    × a 従来、糖尿病に合併する腎障害の中で糖尿病歴、微量アルブミン尿〜顕性アルブミン尿を経てGFRの低下、高度血尿(-)、糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害などの合併といった典型的な臨床経過と症候を伴い、臨床的に他の腎疾患が強く疑われない症例を糖尿病性腎症と診断してきた。しかし近年、2型糖尿病患者の中には典型例とは異なり顕性アルブミン尿を伴わないままGFRの低下を示す症例が看過できないほど含まれることがわかり、従来の糖尿病性腎症に加えて非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念として糖尿病性腎臓病が提唱されてきた。糖尿病性腎臓病は従来の糖尿病性腎症を含む、糖尿病の病態が関与するCKDの全般を包括した概念である。
    b 糖尿病性腎臓病の中には顕性蛋白尿を伴わないままGFRが低下するかつてearly declinerなどと呼ばれた症例も少なからず存在する。
    c 顕性アルブミン尿を伴わないGFRの低下には加齢や高血圧に伴う動脈硬化や脂質異常の関与も推定されているなど、糖尿病性腎臓病の治療には集学的治療が必要である。
    × HbA1c 7.0%未満の血糖管理により早期腎症から顕性腎症への進行は抑制するが、顕性腎症以降における腎症進展抑制効果やCVD発症抑制効果のエビデンスは確立していない。(日本腎臓学会編 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018 p108-109)
    e GLP-1作動薬であるリラグルチドは心血管イベントのリスクが高い成人2型糖尿病患者で顕性アルブミン尿新規発症を抑制した(Leader試験1)。SGLT2阻害薬に関しても、エンパグリフロジン(EMPA-REG試験2)、カナグリフロジン(CANVAS試験3)、副次評価項目としてダパグリフロジン(DECLARE-TIMI58試験4)は顕性アルブミン尿期を含む患者集団でクレアチンの2倍化やeGFRの40%以上の低下、末期腎不全を含むハードエンドポイントの改善効果が示されている。

    参考文献:
    1. Mann J.F.E., et al. Liraglutide and renal outcomes in type 2 diabetes. N. Eng. J. Med. 377, 839-848 (2017)
    2. Wanner C., et al. Empaglifrozin and progression of kidney disease in type 2 diabetes. N. Eng. J. Med. 375, 323-334 (2016)
    3. Neal B., et al. Canaglifrogin and cardiovascular and events in type 2 diabetes. N. Eng. J. Med. 377, 644-57 (2017)
    4. Wiviott SD., et al. Dapaglifrozin and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N. Eng. J. Med. 380, 347-57 (2019)

  • 問題1. 解答:d e
    解説

    腎炎が移植後10年以内に再発する平均頻度は10~20%とされ、そのうち8%が腎機能廃絶に至るとされる。再発率に関しては施設間でかなりの差あり、原疾患確認の有無によっても大きく報告数は異なる1)2)。但し早期に再発し機能廃絶におちいりやすいのは巣状分節性糸球体硬化症、リポタンパク糸球体症、オキサローシスである1)2)3)。現在再発腎炎の長期予後の集積も得られ、IgA腎症においては、長期の移植腎機能に対するリスク要因である3)

    × a IgA腎症は30%の再発率、再発後10〜30%の移植腎廃絶といわれる。
    × b 原発性膜性腎症は3〜30%の再発率、再発後0~30%の移植腎廃絶といわれる。
    × c ループス腎炎は、2〜9%の再発率、再発後の移植腎廃絶は5%以内である。
    d リポタンパク糸球体症は100%の再発率で、移植腎廃絶率も高いが、症例数少なくまとまった報告例はない。
    e 巣状分節性糸球体硬化症は、30〜60%の再発率、再発後50%の移植腎廃絶率である。

    参考文献:
    1) Morozumi K, Takeda A, et al. Recurrent glomerular disease after kidney transplantation: An update of selected areas and the impact of protocol biopsy. Nephrolgy 2014; 19(Suppl. 3):6-10.
    2) Sprangers B, Kuypers DR. Recurrence of glomerulonephritis after renal transplantation. Transplantation Reviews 2013; 27:126-134.
    3) Jiang SH, Kennard AL, Walters GD. Recurrent glomerulonephritis following renal transplantation and impact on graft survival. BMC Nephrol. 2018; 19: 344


    問題2. 解答:c d
    解説

    × a 家族の反対がある場合は適格ではない。
    × b 本人の強い希望がある場合でも、インスリンが必要な糖尿病とアルブミン尿を認める場合は適格ではない。
    c 悪性腫瘍治癒後5年経過していれば、ドナーとして適格となる。癌種によってはより長期の経過観察が必要なものもある。
    d 適正基準ドナー(70歳以下、GFR≥80ml/min/1.73m2、高血圧なし)ではないが、境界域(マージナル)ドナーとして、80歳以下、GFR≥70ml/min/1.73m2、高血圧があっても降圧剤でコントロール可能、であれば適格と認められる。姻族は3親等まで適格。
    × e 友人・寄附としての腎提供は欧米では認められているが、我が国では認められていない。

    問題3. 解答:b e
    解説

    a HLA抗原上で抗体が結合する15~20個程度のアミノ酸配列を含む半径15Åの部位をstructural epitope(構造的エピトープ)と呼ぶ。構造的エピトープはその中に半径3Å以内の2~5個の多型性を持つアミノ酸配列が存在し、抗体が結合するうえで必須となるため、その部位をfunctional epitope(機能的エピトープ)と定義し、別名でeplet(エプレット)と呼んでいる1)
    × b トナー・レシピエント間におけるエプレットのミスマッチが多いと新規ドナー特異的抗体の発生頻度は増加する。
    c エプレット解析には世界的にHLAMatchmakerというフリーソフトウェアが使用されている。これにドナーとレシピエントのhigh resolution typing (高解像タイピング)を行った4桁のHLAアレル情報を入力することでミスマッチするエプレットを同定し、その数も算定される2) (HLA Epitope Registry (https://www.epregistry.com.br/)参照)。
    d 新規ドナー特異的抗体(dnDSA)は、HLAクラスI抗原よりクラスII抗原に対する抗体が非常に多い。そのクラスII抗原に対する抗体で、HLA-DR、-DPよりもDQ抗原に対する抗体が多く、HLA-DQ抗原におけるミスマッチが最も強くdnDSA発生に関与している3)
    × e 一つのエプレットに対して一つの抗HLA抗体のみが反応するエプレットは少なく、複数の抗HLA抗体が交叉反応を示すエプレットのほうが多く存在する(HLA Epitope Registry (https://www.epregistry.com.br/)参照)。

    参考文献:
    1) Wiebe C, Kosmoliaptsis V, Pochinco D, Gibson IW, Ho J, Birk PE, Goldberg A, Karpinski M, Shaw J, Rush DN, Nickerson PW. HLA-DR/DQ molecular mismatch: A prognostic biomarker for primary alloimmunity. Am J Transplant 2019 ; 19 : 1708-1719.
    2) Duquesnoy RJ. HLAMatchmaker: a molecularly based algorithm for histocompatibility determination. I. Description of the algorithm. Hum Immunol 2002 ; 63 : 339-352.
    3) Willicombe M, Blow M, Santos-Nunez E, Freeman C, Brookes P, Taube D. Terasaki Epitope Mismatch Burden Predicts the Development of De Novo DQ Donor-Specific Antibodies and are Associated With Adverse Allograft Outcomes. Transplantation 2018 ; 102 : 127-134.


    問題4. 解答:a c
    解説

    × a 造血幹細胞移植後TMA(transplantation associated TMA:TA-TMA)は、1980年代から造血幹細胞移植後に起こる致死的合併症として認識されるようになった。造血幹細胞移植後のTA-TMAの診断基準は、米国のBlood and Marrow Transplant Clinical Trial Network(BMT-CTN)1)、European Group for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)2)により報告されているが診断感度が高いとは言えず、腎移植後のTMAにそのまま使用すると多くのTMAを見過ごす可能性がある。現在、腎移植後TMAの統一された診断基準はなく、それぞれの報告で患者の抽出方法やTMAの診断基準は異なるのが現状である(2020年5月現在)。
    b ABO血液型不適合腎移植は、TMAのリスク因子である3)。後方視的な解析であるが移植前の抗ドナー血液型抗体価が高い症例や脱感作療法にミコフェノール酸モフェチルを使用しなかった症例に有意にTMAの発症が多かった。
    × c 腎移植後に血小板減少や溶血性貧血所見を伴うTMAはsystemic TMAに分類され早急に治療をしなければならない。原因の検索には移植腎生検や遺伝子検査結果などが必要であり、検査結果が出るまでに時間を要する。そのため、原因が確定しなくても臨床診断で治療を開始する必要がある。
    d 腎移植後に起こるTMAは、二次性TMAに分類され、de-novo TMAが多くを占める4)
    e 腎移植後のTMAの病因として、再発性TMA、抗体関連型拒絶反応、薬剤(カルシニュリン阻害薬やmTOR阻害薬)、虚血再灌流障害、ABO血液型不適合移植、ウイルス感染症、補体遺伝子異常などが報告されているが、これらの病因が明確にならないことも多い。

    参考文献:
    1) Ho VT, Cutler C, Carter S, Martin P, Adams R, Horowitz M, Ferrara J, Soiffer R, Giralt S. Blood and marrow transplant clinical trials network toxicity committee consensus summary: thrombotic microangiopathy after hematopoietic stem cell transplantation. Biol Blood Marrow Transplant. 2005;11(8):571-575.
    2) Ruutu T, Barosi G, Benjamin RJ, Clark RE, George JN, Gratwohl A, Holler E, Iacobelli M, Kentouche K, Lämmle B, Moake JL, Richardson P, Socié G, Zeigler Z, Niederwieser D, Barbui T; European Group for Blood and Marrow Transplantation; European LeukemiaNet. Diagnostic criteria for hematopoietic stem cell transplant-associated microangiopathy: results of a consensus process by an International Working Group. Haematologica. 2007;92(1):95-100.
    3) Tasaki M, Saito K, Nakagawa Y, Imai N, Ito Y, Yoshida Y, Ikeda M, Ishikawa S, Narita I, Takahashi K, Tomita Y. Analysis of the prevalence of systemic de novo thrombotic microangiopathy after ABO-incompatible kidney transplantation and the associated risk factors. Int J Urol. 2019;26(12):1128-1137.
    4) Reynolds JC, Agodoa LY, Yuan CM, Abbott KC. Thrombotic microangiopathy after renal transplantation in the United States. Am J Kidney Dis. 2003;42(5):1058-1068.


    問題5. 解答:c e
    解説

    × a 感染症のリスク評価はかならず移植前に行う。移植に関連して起きる感染症のリスクを評価し、予防接種計画を立てたり、周術期の抗微生物薬の投与計画を立てたりするのに、極めて重要である。
    × b EBVミスマッチ(D+/R-)は、EBV関連移植後リンパ増殖性疾患のリスクとして最も重要である。成人ドナーは既感染者が多く(抗体陽性率が85~90%)、小児ではEBV未感染者の割合が多いため、小児腎移植レシピエントの多くはEBVミスマッチとなり、EBV関連疾患や移植後リンパ増殖性疾患(PTLD:Post-transplant lymphoproliferative disorders)の高リスク群である1。EBV関連疾患に対する有効な治療薬は存在しないため、綿密なモニタリングと、免疫抑制薬の調整が求められる。
    c BKPyV腎症は、移植後1〜2年以内に起きやすいことが知られている。拒絶との鑑別が臨床的には容易でなく、しばしば腎生検が考慮される。腎症の発症時には血漿BKPyV DNAが高値であるため、定期的なモニタリングにより、免疫抑制薬を調整することで、腎症の発症を未然に防ぐことができる2
    × d 移植後CMV感染症のリスクが最も高いのはCMVミスマッチ(D+/R-)である。ドナー由来のCMVにとっては再活性化だがレシピエントの免疫システムにとっては初感染であり、免疫抑制療法下では、正常な免疫応答が誘導されにくい。したがって、CMV抗原血症(またはCMV DNA血漿)にとどまらず、臓器障害を伴うCMV diseaseの割合も高い3
    e 上述の通り、日和見ウイルス感染症の多くは特異的な治療薬が存在せず、免疫抑制薬の調整など、総合的な治療計画を要する。ウイルスの活動性の指標としてウイルス抗原検査や核酸定量検査が有用である4

    参考文献:
    1. Allen UD, Preiksaitis JK, Practice ASTIDCo. Post-transplant Lymphoproliferative Disorders, EBV infection and Disease in Solid Organ Transplantation: Guidelines from the American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice. Clin Transplant. 2019:e13652.
    2. Hirsch HH, Randhawa PS, Practice ASTIDCo. BK polyomavirus in solid organ transplantation-Guidelines from the American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice. Clin Transplant. 2019:e13528.
    3. Baddley JW, Forrest GN, Practice ASTIDCo. Cryptococcosis in solid organ transplantation-Guidelines from the American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice. Clin Transplant. 2019;33(9):e13543.
    4. Malinis M, Boucher HW, Practice ASTIDCo. Screening of donor and candidate prior to solid organ transplantation-Guidelines from the American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice. Clin Transplant. 2019;33(9):e13548.


    問題6. 解答:c e
    解説

    ある集団が標準とする人口集団(例えば全国)と同じ癌の罹患率を持つとしたら、その集団で何人に癌が発生するかを予測し(期待値)、実際に観察された癌の罹患数を期待値で割った値が標準化罹患比である。標準とする集団に比べて、何倍、癌を発症したかを示す値で、これが1の場合は標準集団と同じ、1より大きい場合は、標準集団よりも癌の発生が多いことを意味する。

    × a 胃癌のSIRは日本でも欧米でも1~2程度である。
    × b 子宮頸がんのSIRは各国の報告にばらつきはあるが、おおむね1~2である。日本の報告では子宮体癌のSIRが7程度と高いが欧米で1~2程度と高くない。
    c 腎癌のSIRは7~14と日本、欧米を問わず明らかに高い。
    × d 前立腺癌のSIRは日本でも欧米でも1前後である。
    e 非メラノーマ皮膚癌のSIRは日本で14、欧米では30~50程度と著しく高い。一方、メラノーマのSIRは1~2程度である。

    参考文献:
    1. 岩藤和広、中島一朗、渕之上昌平.腎移植後の悪性腫瘍―その現状と要因と対策―.日臨床腎移植会誌2:44-61, 2014
    2. Vajdic CM, van Leeuwen MT. Cancer incidence and risk factors after solid organ transplantation. Int J Cancer 125: 1747-1754, 2009

  • 問題1. 解答:b d
    解説

    a 運動療法は透析患者の最高酸素摂取量(peakVO2)や6分間歩行距離などの運動耐容能、SF-36やKD-QOLでみた健康関連QOLを改善することが複数の無作為化比較試験から明らかにされている1)2)
    × b 透析患者に対するレジスタンス運動の有効性は証明されており、有害事象の報告もない1)
    c 透析後半の時間帯は血圧低下等の有害事象発生のリスクが高いため、透析施行中に運動療法を実施する場合には透析前半の時間帯が推奨されている2)
    × d FITTとは、Frequency(運動頻度)、Intensity(運動強度)、Time(運動時間)およびType of Exercise(運動種目)のことである3)
    e 運動負荷試験が実施できた場合には、嫌気性代謝閾値(AT)レベルの心拍数、AT-1分時の負荷量あるいは最高心拍の50-70%を用いるのが適当である。運動負荷試験が実施できない場合には、Borgスコアの11(楽である)-13(ややきつい)を目標に負荷設定を行うことが多い2)

    引用文献:
    1) Chan D, Cheema BS. Progressive Resistance Training in End-Stage Renal Disease: Systematic Review. Am J Nephrol. 2016;44(1): 32-45.
    2) 日本腎臓リハビリテーション学会. 腎臓リハビリテーションガイドライン. 南江堂, 東京. 2018.
    3) Riebe D, Franklin BA, Thompson PD, et al. Updating ACSM's Recommendations for Exercise Preparticipation Health Screening. Medicine and science in sports and exercise. 2015;47(11): 2473-2479.


    問題2. 解答:a
    解説

    我が国の診療ガイドラインを総括するMindsでは診療ガイドラインを以下のように定義している。
    「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書。」(福井次矢・山口直人監修『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』医学書院.2014.3頁)

    a
    × b
    × c
    × d
    × e

    問題3. 解答:b
    解説

    a 血圧180/100mmHg以上の場合は運動療法の禁忌であり開始しない1)
    × b 嫌気性代謝閾値(AT)を下回る負荷の有酸素運動が推奨されている1)
    c ゴムバンドを用いたレジスタンス運動はCKD患者に推奨されている。
    d 60秒の静止を伴う柔軟体操はCKD患者に推奨されている1)
    e 腎移植患者は保存期CKD患者に対する運動処方を参考にする1)

    参考文献:
    1) 日本腎臓リハビリテーション学会. 腎臓リハビリテーションガイドライン: 南江堂; 2018.


    問題4. 解答:b
    解説

    × a CKD患者に合併するサルコペニア・フレイルには,加齢や身体活動量低下など多くの要因が関与すると考えられている1)。たんぱく質摂取量の制限(たんぱく質制限)もその要因の1つではあるが,否定的な報告2)もあり,必ずしもたんぱく質制限で発症するものではない。食事療法としては,適切なたんぱく質量の摂取と,十分なエネルギー量の確保が重要である。
    b 3)
    × c 高齢CKD患者では,末期腎不全リスクより死亡リスクのほうが高い4)
    × d CKDの標準的食事療法として,1.0g/kg体重/日未満のたんぱく質制限が推奨されているが,サルコペニア・フレイルの予防や改善には少なくとも1.0g/kg体重/日以上のたんぱく質摂取量が推奨されており,両立しない3)
    × e サルコペニア・フレイルを治療するためには,たんぱく質摂取量を増加するだけでは不十分で,運動療法との併用が重要である5)。また,CKD患者にこれらが合併している場合は,過剰なたんぱく質摂取は,腎機能の悪化あるいは心血管・死亡リスクが増加する可能性があり,避ける必要がある3)

    文献:
    1) Moorthi RN, et al. Clinical relevance of sarcopenia in chronic kidney disease.
    Curr Opin Nephrol Hypertens 2017; 26(3): 219-28.
    2) D'Alessandro C, et al. Prevalence and correlates of sarcopenia among elderly
    CKD outpatients on tertiary care. Nutrients 2018; 10(12): 1951.
    3) 日本腎臓学会.サルコペニア・フレイルを合併した保存期CKDの食事療法の提言.日腎会誌 2019;61:525‒56.
    4) O'Hare AM, et al. Age affects outcomes in chronic kidney disease. J Am Soc Nephrol 2007; 18 (10): 2758-65.
    5) サルコペニア診療ガイドライン作成委員会. サルコペニア診療ガイドライン2017 年版.
    日本サルコペニア・フレイル学会, 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 2017.


    問題5. 解答:c
    解説

    × a クレアチニンは骨格筋量と関連する。
    × b 血清リン濃度は低リン血症の場合には栄養不良との関係が深く、高リン血症はオートファジーを抑制することで細胞の分化を抑制し筋萎縮を促進することが報告されている。
    c 関連性を示す報告はなされていない。
    × d TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインは骨格筋の各受容体を介してNF-κBシグナルを活性化し、ユビキチンリガーゼ遺伝子やMuscle atrophy F-Box(MuRF1)の増加を介して筋タンパク質の分解が促進され、筋萎縮が生じる。
    × e 血中ビタミンD低下は高齢者の転倒や骨折リスクとの関連性が知られており、逆にビタミンDの補給は筋肉の強度および歩行が改善することが示されている。

    参考文献:
    1) Visser M, Deeg DJ, Lips P. Low vitamin D and high parathyroid hormone levels as determinants of loss of muscle strength and muscle mass (sarcopenia): the Longitudinal Aging Study Amsterdam. J Clin Endocrinol Metab 2003; 88: 5766-5772.
    2) Zhang YY, Yang M, Bao JF, Gu LJ, Yu HL, Yuan WJ. Phosphate stimulates myotube atrophy through autophagy activation: evidence of hyperphosphatemia contributing to skeletal muscle wasting in chronic kidney disease. BMC Nephrol. 2018; 19:45.
    3) Sosa P, Alcalde-Estevez E, Plaza P, Troyano N, Alonso C, Martínez-Arias L, Evelem de Melo Aroeira A, Rodriguez-Puyol D, Olmos G, López-Ongil S, Ruíz-Torres MP. Hyperphosphatemia Promotes Senescence of Myoblasts by Impairing Autophagy Through Ilk Overexpression, A Possible Mechanism Involved in Sarcopenia. Aging Dis. 2018; 9: 769-784.


    問題6. 解答:d
    解説

    a サルコペニアを合併したCKD患者の予後は、合併しない場合と比較して死亡率や入院期間が悪化する。尿中クレアチニン排泄量と死亡リスクを検討した報告では、尿中クレアチニン排泄量が減少するほど、すなわち筋肉量が低下するほど死亡リスクが上昇した1)
    b Korea National Health and Nutrition Examination Survey (KNHANES)によると、CKDステージが進むほど筋肉量低下頻度は上昇し、正常およびCKDステージG1、G2、G3~G5で、男性はそれぞれ2.6%、5.6%、18.1%、女性は5.3%、7.1%、12.6%であった2)。BIA法と上腕中央周囲経と皮下脂肪に基づく計算、主観的包括的アセスメントによりサルコペニアと診断したCKDステージG3~G5では、いずれの診断方法であっても、サルコペニアの合併は予後不良であることが確認されている3)
    c クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源となるクレアチンが代謝されてできる。筋肉内で合成されるクレアチニンの量は筋肉量に比例するため、筋肉量が少ない場合、合成されるクレアチニンも少ない。
    × d サルコペニアを合併したCKDにおいて、運動療法はサルコペニア改善に有効であり、運動療法と食事療法の併用は、運動療法単独より有効である可能性が考えられるが、その場合の食事療法は、タンパク質摂取量とともに十分なエネルギー摂取量を確保することが重要である4)
    e CKD患者におけるサルコペニアの発症や進展には、タンパク質の摂取不足以外にもエネルギー不足も大きく関与していると考えられており、さらに加齢や運動不足などの一般的なリスク因子に加えて、炎症、代謝性アシドーシス、天然型ビタミンD不足といったCKD患者特有の因子や利尿薬の服用等、さまざまな要因が寄与していると考えられている5)

    引用文献:
    1) Sinkeler SJ, et al. Creatinine excretion rate and mortality in type 2 diabetes and nephropathy. Diabetes Care 2013; 36: 1489-1494.
    2) Moon SJ, et al. Relationship between stage of chronic kidney disease and sarcopenia in Korean aged 40 years and older using the Korea National Health and Nutrition Examination Surveys (KNHANES IV-2,3 and V-1,2), 2008-2011, PloS One 2015; 10: e0130740
    3) Pereira RA, et al. Sarcopenia in chronic kidney disease on conservative therapy: prevalence and association with mortality. Nephrol Dial Transplant 2015; 30: 1718-1725.
    4) 日本腎臓学会 サルコペニア・フレイルを合併した保存期CKDの食事療法の提言
    サルコペニア・フレイルを合併したCKDの食事療法検討WG
    5) Moorthi RN, Avin KG. Clinical relevance of sarcopenia in chronic kidney disease. Curr Opin Nephrol Hypertens 2017; 26 :219-228

  • 問題1. 解答:a, e
    解説

    × a 間在細胞は酸塩基平衡調節のほか、体液量制御やカリウム排泄にもかかわることが示されている1)2)
    b MRは集合管主細胞・間在細胞に高発現しており3)、MR拮抗薬はこの部位で作用する。
    c 尿細管各部位におけるNa再吸収量の内訳は、近位尿細管が60%、ヘンレのループ太い上行脚が30%、遠位尿細管が7%、集合管が2%程度とされている4)
    d 集合管のNotchシグナルの抑制や活性化に伴って、主細胞と間在細胞の比率が変化することが報告されている5)
    × e pendrinはtype B間在細胞とnon-A non-B間在細胞に発現し、HCO3-排泄とCl-再吸収を担っている6)

    参考文献:
    1. Wall SM, Kim YH, Stanley L, Glapion DM, Everett LA, Green ED, Verlander JW. NaCl restriction upregulates renal Slc26a4 through subcellular redistribution: role in Cl- conservation. Hypertension 2004;44:982-987.
    2. Carrisoza-Gaytan R, Ray EC, Flores D, Marciszyn AL, Wu P, Liu L, Subramanya AR, Wang W, Sheng S, Nkashama LJ, Chen J, Jackson EK, Mutchler SM, Heja S, Kohan DE, Satlin LM, Kleyman TR. Intercalated cell BKalpha subunit is required for flow-induced K+ secretion. JCI Insight 2020;5.
    3. Chen L, Lee JW, Chou CL, Nair AV, Battistone MA, Paunescu TG, Merkulova M, Breton S, Verlander JW, Wall SM, Brown D, Burg MB, Knepper MA. Transcriptomes of major renal collecting duct cell types in mouse identified by single-cell RNA-seq. Proc Natl Acad Sci U S A 2017;114:E9989-E9998. 4. Lifton RP, Gharavi AG, Geller DS. Molecular mechanisms of human hypertension. Cell 2001;104:545-556.
    5. Jeong HW, Jeon US, Koo BK, Kim WY, Im SK, Shin J, Cho Y, Kim J, Kong YY. Inactivation of Notch signaling in the renal collecting duct causes nephrogenic diabetes insipidus in mice. J Clin Invest 2009;119:3290-3300.
    6. Royaux IE, Wall SM, Karniski LP, Everett LA, Suzuki K, Knepper MA, Green ED. Pendrin, encoded by the Pendred syndrome gene, resides in the apical region of renal intercalated cells and mediates bicarbonate secretion. Proc Natl Acad Sci U S A 2001;98:4221-4226.


    問題2. 解答:a, c
    解説

    × a 酸化マグネシウム製剤の添付文書では腎障害は慎重投与とされており、血清マグネシウム濃度を定期的に測定しながら投与することは可能である。
    b ジギタリスのNa-K ATPase活性阻害作用により遠位尿細管でのMg再吸収が阻害され、血清マグネシウム濃度が低下する。低マグネシウム血症はジギタリス中毒を悪化させる可能性があり注意が必要である1)
    × c プロトンポンプ阻害薬による低マグネシウム血症の機序は腸管でのマグネシウム吸収障害と考えられている。
    d インスリン抵抗性により遠位尿細管管腔側のTRPM6(transient receptor potential melastatin 6)の発現が減少し、尿中マグネシウム排泄が亢進する。
    e 保存期CKD患者を対象にしたランダム化比較試験で酸化マグネシウムによる冠動脈石灰化の進展抑制効果が示されている2)

    参考文献:
    1. Young IS, Goh EM, McKillop UH, et al. Magnesium status and digoxin toxicity. Br J Clin Pharmacol. 1991;32(6):717-21.
    2. Sakaguchi Y, Hamano T, Obi Y, et al. A Randomized Trial of Magnesium Oxide and Oral Carbon Adsorbent for Coronary Artery Calcification in Predialysis CKD. J Am Soc Nephrol. 2019;30(6):1073-1085.


    問題3. 解答:b
    解説

    集合管における水の再吸収はarginine vasopressin (AVP)により、厳密に制御されている。血漿浸透圧の上昇は、前視床下部に局在する浸透圧受容体に感知され、脳下垂体からのAVPの分泌を刺激する。AVPは集合管のバゾプレシン2型受容体と結合し、AQP2水チャネルを尿細管管腔側膜へ移動させて尿からの水再吸収を促進させる。通常、血漿浸透圧は2%以内の変動(280〜290mOsm/kg)に厳密にコントロールされている。血漿浸透圧280〜290mOsm/kgがAVP分泌の閾値となっており、口渇の閾値は約290mOsm/kg以上でAVP放出の閾値より高値である。体液量受容体は、浸透圧受容体と比較しAVP分泌の感度が異なる。軽度の体液量低下ではAVPの分泌に変化はないが、低血圧になるほどの有効循環血漿量低下があると、AVPは多量に分泌され、浸透圧受容体による分泌を上回る。

    参考文献:
    1. G L Robertson, R L Shelton, S Athar. The osmoregulation of vasopressin. Kidney Int.1976 Jul;10(1):25-37.
    2. Fredrick L. Dunn, Thomas J. Brennan, Averial E. Nelson, and Gary L. Robertson. The Role of Blood Osmolality and Volume in Regulating Vasopressin Secretion in the Rat. J Clin Invest. 1973 Dec; 52(12): 3212-3219.


    問題4. 解答:a, c
    解説

    うっ血性心不全の治療中に、血清クレアチニン濃度の上昇、worsening renal function WRFに伴い、ループ利尿薬の効果の減弱を来すことをしばしば経験する。この病態を、利尿薬抵抗性、diuretics resistance と呼ばれ、うっ血性心不全の治療において、克服すべき問題とされている。

    × a 高CL血症と利尿薬抵抗性の関連は示唆されていない。
    b 低CL血症と利尿薬抵抗性の関連は示されており、低CL血症は、心不全の予後不良因子である。
    × c 高K血症と利尿薬抵抗性の直接の関連は示されていない。GFRの低下に伴う高K血症と利尿薬抵抗性の関連はある。
    d 低K血症は、レニンの分泌亢進や、遠位曲尿細管のNa再吸収増加から、利尿薬抵抗性を来す。
    e 低Na血症は、GFRの低下、ヘンレ上行脚への原尿の低下、抗利尿ホルモンの分泌と関連しており、利尿薬抵抗性を来たしうる。実際、低Na血症は、心不全の予後不良因子であることが示されている。

    低CL血症や低K血症は、macula densaからのレニン分泌の亢進、遠位曲尿細管でのNaCL再吸収の亢進につながり、利尿薬抵抗性を来たしうる。低Na血症の時は、低CL血症を伴っていることが多く、統計学的処理で補正すると、低Na血症ではなく、低CL血症が、利尿薬抵抗性やうっ血性心不全の予後不良因子であるという報告がある。低CL血症や低K血症は、ループ利尿薬で惹起される電解質異常でもあり、治療中の補正が、利尿薬抵抗性出現の予防の為にも重要と考えられている。

    参考文献:
    Masella C, Viggiano D, Molfino I, et al. Diuretic Resistance in Cardio-Nephrology: Role of Pharmacokinetics, Hypochloremia, and Kidney Remodeling. Kidney Blood Press Res. 2019;44:915‐927.


    問題5. 解答:d, e
    解説

    a 酸(H+)は、アンモニア(NH3)と共にアンモニウム(NH4+)として尿中へ排泄される。高カリウム血症は集合尿細管間在細胞のアンモニアトランスポーターRhesus C glycoprotein (Rhcg)の発現を減少させることにより尿中酸排泄を阻害する。一方、代謝性アシドーシスは、主細胞のrenal outer medullary potassium channel(ROMK)による尿中カリウム排泄を阻害することが示されている。
    b アルドステロンは、高カリウム血症と代謝性アシドーシスのいずれによっても分泌が刺激され、尿中カリウム排泄、酸排泄を促進する。アルドステロンの作用により、高カリウム血症と代謝性アシドーシスのvicious cycleを抑制しているものと考えられる1)
    c CKD患者における尿中アンモニウム排泄量を検討した観察研究によって、尿中NH4+排泄量の減少が末期腎不全または総死亡のリスクファクターとなることが示されている。血中HCO3-濃度の低下とは独立した危険因子であり、今後CKDにおける代謝性アシドーシスを推定する指標となる可能性がある2)
    × d CKDガイドラインでは、静脈血ガス分析でHCO3-が21mmol/Lを下回ったらNaHCO3投与を開始することが提案されている。これまでの観察研究やRCTにおいて、21mmol/L未満が腎機能予後の悪化と関連していたことによる。3)
    × e カリウムの摂取量の増加は、塩分感受性高血圧に対する降圧効果を有することが示唆されている。また、軽度の腎機能低下のCKD患者においても、腎機能低下の遅延をもたらすことが示唆されている。一方で、中等度以上の腎機能低下のCKD患者においては、腎機能低下の進行や死亡率と正に相関することが示されている。4, 5)

    参考文献:
    1. Wagner CA. Effect of mineralocorticoids on acid-base balance. Nephron Physiol 2014; 128: 26:34.
    2. Raphael KL, Carroll DJ, Murray J, Greene T, Beddhu S. Urine ammonium predicts clinical outcomes in hypertensive kidney disease. J Am Soc Nephrol 2017; 28: 2483-2490.
    3. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018.日本腎臓学会編集.東京医学社.東京.2018.
    4. Mente A, O'Donnell MJ, Rangarajan S, McQueen MJ, Poirier P, Wielgosz A, et al. for the PURE Investigators. Association of urinary sodium and potassium excretion with blood pressure. N Engl J Med 2014; 371: 601-611.
    5. He J, Mills KT, Appel LJ, Yang W, Chen J, Lee BT, Rosas SE, Porter A, Makos G, Weir MR, Hamm LL, Kusek JW, Chronic Renal Insufficiency Cohort Study Investigators. Urinary sodium and potassium excretion and CKD progression. J Am Soc Nephrol 2016; 27: 1202-1212.


    問題6. 解答:c, e
    解説

    × a SGLT2阻害薬は心血管リスクに対する安全性を検討するために実施された複数の第3相臨床試験にて心不全による入院の抑制効果が認められた1-3)
    × b SGLT2阻害薬による心血管リスクに対する安全性を評価するための試験では80%以上の患者でACE阻害薬・ARBが処方されているうえで、副次評価項目として複合腎イベントの抑制効果が示された1-3)。また、CREDENCE試験ではほぼ全例ACE阻害薬・ARB内服しており、主要評価項目として評価された複合心腎イベントの抑制効果が示された4)。これらの結果からACE阻害薬・ARBにSGLT2阻害薬を追加することによる腎保護効果が示された5)
    c CREDENCE試験ではeGFR 30〜90ml/min/1.73m2かつ尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR) 300〜5000mg/gCrの糖尿病性腎臓病患者を対象として、主要評価項目として末期腎不全(30日以上の維持透析・腎移植・30日以上eGFR<15ml/min/1.73m2が持続)・血清クレアチニン値の倍化・腎/心血管死亡の複合エンドポイントの抑制効果が示された(HR0.70 95%CI 0.59-0.82)4)
    × d DAPA-HF試験6)、EMPEROR-Reduced試験7)でSGLT2阻害薬はHFrEF患者において2型糖尿病の合併と関係なく心保護効果を有し、その効果はCKDの有無とも関係なく得られることが示されている。
    e CANVAS-Program2)やCREDENCE試験4)でDKAの発症数は少ないものの、SGLT2阻害薬投与群で上昇している。SGLT2阻害薬を使用している患者では発熱・下痢・食思不振による食事量低下時などにはDKAのリスクが上がることを考慮しSGLT2阻害薬の休薬を事前に指導することが重要である8)

    引用文献:
    1. Zinman B.,Wanner C.,Lachin J. M.,Fitchett D.,Bluhmki E.,Hantel S.,Mattheus M.,Devins T.,Johansen O. E.,Woerle H. J.,Broedl U. C.,Inzucchi S. E.,Investigators Empa-Reg Outcome.Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.N Engl J Med 2015;373:2117-2128.
    2. Neal B.,Perkovic V.,Mahaffey K. W.,de Zeeuw D.,Fulcher G.,Erondu N.,Shaw W.,Law G.,Desai M.,Matthews D. R.,Group Canvas Program Collaborative.Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.N Engl J Med 2017;377:644-657.
    3. Wiviott S. D.,Raz I.,Bonaca M. P.,Mosenzon O.,Kato E. T.,Cahn A.,Silverman M. G.,Zelniker T. A.,Kuder J. F.,Murphy S. A.,Bhatt D. L.,Leiter L. A.,McGuire D. K.,Wilding J. P. H.,Ruff C. T.,Gause-Nilsson I. A. M.,Fredriksson M.,Johansson P. A.,Langkilde A. M.,Sabatine M. S.,Investigators Declare-Timi.Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.N Engl J Med 2019;380:347-357.
    4. Perkovic V.,Jardine M. J.,Neal B.,Bompoint S.,Heerspink H. J. L.,Charytan D. M.,Edwards R.,Agarwal R.,Bakris G.,Bull S.,Cannon C. P.,Capuano G.,Chu P. L.,de Zeeuw D.,Greene T.,Levin A.,Pollock C.,Wheeler D. C.,Yavin Y.,Zhang H.,Zinman B.,Meininger G.,Brenner B. M.,Mahaffey K. W.,Investigators Credence Trial.Canagliflozin and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes and Nephropathy.N Engl J Med 2019;380:2295-2306.
    5. Fernandez-Fernandez B.,Fernandez-Prado R.,Gorriz J. L.,Martinez-Castelao A.,Navarro-Gonzalez J. F.,Porrini E.,Soler M. J.,Ortiz A..Canagliflozin and Renal Events in Diabetes with Established Nephropathy Clinical Evaluation and Study of Diabetic Nephropathy with Atrasentan: what was learned about the treatment of diabetic kidney disease with canagliflozin and atrasentan?.Clin Kidney J 2019;12:313-321.
    6. McMurray J. J. V.,Solomon S. D.,Inzucchi S. E.,Kober L.,Kosiborod M. N.,Martinez F. A.,Ponikowski P.,Sabatine M. S.,Anand I. S.,Belohlavek J.,Bohm M.,Chiang C. E.,Chopra V. K.,de Boer R. A.,Desai A. S.,Diez M.,Drozdz J.,Dukat A.,Ge J.,Howlett J. G.,Katova T.,Kitakaze M.,Ljungman C. E. A.,Merkely B.,Nicolau J. C.,O'Meara E.,Petrie M. C.,Vinh P. N.,Schou M.,Tereshchenko S.,Verma S.,Held C.,DeMets D. L.,Docherty K. F.,Jhund P. S.,Bengtsson O.,Sjostrand M.,Langkilde A. M.,Committees Dapa-Hf Trial,Investigators.Dapagliflozin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction.N Engl J Med 2019;381:1995-2008.
    7. Packer M.,Anker S. D.,Butler J.,Filippatos G.,Pocock S. J.,Carson P.,Januzzi J.,Verma S.,Tsutsui H.,Brueckmann M.,Jamal W.,Kimura K.,Schnee J.,Zeller C.,Cotton D.,Bocchi E.,Bohm M.,Choi D. J.,Chopra V.,Chuquiure E.,Giannetti N.,Janssens S.,Zhang J.,Gonzalez Juanatey J. R.,Kaul S.,Brunner-La Rocca H. P.,Merkely B.,Nicholls S. J.,Perrone S.,Pina I.,Ponikowski P.,Sattar N.,Senni M.,Seronde M. F.,Spinar J.,Squire I.,Taddei S.,Wanner C.,Zannad F.,Investigators E. MPEROR-Reduced Trial.Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure.N Engl J Med 2020.
    8. SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会. SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation. 2019年8月6日改訂.

  • 問題1. 解答:d
    解説

    × a eGFRが低下するとSGLT2阻害薬の血糖降下作用は減弱するものの、腎保護効果は保持される。
    × b DAPA-CKDの結果により、非糖尿病患者における心腎保護効果が示されている。[1]
    × c 全ての患者生じるわけではなく、non-dipperの患者も存在する。[2]
    d SGLT2阻害薬によるケトン体の上昇はmTORC1を抑制し、腎保護効果を発揮する[3]。
    × e エンドポイントに使用されているクレアチニンの倍化はeGFR57%に相当する。[4]

    引用文献:
    1. McMurray JJV, Solomon SD, Inzucchi SE, Køber L, Kosiborod MN, Martinez FA, et al. Dapagliflozin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction. N Engl J Med. 2019;381(21):1995-2008. Epub 2019/09/19. doi: 10.1056/NEJMoa1911303. PubMed PMID: 31535829.
    2. Kraus BJ, Weir MR, Bakris GL, Mattheus M, Cherney DZI, Sattar N, et al. Characterization and implications of the initial estimated glomerular filtration rate 'dip' upon sodium-glucose co-transporter-2 inhibition with empagliflozin in the EMPA-REG OUTCOME trial. Kidney Int. 2020. Epub 2020/11/09. doi: 10.1016/j.kint.2020.10.031. PubMed PMID: 33181154.
    3. Tomita I, Kume S, Sugahara S, Osawa N, Yamahara K, Yasuda-Yamahara M, et al. SGLT2 Inhibition Mediates Protection from Diabetic Kidney Disease by Promoting Ketone Body-Induced mTORC1 Inhibition. Cell Metab. 2020;32(3):404-19.e6. Epub 2020/07/28. doi: 10.1016/j.cmet.2020.06.020. PubMed PMID: 32726607.
    4. Inker LA, Lambers Heerspink HJ, Mondal H, Schmid CH, Tighiouart H, Noubary F, et al. GFR decline as an alternative end point to kidney failure in clinical trials: a meta-analysis of treatment effects from 37 randomized trials. Am J Kidney Dis. 2014;64(6):848-59. Epub 2014/10/16. doi: 10.1053/j.ajkd.2014.08.017. PubMed PMID: 25441438.


    問題2. 解答:b, e
    解説

    × a 花筵状線維化と閉塞性静脈炎はIgG4陽性形質細胞浸潤以外の病理所見としてIgG4関連疾患の病理診断に有用である。腎臓では閉塞性静脈炎は認められず花筵状線維化をしばしば認める1,2
    b IgG4関連腎臓病ではほとんどの例で上昇しているが稀に正常例もある3
    × c 38度以上の発熱は2019 ACR/EULAR IgG4-RD 分類基準ではExclusion criteriaの1つである1
    × d 高度の末梢血好酸球増多はIgG4関連腎臓病では稀で、むしろ別の疾患を疑う1
    e ANCA関連血管炎との真の合併は極めて稀である3

    引用文献:
    1. Wallace ZS, Naden RP, Chari S, Choi HK, et. Al. The 2019 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism classification criteria for IgG4-related disease. Ann Rheum Dis. 2020;79:77-87.
    2. Yoshita K, Kawano M, Mizushima I,et al. Light-microscopic characteristics of IgG4-related tubulointerstitial nephritis: distinction from non-IgG4-related tubulointerstitial nephritis. Nephrol Dial Transplant. 2012;27:2755
    3. Saeki T, Kawano M, Nagasawa T, et al. Validation of the diagnostic criteria for IgG4-related kidney disease (IgG4-RKD) 2011, and proposal of a new 2020 version. Clin Exp Nephrol.(in press)


    問題3. 解答:e (4,5)
    解説

    × 1. 医師と患者が治療方針などの決定に関して合意に至るコミュニケーションのプロセスである。
    × 2. 決定にあたっては,エビデンスに基づく医学的情報の他に,患者の価値観,選好(preference)を考慮する。
    × 3. 意思決定ガイドは複雑な意思決定を支援するのに役立つ。
    4. 患者の自己決定権を保証するために,医師は自らの意見や提案を示さないようにする。
    5. インフォームド・コンセントと対立する考え方である。

    a(1,2),b(1,5),c(2,3),d(3,4),e(4,5)

    共同意思決定とは、医師と患者が治療方針などの決定に関して合意に至るコミュニケーションのプロセスである。決定にあたっては、医師はエビデンスに基づく医学的情報と自らの提案を示し、患者は自分が大切にしたいこと、価値観、選好(preference)を示し、医師と患者が協働で患者にとって最善の治療選択をすることである。患者の意思決定支援を効果的にするために開発されたパンフレット、ビデオ、ウェブなどをPatient Decision Aids(意思決定ガイド、意思決定支援ツール)と呼ぶ。治療選択肢の長所、短所に関する情報をわかりやすく示し、患者が自分にあった治療法を選ぶことを支援する。意思決定支援ツールの質を保証するために、作成の国際基準も作られている(International Patient Decision Aids Standard:IPDAS)。意思決定をすすめる話しあいにおいて、医師が自らの意見や提案を示すことは、患者の自己決定権を侵すものではない。共同意思決定プロレスに基づいて、複数の治療選択肢の中から、医療者と患者が協働し、患者にとって最適と思われる決定を下し、侵襲的医療行為の実施に同意した場合には、理想のインフォームド・コンセントとみなすことができる。インフォームド・コンセントと共同意思決定は同一ではないか、対立するものでもない。

  • 問題1. 解答:bとd
    解説

    × a 抗2本鎖DNA抗体は全身性エリテマトーデス患者で、細胞核由来2本鎖DNAへの自己抗体として特徴的に認められ、病勢を反映する(1) (2)。
    b ガラクトース欠損IgA1:Galactose deficient variants of IgA1 (Gd-IgA1)はIgAのヒンジ領域の糖鎖結合のガラクトースを欠損したIgA分画の抗体であり、IgA腎症患者の血中濃度が高値となり、Gd-IgA1と補体成分およびGd-IgA1に結合する血中の抗Gd-IgA1自己抗体が免疫複合体を形成して糸球体のメサンギウム領域に沈着することが特徴である(3) (4)。IgA腎症の進行性を反映する病態マーカーとしても注目されている(5)。
    × c 抗Ro自己抗体は全身性エリテマトーデス患者で認められるRNA結合蛋白質のRo60蛋白に対する自己抗体である(6) (1)。
    d 抗ガラクトース欠損IgA1自己抗体(anti- Gd-IgA1 autoantibody) はIgA腎症でGd-IgA1に対する自己抗体としてみとめられる。Gd-IgA1と結合して補体成分と免疫複合体を形成して糸球体のメサンギウム領域に沈着する(7) (4) 。IgA腎症の進行性を反映する病態マーカーとしても注目されている(8)。
    × e 抗SS-A/Ro抗体はシェーグレン症候群で認められる自己抗体である。

    引用文献:
    1. Tsokos GC. Systemic lupus erythematosus. The New England journal of medicine. 2011;365(22):2110-21.
    2. Anders HJ, Saxena R, Zhao MH, Parodis I, Salmon JE, Mohan C. Lupus nephritis. Nat Rev Dis Primers. 2020;6(1):7.
    3. Moldoveanu Z, Wyatt RJ, Lee JY, Tomana M, Julian BA, Mestecky J, et al. Patients with IgA nephropathy have increased serum galactose-deficient IgA1 levels. Kidney international. 2007;71(11):1148-54.
    4. Kiryluk K, Novak J. The genetics and immunobiology of IgA nephropathy. The Journal of clinical investigation. 2014;124(6):2325-32.
    5. Zhao N, Hou P, Lv J, Moldoveanu Z, Li Y, Kiryluk K, et al. The level of galactose-deficient IgA1 in the sera of patients with IgA nephropathy is associated with disease progression. Kidney international. 2012;82(7):790-6.
    6. Heinlen LD, McClain MT, Ritterhouse LL, Bruner BF, Edgerton CC, Keith MP, et al. 60 kD Ro and nRNP A frequently initiate human lupus autoimmunity. PLoS One. 2010;5(3):e9599.
    7. Suzuki H, Fan R, Zhang Z, Brown R, Hall S, Julian BA, et al. Aberrantly glycosylated IgA1 in IgA nephropathy patients is recognized by IgG antibodies with restricted heterogeneity. The Journal of clinical investigation. 2009;119(6):1668-77.
    8. Berthoux F, Suzuki H, Thibaudin L, Yanagawa H, Maillard N, Mariat C, et al. Autoantibodies targeting galactose-deficient IgA1 associate with progression of IgA nephropathy. Journal of the American Society of Nephrology : JASN. 2012;23(9):1579-87.


    問題2と問題3は連問

    問題2. 解答:b
    解説

    本設問では、尿潜血(-)だが尿沈渣では赤血球 20-29/HPFと、尿潜血偽陰性を示す原因について問われている。

    × a 漢方薬と尿潜血偽陰性は関連がない
    b アスコルビン酸の過剰摂取にて尿潜血が偽陰性となることがある
    × c 溶血の際には、尿潜血が陽性となり、尿中赤血球がみられない
    × d 30歳と若年であり、泌尿器癌の可能性は低く、蛋白尿が1.6g/gCr認められていることから、腎炎をまず考えるべきである。
    × e 生理の際には尿潜血陽性となる可能性はあるが、尿潜血偽陰性にはならない。

    参考文献:
    血尿診断ガイドライン編集委員会:血尿診断ガイドライン2013.ライフサイエンス出版、東京、2013


    問題3. 解答:d
    解説

    このような尿所見異常を呈する疾患の鑑別は、腎臓内科医の日常診療で求められる。蛋白尿を伴う顕微鏡的血尿は末期腎不全の高リスク群であり、腎生検による病理診断に沿った適切な管理を行うことで腎機能予後の改善が期待されるため、腎生検を考慮する。

    × a 30歳と若年であり、泌尿器癌の可能性は低い。また高度蛋白尿(1.6~2.0g/gCr)でていることからも、泌尿器癌は考えにくい。
    × b IgA血管炎では紫斑が特徴であるが、本症例では皮膚所見で異常がないことから考えにくい。
    × c 腎硬化症では顕微鏡的血尿や高度蛋白尿はみられない
    d 3年前から顕微鏡的血尿が陽性であり、今回、蛋白尿が陽性化しており緩徐な進展がうかがえる。現症、検査所見より二次性腎炎は否定的であり、IgA腎症が最も疑われる。
    × e 先行感染の既往がなく、補体低下がみられないため、溶連菌感染後急性糸球体腎炎は否定的である。

    参考文献:
    1. 血尿診断ガイドライン編集委員会:血尿診断ガイドライン2013.ライフサイエンス出版、東京、2013
    2. Yamagata K, Takahashi H, Tomida C, Yamagata Y, Koyama A. Prognosis of asymptomatic hematuria and/or proteinuria in men. High prevalence of IgA nephropathy among proteinuric patients found in mass screening. Nephron. 2002; 91: 34-42.
    3. Iseki K. The Okinawa screening program. J Am Soc Nephrol. 2003; 14: S127-30.


    問題4. 解答:bとd
    解説

    × a IL-17産生T細胞(Th17細胞)は、ループス腎炎患者やマウスの蛋白尿の程度と正の相関があり、免疫抑制剤やコルチコステロイドによる治療によってTh17細胞数が減少することが報告されている1
    b ループス腎炎の腎組織においてもリンパ節や脾臓などの二次リンパ組織に似た胚中心様構造を有しており、自己抗体を産生する形質細胞が同定されている2,3
    × c ループス腎炎における形質細胞性樹状細胞は抗原提示機能よりも、疾患活動性に関与するI型IFNを大量に産生する機能に特化したサブセットである4。I型IFNの刺激を受けた骨髄系樹状細胞からB細胞活性化因子(BAFF)が産生される。
    d ポドサイトやメサンギウム細胞などの腎臓に局在する細胞は、局所に浸潤した免疫細胞による二次的な反応を示すだけなく、これらの細胞そのものが免疫細胞として機能し、サイトカインのバランスや組織のリモデリングを調整している。
    × e Belimumabの主な標的はnaïve B細胞やtransitional B細胞であり、CD27+IgD+memory B細胞や形質芽細胞、形質細胞に対する作用は2次的なものと考えられ、IgG型抗体の減少には時間を要すると考えられている5

    引用文献:
    1. Hsu HC, Yang P, Wang J, et al. Interleukin 17-producing T helper cells and interleukin 17 orchestrate autoreactive germinal center development in autoimmune BXD2 mice. Nat Immunol 2008;9:166-75.
    2. Chang A, Henderson SG, Brandt D, et al. In situ B cell-mediated immune responses and tubulointerstitial inflammation in human lupus nephritis. J Immunol 2011;186:1849-60.
    3. Kang S, Fedoriw Y, Brenneman EK, Truong YK, Kikly K, Vilen BJ. BAFF Induces Tertiary Lymphoid Structures and Positions T Cells within the Glomeruli during Lupus Nephritis. J Immunol 2017;198:2602-11.
    4. Adamichou C, Georgakis S, Bertsias G. Cytokine targets in lupus nephritis: Current and future prospects. Clin Immunol 2019;206:42-52.
    5. Vincent FB, Morand EF, Schneider P, Mackay F. The BAFF/APRIL system in SLE pathogenesis. Nat Rev Rheumatol 2014;10:365-73.


    問題5. 解答:bとd
    解説

    × a ICIsによる腎障害は内分泌臓器障害などと比較して頻度は低い。腎障害のうち最も高頻度とされる急性腎障害の発症頻度は単剤療法で1-2%、複数併用で4-5%程度とされる1
    b 正しい。ICIsによる急性腎障害発症の独立したリスク因子として、治療前の腎機能低下、プロトンポンプ阻害薬使用、ICIs複数併用の3つが報告されている2
    × c ICIsによる異常な自己免疫反応は通常数か月以上持続するとされており、AINにおいても初期反応不良や再燃のリスクがあるため、数か月単位での慎重な減量・中止が勧められる3
    d 正しい。ICIsによるがん治療中の患者においてTMAの発症リスクは複数存在する。TMAを認めた場合、ICIsによる自己免疫反応亢進に伴うインヒビター陽性化による後天性TTPであれば、ステロイドや血漿交換が有効な可能性がある。
    × e 腎移植患者に対するICIs投与に伴う副反応は、高率な拒絶反応発症率、そして高率なグラフトロスが特徴である4,5

    参考文献:
    1. Brahmer J. R.,Lacchetti C.,Schneider B. J.,Atkins M. B.,Brassil K. J.,Caterino J. M.,Chau I.,Ernstoff M. S.,Gardner J. M.,Ginex P.,Hallmeyer S.,Holter Chakrabarty J.,Leighl N. B.,Mammen J. S.,McDermott D. F.,Naing A.,Nastoupil L. J.,Phillips T.,Porter L. D.,Puzanov I.,Reichner C. A.,Santomasso B. D.,Seigel C.,Spira A.,Suarez-Almazor M. E.,Wang Y.,Weber J. S.,Wolchok J. D.,Thompson J. A.,National Comprehensive Cancer Network.Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline.J Clin Oncol 2018;36:1714-1768.
    2. Cortazar F. B.,Kibbelaar Z. A.,Glezerman I. G.,Abudayyeh A.,Mamlouk O.,Motwani S. S.,Murakami N.,Herrmann S. M.,Manohar S.,Shirali A. C.,Kitchlu A.,Shirazian S.,Assal A.,Vijayan A.,Renaghan A. D.,Ortiz-Melo D. I.,Rangarajan S.,Malik A. B.,Hogan J. J.,Dinh A. R.,Shin D. S.,Marrone K. A.,Mithani Z.,Johnson D. B.,Hosseini A.,Uprety D.,Sharma S.,Gupta S.,Reynolds K. L.,Sise M. E.,Leaf D. E..Clinical Features and Outcomes of Immune Checkpoint Inhibitor-Associated AKI: A Multicenter Study.J Am Soc Nephrol 2020;31:435-446.
    3. Shingarev R.,Glezerman I. G..Kidney Complications of Immune Checkpoint Inhibitors: A Review.Am J Kidney Dis 2019;74:529-537.
    4. Manohar S.,Thongprayoon C.,Cheungpasitporn W.,Markovic S. N.,Herrmann S. M..Systematic Review of the Safety of Immune Checkpoint Inhibitors Among Kidney Transplant Patients.Kidney Int Rep 2020;5:149-158.
    5. Murakami N.,Mulvaney P.,Danesh M.,Abudayyeh A.,Diab A.,Abdel-Wahab N.,Abdelrahim M.,Khairallah P.,Shirazian S.,Kukla A.,Owoyemi I. O.,Alhamad T.,Husami S.,Menon M.,Santeusanio A.,Blosser C.,Zuniga S. C.,Soler M. J.,Moreso F.,Mithani Z.,Ortiz-Melo D.,Jaimes E. A.,Gutgarts V.,Lum E.,Danovitch G. M.,Cardarelli F.,Drews R. E.,Bassil C.,Swank J. L.,Westphal S.,Mannon R. B.,Shirai K.,Kitchlu A.,Ong S.,Machado S. M.,Mothi S. S.,Ott P. A.,Rahma O.,Hodi F. S.,Sise M. E.,Gupta S.,Leaf D. E.,Devoe C. E.,Wanchoo R.,Nair V. V.,Schmults C. D.,Hanna G. J.,Sprangers B.,Riella L. V.,Jhaveri K. D.,Immune Checkpoint Inhibitors in Solid Organ Transplant Consortium.A multi-center study on safety and efficacy of immune checkpoint inhibitors in cancer patients with kidney transplant.Kidney international in press.

  • 問題1. 解答:a
    解説

    a 30mg/gCr以上のアルブミン尿
    × b 300mg/gCr以上のアルブミン尿
    × c 0.15g/gCr以上の蛋白尿
    × d 0.5g/gCr以上の蛋白尿
    × e (+1)以上の蛋白尿

    国内では、アルブミン尿の算定は糖尿病又は糖尿病性早期腎症であって微量アルブミン尿を疑うものに対してのみ認められているが、国際的には、KDIGOの最新のガイドラインにおいて、アルブミン尿をCKDの診断に用いることが推奨されている。低感度という弱点がある定性の蛋白尿は、国内でも海外でもCKDの定義には含まれていないが、国内では特定健診の必須項目とされるなど広く普及し、CKDの早期発見に大きな役割を果たしている。

    引用文献:
    1. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney inter., Suppl. 2013; 3: 1-150.
    2. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 (https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf


    問題2. 解答:b,d
    解説

    × a 透析患者56人と医療従事者95人を対象に、ファイザー社のmRNAワクチンを2回接種した30日後の抗体陽性化率は、透析患者 96%(54/56)医療従事者 100%(95/95)であった1)。
    b 物理的な距離を1m以上確保することにより、1m未満と比べるとadjusted odds ratio (aOR) 0.18 [95%CI: 0.09-0.38]、フェイスマスクはaOR 0.15 [95%CI: 0.07- 0.34]、アイガードは aOR 0.22 [95%CI: 0.12-0.39]と、いずれもCOVID-19の感染リスクを低減する効果が確認された2)。
    × c コロナウイルスに対して、0.1%次亜塩素酸ナトリウムおよびアルコール系消毒を使用した環境消毒の効果は、reviewにより確認されている3)。
    d 第3相試験のワクチン2回目接種後の副反応は、16歳から55歳の対象では発熱が16%、倦怠感が59%、56歳以上の対象では発熱が11%、倦怠感が51%であり、論文中では1回目接種時よりも2回目接種時で、56歳以上より16から55 歳で副反応が高い傾向にあることが記載されている4)。
    × e 本邦の一般人口の2021年5月26日時点での致死率は1.5% (10,258/669,304)、5月27日時点の透析患者の致死率は14.2% (250/1,757)であり、透析患者の致死率は非常に高率である。また、70歳以上の高齢者を対象としても、透析患者の致死率は一般人口の2倍以上である5-7)。

    引用文献:
    1. Ayelet Grupper, Nechama Sharon, Talya Finn, et al. Humoral Response to the Pfizer BNT162b2 Vaccine in Patients Undergoing Maintenance Hemodialysis. CJASN April 2021, CJN.03500321; DOI: https://doi.org/10.2215/CJN.03500321
    2. Chu DK, Akl EA, Duda S, Solo K, Yaacoub S, Schünemann HJ; COVID-19 Systematic Urgent Review Group Effort (SURGE) study authors.: Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2020. 27;395(10242):1973-1987.
    3. Kampf G. et al: Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. Journal of Hospital Infection 104 (2020) 246-251
    4. Polack FP, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid‐19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 31;383(27):2603-2615. doi: 10.1056/NEJMoa2034577. Epub 2020 Dec 10.
    5. Kikuchi K, Nangaku M, Ryuzaki M, Yamakawa T, Hanafusa N, Sakai K, Kanno Y, Ando R, Shinoda T, Nakamoto H, Akizawa T. COVID-19 in Dialysis Patients in Japan: Current Status and Guidance on Preventive Measures. Ther Apher Dial. 24: 361-365, 2020
    6. 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和3年5月26日18時時点)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000785178.pdf(2021年5月30日確認)
    7. 菊地勘, 南学正臣, 竜崎崇和, 山川智之, 日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会 新型コロナウイルス感染対策合同委員会. 透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数(2021年5月27日16時時点)
    http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/03_info/doc/corona_virus_infected_number_20210528.pdf(2021年5月30日確認)

  • 問題1. 解答:b, c
    解説

    a ボウマン嚢上皮を不可逆的にラベルしたマウスを使い、幼弱期で一部のボウマン嚢上皮細胞がポドサイトになることが報告されている1
    × b ポドサイトがボウマン嚢上皮になる報告は見あたらない。
    × c ポドサイトは細胞分裂を示すことはほとんどなく、ボウマン嚢上皮細胞は分裂像がしばしば観察される2
    d ボウマン嚢上皮は病的状態でポドサイト特異マーカーを発現することが報告されている3, 4
    e ポドサイトの特徴は細胞間接着装置(スリット膜)の位置に足突起の細胞嵌合があることである。尿細管上皮では、細胞間接着装置は側面の最も頭頂部にあり、細胞嵌合は基底側にあり分離している。

    引用文献:
    1. Appel D, Kershaw DB, Smeets B, Yuan G, Fuss A, Frye B, Elger M, Kriz W, Floege J, Moeller MJ. Recruitment of podocytes from glomerular parietal epithelial cells. J Am Soc Nephrol. 2009;20(2):333-343.
    2. Pabst R, Sterzel RB. Cell renewal of glomerular cell types in normal rats. An autoradiographic analysis. Kidney Int 1983;24(5):626-631.
    3. Ohse T, Vaughan MR, Kopp JB, Krofft RD, Marshall CB, Chang AM, Hudkins KL, Alpers CE, Pippin JW, Shankland SJ. De novo expression of podocyte proteins in parietal epithelial cells during experimental glomerular disease. Am J Physiol Renal Physiol 2010;298(3):F702-F711.
    4. Zhang J, Hansen KM, Pippin JW, Chang AM, Taniguchi Y, Krofft RD, Pickering SG, Liu ZH, Abrass CK, Shankland SJ. De novo expression of podocyte proteins in parietal epithelial cells in experimental aging nephropathy. Am J Physiol Renal Physiol 2012;302(5):F571-F580.


    問題2.
    ※問題では問題形式をAタイプ、a b c d e 、としていましたが
    正しくはK3タイプの a(1,2,3) b(1,2,5) c(1,4,5) d(2,3,4) e(3,4,5)となるため
    解答:Aタイプの場合、a b eなので、b(1,2,5)となります。
    解説

    1. ヒトのネフロン数は栄養状態など様々な母胎環境の影響を受け胎生後期までに決定する。
    2. ネフロン数は出生時体重と関連することが示されている。低出生体重はCKD発症リスク因子の一つである低ネフロン数のサロゲートマーカーとなる。
    × 3. ヒトのネフロン数は、正期産の場合には胎生後期36週頃までに決定し出生後に増加することはない。早期産の場合には産後数十日程度の間に増加することがある。
    × 4. 正常加齢によって経年的に荒廃化したネフロンは腎組織に吸収され痕跡なく消失するため総ネフロン数は減少する。
    5. ヒトのネフロンは皮膜下近傍皮質の方に多く分布する。皮髄境界近傍皮質の方が糸球体のサイズは大きくループは長い。
  • 問題1. 解答:d, e
    解説

    a 糖尿病では、I型、II型にかかわらず貧血を来しやすく、eGFRが正常であっても、貧血にもかかわらず血清EPO濃度が上昇していないことが報告されている1, 2。EPOの産生が不十分であることから、この病態は腎性貧血と言える。
    b 鉄欠乏性貧血はEPO抵抗性最大の原因であるが、最近鉄欠乏によって、赤血球前駆細胞のEPO受容体の発現が落ちることが貧血の原因であることが報告された。実際、赤血球前駆細胞のEPO受容体を強制発現させておくと、鉄欠乏であっても貧血は生じない3
    c FGF23自体が、血清EPO濃度を下げ、赤血球産生を抑制することが報告された。またFGF23は炎症を惹起させ、これにより肝臓でのヘプシジン発現が亢進し、鉄の吸収が落ち、鉄の囲い込みの原因とする4
    × d 透析患者でTSAT<20%であれば、鉄欠乏性貧血となる。日本透析医学会の統計調査からはESAの投与量が一番少なくなるのは、TSAT>30%である5
    × e 透析患者において、鉄欠乏の時だけ鉄を投与する群に比べて、積極的に鉄を投与すると、心不全だけでなく心筋梗塞も減らすことが血液透析患者における大規模なPIVOTAL研究から報告された6。この機序はESAの投与量を減らすことや、鉄投与が血管石灰化を抑制するためと考えられる。

    引用文献:
    1. Thomas MC. The high prevalence of anemia in diabetes is linked to functional erythropoietin deficiency. Semin Nephrol. 2006 Jul;26(4):275-82.
    2. Fujita Y, Doi Y, Hamano T, et al. Low erythropoietin levels predict faster renal function decline in diabetic patients with anemia: a prospective cohort study. Sci Rep. 2019 Oct 16;9(1):14871.
    3. Khalil S, Delehanty L, Grado S, et al. Iron modulation of erythropoiesis is associated with Scribble-mediated control of the erythropoietin receptor. J Exp Med. 2018 Feb 5;215(2):661-679.
    4. Agoro R, Montagna A, Goetz R, et al. Inhibition of fibroblast growth factor 23 (FGF23) signaling rescues renal anemia. FASEB J. 2018 Jul;32(7):3752-3764.
    5. Hamano T, Fujii N, Hayashi T, et al. Thresholds of Iron Markers for Iron Deficiency Erythropoiesis----Finding of The Japanese Nation-wide Dialysis Registry Kidney Int Suppl (2011). 2015 Jun;5(1):23-32.
    6. Macdougall IC, White C, Anker SD, et al; PIVOTAL Investigators and Committees.
    Intravenous Iron in Patients Undergoing Maintenance Hemodialysis. N Engl J Med. 2019 Jan 31;380(5):447-458.


    問題2. 解答:b
    解説

    HIF-PH阻害薬は経口可能な小分子化合物であり、造血亢進を介して血清ヘプシジン値を減少させることで、鉄輸送・吸収の改善をもたらし、赤血球造血を改善させる。またESA製剤では著明に上昇していた血中EPO濃度が、生理的なレベルを維持したままで赤血球造血が亢進する。ただし、HIF-PH阻害薬投与に伴い貯蔵鉄が効率よく消費されるため、適切な鉄代謝マーカーのフォローと鉄剤の補充が重要とされる。
    HIF-PH阻害薬がVEGF発現を誘導する可能性があり、悪性腫瘍への影響が危惧されている。他にも、糖尿病網膜症の血管増生亢進や、多発性嚢胞腎の嚢胞拡大に関与する可能性があり、本邦におけるHIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(日本腎臓学会. HIF-PH 阻害薬適正使用に関する recommendation日腎会誌 2020;62(7):711‒716)でも注意喚起がなされている。

  • 問題1. 解答:a, c
    解説

    mRNAワクチン接種後の腎障害は多岐に渡り、選択肢の腎疾患はいずれも報告がある。これらの中で、現在までに報告数が多いのは、IgA腎症と微小変化型ネフローゼ症候群である。


    問題2. 解答:a, e
    解説

    × a 約80~90%である
    b ナンセンス変異を有する男性患者はミスセンス変異を有する男性患者より末期腎不全への進行が速く、前者は無治療の場合は20歳以前に末期腎不全に至る患者が多い。同様にtruncatingの変異を有する患者は、有さない患者より末期腎不全への進行が速い。ゆえに、遺伝子検査により変異の種類を同定することは予後の予測の上で意義がある。
    c 後方視的研究であるが、RAS阻害薬による蛋白尿の抑制と腎保護作用が示されている。
    d 2021.05.25より保険承認されている(8,000点)。かずさDNA研究所に依頼する。
    × e 女性患者であっても、ナンセンス変異やtruncatingの変異を有する患者は末期腎不全に進行する事は少なくない。

    参考文献:
    1. Yamamura T, Horinouchi T, Nagano C, Omori T, Sakakibara N, Aoto Y, Ishiko S, Nakanishi K, Shima Y, Nagase H, Takeda H, Rossanti R, Ye MJ, Nozu Y, Ishimori S, Ninchoji T, Kaito H, Morisada N, Iijima K, Nozu K. Genotype-phenotype correlations influence the response to angiotensin-targeting drugs in Japanese patients with male X-linked Alport syndrome. Kidney Int 2020; 98: 1605-1614.
    2. アルポート症候群 診療ガイドライン 小児腎臓学会編 2017 診断と治療社


    問題3. 解答:d, e
    解説

    SGLT2阻害薬はCREDENCE及びDAPA-CKDで腎保護効果が証明された。今後、CKD患者への使用が拡大する中で薬剤への理解を深めることが安全のため重要である。

    × a 1型糖尿病患者への使用はインスリン製剤との併用療法としての適応を取得した製剤もあるが、ケトアシドーシスのリスク増加が報告されており慎重であるべきである。
    × b 多くの臨床研究からSGLT2阻害薬投与後にGFR低下をきたすことが示されている。intial dipと呼ばれアルブミン尿低下を伴い、糸球体内圧を軽減している可能性を示唆する結果である。
    × c SGLT2阻害薬はglucose排泄増加とともにNaの排泄が増加することが知られている。このため血圧低下作用がある。これが腎保護効果の機序とも考えられる(1)。
    d CREDENCE試験の解析ではSGLT2阻害薬がHbを上昇させる効果があり、貧血をoutcomeした場合にイベント抑制効果があることが示されている(2)。
    e SGLT2阻害薬は尿酸を下げて痛風を予防する効果があることが示されている(3)。

    参考文献:
    1. Kinguchi S, Wakui H, Ito Y, Kondo Y, Azushima K, Osada U, et al. Improved home BP profile with dapagliflozin is associated with amelioration of albuminuria in Japanese patients with diabetic nephropathy: the Yokohama add-on inhibitory efficacy of dapagliflozin on albuminuria in Japanese patients with type 2 diabetes study (Y-AIDA study). Cardiovasc Diabetol. 2019;18(1):110.
    2. Oshima M, Neuen BL, Jardine MJ, Bakris G, Edwards R, Levin A, et al. Effects of canagliflozin on anaemia in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease: a post-hoc analysis from the CREDENCE trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020;8(11):903-14.
    3. Fralick M, Chen SK, Patorno E, Kim SC. Assessing the Risk for Gout With Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors in Patients With Type 2 Diabetes: A Population-Based Cohort Study. Ann Intern Med. 2020;172(3):186-94.


    問題4. 解答:d
    解説

    SGLT-2阻害薬を始めとして、最近腎臓病治療薬として登場する薬剤が増加している。
    HIF-PH阻害薬の適応は「腎性貧血」である。動物実験においてAKI治療薬としての有用性が期待されるが、HIF-PH阻害薬の治療効果を決定するいくつかの重要なパラメータ(投与時期、投与量、投与頻度、投与経路(経口投与か非経口投与か)など)についての詳細な検討を進めねばならない。


    問題5. 解答:b, c
    解説

    × b FGF23の受容体は、FGF受容体単体ではなく、FGF受容体とKlotho蛋白の複合体である。
    × c FGF23は活性型ビタミンDの合成抑制作用がある。

    参考文献:
    Kuro-o M. The Klotho proteins in health and disease. Nat Rev Nephrol. 2019;15:27-44.

  • 問題1. 解答:c, d
    解説

    × a 近位尿細管では糸球体で濾過されたNaの60~70%が再吸収される。この再吸収に関わる分子は、Na+/H+交換輸送体(NHE3)、ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT2、SGLT1)、Na依存性リン酸トランスポータ(NaPi-IIa、NaPi-IIc)などである。これらはNaに共役した分子の再吸収決定に重要であるが、最終的なNaの再吸収量は遠位ネフロンで決定されるため、血圧調節に関与する割合は極めて少ない。
    × b Henle係蹄太い上行脚では糸球体で濾過されたNaの約25%が再吸収され、これに関わる分子はNa+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC2)である。ここでの再吸収量によって遠位ネフロンに到達するNa量が決定されるが、最終的なNa再吸収量の調節における役割は少なく、血圧調節にはあまり関与しない。
    c 遠位尿細管では糸球体で濾過されたNaの7~10%が再吸収され、これに関わる分子はNa+-Cl-共輸送体である(NCC)。NCCはその上位でセリン・スレオニンキナーゼであるOSR1/SPAKにより制御され、さらにこれはWNKキナーゼによって調節されている。そしてWNKはアンジオテンシンIIやアルドステロン、NaやKによって調節を受けている。ここでのNa再吸収は最終的なNa再吸収量の決定に重要であり、血圧調節に重要と考えられる。WNKとそれを分解調節するKeich-like3/Cullin3の遺伝子異常は、Gordon症候群の原因となることが知られている。
    d 皮質集合管では糸球体で濾過されたNaの約3%が再吸収され、これに関わる分子は上皮型Naチャネル(ENaC)である。絶対量としては少ないが、これ以降はNa再吸収がほとんど行われないため、最終的なNa再吸収量の決定、および血圧調節における役割は重要である。ENaCの発現を司るのがアルドステロン-ミネラルコルチコイド受容体(MR)系であり、MR拮抗薬は降圧薬として用いられる。
    × e 髄質集合管では主に、バソプレシンによる水再吸収の調節が行われる。Naの再吸収はほとんど行われず、血圧調節における意義は小さい。

    問題2. 解答:b, d
    解説

    × a カリウム摂取量と血圧の間には負の相関関係があり、代用塩を用いた臨床研究によりカリウムの降圧作用、心血管保護作用が示されている1
    b 正しい2
    × c FGF23はリン利尿ホルモンであり、近位尿細管でのリン再吸収を抑制する。
    d 正しい。
    × e SGLT2阻害薬は近位尿細管での糖再吸収を抑制する。

    参考文献:
    1. Neal B, Wu Y, Feng X, et al. Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death. N Engl J Med 2021; 385: 1067-1077.
    2. Ellison DH, Welling P. Insights into Salt Handling and Blood Pressure. N Engl J Med 2021; 385: 1981-1993.


    問題3. 解答:c, e
    解説

    × a 月単位で塩分摂取量を固定し、尿中ナトリウム排泄量を観察したMars500studyにおいて、6g/日食塩摂取期間と比較して12g/日食塩摂取期間では、24時間飲水量が減少したことが示されている。
    × b 腎臓の尿濃縮に必要な尿素を供給するため、肝臓や筋肉において蛋白質の異化が亢進する。
    c 文章の通り。
    × d 皮膚や筋肉などの組織局所では血液-腎臓と独立したナトリウム制御機構が存在することが示されている。
    e 皮膚においてマクロファージなどの免疫細胞がナトリウム制御に関与していることが示されている。

    問題4. 解答:d
    解説

    a MRのリガンドはアルドステロンであり、その過剰を呈する原発性アルドステロン症(PA)にはMR拮抗薬が非常に有効である
    b 偽アルドステロン症は、漢方薬の甘草などにより腎局所におけるコルチゾール不活化酵素(11βHSD2)が阻害され、コルチゾールがMRを活性化して高血圧を来す病態である。高アルドステロン血症は呈さないが、MR拮抗薬は有効であり、MR関連高血圧の1つと言える。
    c 治療抵抗性高血圧において、MR拮抗薬のadd-onが血圧の改善につながったとする報告が多数ある1,2
    × d MR拮抗薬は比較的歴史が浅い薬剤が多く、妊娠への安全性は確立されていない。スピロノラクトンは古くからあるMR拮抗薬だが、MR以外にAR(アンドロゲン受容体)への阻害作用も持つため、性ホルモンへの影響が危惧される。
    e 糖尿病性腎症を対象とした多くの臨床試験の結果が報告されており、RA系阻害薬投与下でのMR拮抗薬add-onの有益性が示されている3,4,5

    引用文献:
    1. Williams B, MacDonald TM, Morant S, Webb DJ, Sever P, McInnes G, Ford I, Cruickshank JK, Caulfield MJ, Salsbury J, Mackenzie I, Padmanabhan S, Brown MJ; British Hypertension Society's PATHWAY Studies Group. Spironolactone versus placebo, bisoprolol, and doxazosin to determine the optimal treatment for drug-resistant hypertension (PATHWAY-2): a randomised, double-blind, crossover trial. Lancet 2015 ; 386 : 2059-2068.
    2. Pimenta E, Calhoun DA. Resistant hypertension and aldosteronism. Curr Hypertens Rep 2007 ; 9 : 353-9.
    3. Rossing K, Schjoedt KJ, Smidt UM, Boomsma F, Parving HH. Beneficial effects of adding spironolactone to recommended antihypertensive treatment in diabetic nephropathy: a randomized, double-masked, cross-over study. Diabetes Care 2005 ; 28 : 2106-12.
    4. Ito S, Kashihara N, Shikata K, Nangaku M, Wada T, Okuda Y, Sawanobori T. Esaxerenone (CS-3150) in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria (ESAX-DN): Phase 3 Randomized Controlled Clinical Trial. Clin J Am Soc Nephrol 2020 ; 15 : 1715-1727.
    5. Bakris GL, Agarwal R, Anker SD, Pitt B, Ruilope LM, Rossing P, Kolkhof P, Nowack C, Schloemer P, Joseph A, Filippatos G; FIDELIO-DKD Investigators. Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med 2020 ; 383 : 2219-2229.


    問題5. 解答:c
    解説

    × a ナトリウム利尿ペプチドの作用はグアニリルシクラーゼを介し、サイクリックGMPによって伝えられる。
    × b ネプリライシンはナトリウム利尿ペプチドのほか、エンドセリン、アドレノメデュリン、アンジオテンシンⅠ、ブラディキニン、グルカゴン、glucagon-like peptide-1 (GLP-1)を分解する作用をもつ1
    c ARNIは降圧効果のほか、主に収縮力の低下した心不全患者において心血管死と心不全入院の抑制、NT-pro BNPの低下作用が報告されている2
    × d ナトリウム利尿ペプチドは腎血流の増加、輸入細動脈の拡張作用が報告されている3
    × e ANPの受容体グアニリルシクラーゼAは腎臓において血管平滑筋、血管内皮細胞、集合管、遠位尿細管、ヘンレループ、近位尿細管、ポドサイト、メサンギウム細胞に発現している4

    1. D'Elia E, Iacovoni A, Vaduganathan M, Lorini FL, Perlini S, Senni M. Neprilysin inhibition in heart failure: mechanisms and substrates beyond modulating natriuretic peptides. Eur J Heart Fail 2017; 19: 710-717.
    2. Zile MR, Claggett BL, Prescott MF, McMurray JJ, Packer M, Rouleau JL, Swedberg K, Desai AS, Gong J, Shi VC, Solomon SD. Prognostic Implications of Changes in N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide in Patients With Heart Failure. J Am Coll Cardiol 2016; 68: 2425-2436.
    3. Kimura K, Hirata Y, Nanba S, Tojo A, Matsuoka H, Sugimoto T. Effects of atrial natriuretic peptide on renal arterioles: morphometric analysis using microvascular casts. Am J Physiol. 1990; 259 :F936-944.
    4. Potter LR, Abbey-Hosch S, Dickey DM. Natriuretic peptides, their receptors, and cyclic guanosine monophosphate-dependent signaling functions. Endocr Rev 2006; 27: 47-72.


    問題6. 解答:b, e
    解説

    a デナベーション手技としては、主に高周波アブレーション、超音波アブレーション、アルコールを用いたケミカルアブレーションがあり、いずれも腎動脈内腔より経カテーテル的に除神経する。
    × b 透析患者に対する両側腎臓摘出により、筋交感神経活動が正常化すること1、治療抵抗性高血圧の血圧コントロールが改善すること2が症例報告されているものの、CKD stage4および5に対する腎デナベーションの無作為化比較試験は行われていない。現在CKD stage3(eGFR30~59ml/min/1.72m2)に対する無作為化比較試験が進行中である(RDN-CKD Study [https://www.clinicaltrials.gov; unique identifier: NCT04264403])。
    c 様々な高血圧モデル動物に対する腎デナベーションの降圧効果の違いが報告されており3、高血圧の成因によって腎デナベーションの効果が異なることが想定される。
    d 現在までのところ、腎デナベーションの降圧効果と安全性は最大3年間持続することが報告されている4
    × e メタ解析の結果、腎デナベーションは診察室収縮期血圧をベースラインから5.25mmHg減少させた5。この低下は心血管イベント低減に有効であると考えられるが6、腎デナベーションによる脳心血管イベント抑制を直接示した無作為化比較試験は行われていない。

    参考文献:
    1. Converse Jr RL, Jacobsen TN, Toto RD, Jost CM, Cosentino F, Fouad-Tarazi F, Victor RG. Sympathetic overactivity in patients with chronic renal failure. Engl J Med 1992;327:1912-1918
    2. Zazgornik J, Biesenbach G, Janko O, Gross C, Mair R, Brücke P, Debska-Slizien A, Rutkowski B. Bilateral nephrectomy: the best, but often overlooked, treatment for refractory hypertension in hemodialysis patients. Am J Hypertens 1998;11:1364-1370
    3. Katsurada K, Ogoyama Y, Imai Y, Patel KP and Kario K. Renal denervation based on experimental rationale. Hypertens Res. 2021;44:1385-1394
    4. Mahfoud F, Bohm M, Schmieder R, Narkiewicz K, Ewen S, Ruilope L, Schlaich M, Williams B, Fahy M and Mancia G. Effects of renal denervation on kidney function and long-term outcomes: 3-year follow-up from the Global SYMPLICITY Registry. Eur Heart J. 2019;40:3474-3482
    5. Ogoyama Y, Tada K, Abe M, Nanto S, Shibata H, Mukoyama M, Kai H, Arima H and Kario K. Effects of renal denervation on blood pressures in patients with hypertension: a systematic review and meta-analysis of randomized sham-controlled trials. Hypertens Res. 2022;45:210-220
    6. Mahfoud F, Schmieder RE, Azizi M, Pathak A, Sievert H, Tsioufis C, Zeller T, Bertog S, Blankestijn PJ, Bohm M, Burnier M, Chatellier G, Durand Zaleski I, Ewen S, Grassi G, Joner M, Kjeldsen SE, Lobo MD, Lotan C, Luscher TF, Parati G, Rossignol P, Ruilope L, Sharif F, van Leeuwen E, Volpe M, Windecker S, Witkowski A and Wijns W. Proceedings from the 2nd European Clinical Consensus Conference for device-based therapies for hypertension: state of the art and considerations for the future. Eur Heart J. 2017;38:3272-3281

  • 問題1. 解答:d
    解説

    免疫チェックポイント阻害薬投与中の患者のおよそ2〜5%に急性腎障害が発症する。この薬剤群は多くの臨床試験で様々な癌腫に対する有効性が示され、適用範囲を広げているため、関連する腎障害の分子機序・病態・臨床像について知っておく必要がある。

    × a T細胞に発現するPD-1、腫瘍細胞に発現するPD-L1などの免疫チェックポイント分子はT細胞関連免疫応答のエフェクター相において互いに結合することにより、T細胞の増殖やエフェクター機能を抑制することが知られている1)
    × b 免疫関連有害事象としての腎障害の主座となることが多いのは尿細管間質性領域である2,3)。糸球体障害についても、pauci-immune型糸球体腎炎/血管炎をはじめ、様々な病変が報告されている4)が、急性間質性腎炎に比べて数は少ない。
    × c 免疫チェックポイント阻害薬に関連した急性腎障害の発症時期は研究により様々であるが、14〜16週程度を中央値・平均値とするものが多い2,3)。投与後早期の発症例は必ずしも多くない。
    d 免疫チェックポイント阻害薬が使用された症例で腎障害を発症するリスク因子として、投与開始時の低いGFR、他臓器での免疫関連有害事象の存在、免疫チェックポイント阻害薬の併用などとともに、複数の研究でプロトンポンプ阻害薬の使用が関連していると報告されている2,3,5,6)
    × e 免疫チェックポイント阻害薬に関連した急性腎障害から回復した患者における、投与再開後の急性腎障害再発の割合は研究により様々であるが、15〜25%とする報告が多い2,3,7-9)

    1. Bluestone JA, Anderson M. Tolerance in the Age of Immunotherapy. N Engl J Med 2020; 383: 1156-1166.
    2. Cortazar FB, Kibbelaar ZA, Glezerman IG, Abudayyeh A, Mamlouk O, Motwani SS, Murakami N, Herrmann SM, Manohar S, Shirali AC, Kitchlu A, Shirazian S, Assal A, Vijayan A, Renaghan AD, Ortiz-Melo DI, Rangarajan S, Malik AB, Hogan JJ, Dinh AR, Shin DS, Marrone KA, Mithani Z, Johnson DB, Hosseini A, Uprety D, Sharma S, Gupta S, Reynolds KL, Sise ME, Leaf DE. Clinical Features and Outcomes of Immune Checkpoint Inhibitor-Associated AKI: A Multicenter Study. J Am Soc Nephrol 2020; 31: 435-446.
    3. Gupta S, Short SAP, Sise ME, Prosek JM, Madhavan SM, Soler MJ, Ostermann M, Herrmann SM, Abudayyeh A, Anand S, Glezerman I, Motwani SS, Murakami N, Wanchoo R, Ortiz-Melo DI, Rashidi A, Sprangers B, Aggarwal V, Malik AB, Loew S, Carlos CA, Chang WT, Beckerman P, Mithani Z, Shah CV, Renaghan AD, Seigneux S, Campedel L, Kitchlu A, Shin DS, Rangarajan S, Deshpande P, Coppock G, Eijgelsheim M, Seethapathy H, Lee MD, Strohbehn IA, Owen DH, Husain M, Garcia-Carro C, Bermejo S, Lumlertgul N, Seylanova N, Flanders L, Isik B, Mamlouk O, Lin JS, Garcia P, Kaghazchi A, Khanin Y, Kansal SK, Wauters E, Chandra S, Schmidt-Ott KM, Hsu RK, Tio MC, Sarvode Mothi S, Singh H, Schrag D, Jhaveri KD, Reynolds KL, Cortazar FB, Leaf DE; ICPi-AKI Consortium Investigators. Acute kidney injury in patients treated with immune checkpoint inhibitors. J Immunother Cancer. 2021; 9: e003467.
    4. Kitchlu A, Jhaveri KD, Wadhwani S, Deshpande P, Harel Z, Kishibe T, Henriksen K, Wanchoo R. A Systematic Review of Immune Checkpoint Inhibitor-Associated Glomerular Disease. Kidney Int Rep. 2020;6: 66-77.
    5. Seethapathy H, Zhao S, Chute DF, Zubiri L, Oppong Y, Strohbehn I, Cortazar FB, Leaf DE, Mooradian MJ, Villani AC, Sullivan RJ, Reynolds K, Sise ME. The Incidence, Causes, and Risk Factors of Acute Kidney Injury in Patients Receiving Immune Checkpoint Inhibitors. Clin J Am Soc Nephrol. 2019; 14: 1692-1700.
    6. Seethapathy H, Zhao S, Strohbehn IA, Lee M, Chute DF, Bates H, Molina GE, Zubiri L, Gupta S, Motwani S, Leaf DE, Sullivan RJ, Rahma O, Blumenthal KG, Villani AC, Reynolds KL, Sise ME. Incidence and Clinical Features of Immune-Related Acute Kidney Injury in Patients Receiving Programmed Cell Death Ligand-1 Inhibitors. Kidney Int Rep 2020; 5: 1700-1705.
    7. Isik B, Alexander MP, Manohar S, Vaughan L, Kottschade L, Markovic S, Lieske J, Kukla A, Leung N, Herrmann SM. Biomarkers, Clinical Features, and Rechallenge for Immune Checkpoint Inhibitor Renal Immune-Related Adverse Events. Kidney Int Rep. 2021; 6: 1022-1031.
    8. Espi M, Teuma C, Novel-Catin E, Maillet D, Souquet PJ, Dalle S, Koppe L, Fouque D. Renal adverse effects of immune checkpoints inhibitors in clinical practice: ImmuNoTox study. Eur J Cancer. 2021; 147: 29-39.
    9. Draibe JB, García-Carro C, Martinez-Valenzuela L, Agraz I, Fulladosa X, Bolufer M, Tango A, Torras J, Soler MJ. Acute tubulointerstitial nephritis induced by checkpoint inhibitors versus classical acute tubulointerstitial nephritis: are they the same disease? Clin Kidney J. 2020; 14: 884-890.


    問題2. 解答:c, e
    解説

    × a 幹細胞移植後の膜性腎症は慢性移植片対宿主病(GVHD)との関連が報告されている。
    × b TA-TMAは二次性TMAの範疇に入りADAMTS13活性の低下を伴わない場合が殆どである
    c 急性腎障害のstageの進行に伴い死亡率は上昇する。(1)
    × d 幹細胞移植後のAKIは移植100日以内の発症が多く、血小板数が低く腎生検が困難な場合が多い
    e 移植関連血栓性微小血管障害症(TA-TMA)の原因の一つにカルシニューリン阻害薬がある。(2)

    1. Kagoya Y, Kataoka K, Nannya Y, Kurokawa M. Pretransplant predictors and posttransplant sequels of acute kidney injury after allogeneic stem cell transplantation. Biol Blood Marrow Transplant. 2011;17(3):394-400. Epub 2010/07/27. doi: 10.1016/j.bbmt.2010.07.010. PubMed PMID: 20655388.
    2. Sarkodee-Adoo C, Sotirescu D, Sensenbrenner L, Rapoport AP, Cottler-Fox M, Tricot G, et al. Thrombotic microangiopathy in blood and marrow transplant patients receiving tacrolimus or cyclosporine A. Transfusion. 2003;43(1):78-84. doi: 10.1046/j.1537-2995.2003.00282.x. PubMed PMID: 12519434.


    問題3. 解答:a
    解説

    × a 腎移植の待機候補となるためには、がん治療が完了しかつ、治療完了後からの待機期間(がん種・がんのステージにより異なる)が推奨されている1
    b 腎移植後には皮膚がんのリスクが非移植患者と比較して3から10倍となることが知られており、日焼け止めの塗布、帽子をかぶるなどの紫外線対策に加え、年1回の皮膚科医による全身スクリーニングが推奨されている。
    c 皮膚扁平上皮癌を移植後に罹患した腎移植後患者を対象としたランダム比較試験によると、mTOR阻害薬の使用には皮膚扁平上皮癌の二次予防効果があることが示されている2
    d 免疫チェックポイント阻害薬は抗腫瘍免疫反応を促進することで治療効果を上げるが、移植片に対する免疫反応も活性化されることで急性拒絶反応(T細胞性拒絶、抗体関連拒絶ともに)を誘発されることが報告されている3
    e ドナーEBV陽性、レシピエントEBV陰性のミスマッチがPTLDの危険因子と知られている。その他にも、T細胞枯渇導入療法や小児の移植もPTLDのリスクである。

    参考文献
    1. Al-Adra DP, Hammel L, Roberts J, et al. Pretransplant solid organ malignancy and organ transplant candidacy: A consensus expert opinion statement. Am J Transplant. 2021;21(2):460-474.
    2. Euvrard S, Morelon E, Rostaing L, et al. Sirolimus and secondary skin-cancer prevention in kidney transplantation. N Engl J Med. 2012;367(4):329-339.
    3. Murakami N, Mulvaney P, Danesh M, et al. A multi-center study on safety and efficacy of immune checkpoint inhibitors in cancer patients with kidney transplant. Kidney Int. 2021;100(1):196-205.


    問題4. 解答:b
    解説

    × a 直径4cm以上であっても、一般的に直径7cmまでのT1b腫瘍であれば、腫瘍の位置と術者の技量を鑑みて開腹やロボット支援での腎部分切除術が選択される。
    b 術中腎阻血時間が25分以内であっても、無阻血に比較すると有意に腎機能低下に関連し、25分を超えると不可逆な腎機能障害となりうるとされている (BJU Int. 2016;118:692-705)。
    × c 上部尿路上皮がんに対する尿管部分切除術が行われることはあるが、腎盂限局の尿路上皮がんに対する腎部分切除術は行われない。
    × d 両腎が存在する場合の片側腎部分切除術後の腎機能は、術前の90%程度となる(Int Urol Nephrol. 2022 Apr;54(4):805-811, Int J Urol. 2021 Jun;28(6):630-636. )。
    × e ロボット支援手術と開腹手術では術後腎機能に有意差は報告されていない。(PLoS One. 2014 Apr 16;9(4):e94878.)

    参考文献
    Rod X, Peyronnet B, Seisen T, Pradere B, Gomez FD, Verhoest G, Vaessen C, De La Taille A, Bensalah K, Roupret M. Impact of ischaemia time on renal function after partial nephrectomy: a systematic review. BJU Int. 2016 Nov;118(5):692-705. doi: 10.1111/bju.13580. Epub 2016 Aug 9. PMID: 27409986.
    Hatayama T, Tasaka R, Mochizuki H, Mita K. Comparison of surgical outcomes and split renal function between laparoscopic and robot-assisted partial nephrectomy: a propensity score-matched analysis. Int Urol Nephrol. 2022 Apr;54(4):805-811. doi: 10.1007/s11255-022-03144-1. Epub 2022 Feb 18. PMID: 35178639.
    Kobayashi S, Mutaguchi J, Kashiwagi E, Takeuchi A, Shiota M, Inokuchi J, Eto M. Clinical advantages of robot-assisted partial nephrectomy versus laparoscopic partial nephrectomy in terms of global and split renal functions: A propensity score-matched comparative analysis. Int J Urol. 2021 Jun;28(6):630-636. doi: 10.1111/iju.14525. Epub 2021 Mar 3. PMID: 33660374.
    Wu Z, Li M, Liu B, Cai C, Ye H, Lv C, Yang Q, Sheng J, Song S, Qu L, Xiao L, Sun Y, Wang L. Robotic versus open partial nephrectomy: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014 Apr 16;9(4):e94878. doi: 10.1371/journal.pone.0094878. PMID: 24740259; PMCID: PMC3989253.


    問題5. 解答:a, c
    解説

    × a がん治療では、臨床試験で用いた腎機能の指標を用いて投与設計を行うことが多い。そのため、古くから使用される抗がん薬では、クレアチニンクリアランスに基づいた投与量調節が推奨される場合もある。
    b 腎機能低下患者におけるカルボプラチンの投与量は、酵素法で測定した血清クレアチニン値に0.2を加えて、Cockcroft‒Gault式によって算出した推定クレアチニンクリアランスをCalvert式のGFRとして代用して算出される。1)
    × c 透析では組織へ移行した薬物が除去されないため、薬物除去を目的とした透析の実施は推奨されていない。2)
    d 低アルブミン血症患者では、薬物の遊離型分率上昇により副作用が増強される可能性がある。しかし、データが限られることからも、低アルブミン血症において一律に投与量の減量を提案するものではない。
    e 透析患者では、5-FUなど肝代謝型薬物でも代謝物の排泄が遅延して副作用が発現する可能性がある。3)

    <引用文献>
    1. Calvert AH, Newell DR, Gumbrell LA, O'Reilly S, Burnell M, Boxall FE, Siddik ZH, Judson IR, Gore ME, Wiltshaw E. Carboplatin dosage: prospective evaluation of a simple formula based on renal function. J. Clin. Oncol. 1989; 7:1748-1756.
    2. がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016 日本腎臓学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本腎臓病薬物療法学会 ライフサイエンス出版
    3. Nishikawa Y, Funakoshi T, Horimatsu T, Miyamoto S, Matsubara T, Yanagita M, Nakagawa S, Yonezawa A, Matsubara K, Muto M. Accumulation of alpha-fluoro-beta-alanine and fluoro mono acetate in a patient with 5-fluorouracil-associated hyperammonemia. Cancer Chemother Pharmacol. 2017; 79(3):629-633.


    問題6. 解答:a, b
    解説

    × a 担癌患者では炎症が存在することが多いためヘプシジンが高くなり、鉄の囲い込みが起こりやすい。その結果、TSATは低いが血清フェリチン値が高いことが多く、これによって癌を発見できることもある。フェリチンが昔は腫瘍マーカーであったことを想起されたい。
    × b 担癌患者ではESAの使用は推奨されていない。また癌の既往がある患者においても、ダルベポエチンの使用で癌死が多いことがTREAT研究で報告された。
    c HIF-PH阻害薬によってVEGFが上昇する可能性が報告されており、癌の進行や転移が促される理論的根拠はある。しかしまだエビデンスは確立されていない。
    d 担癌患者においては血栓症が起こりやすい。無作為化研究において、癌患者にESAを使った場合に鉄を静注併用投与した方が、血小板数が上がりにくいことが報告されている。またこの血小板数が上昇することが、血栓のリスクであることが判明している。
    e SGLT2阻害薬の使用によって内因性エリスロポエチンが誘導され、貧血が改善することがCKD stage 3までは報告されている。また癌患者においても同様であることが最近報告された。

    〈引用文献〉
    1. Pfeffer MA, Burdmann EA, Chen CY, et al; TREAT Investigators A trial of darbepoetin alfa in type 2 diabetes and chronic kidney disease. N Engl J Med. 2009 Nov 19;361(21):2019-32.
    2. Henry DH, Dahl NV, Auerbach MA. Thrombocytosis and venous thromboembolism in cancer patients with chemotherapy induced anemia may be related to ESA induced iron restricted erythropoiesis and reversed by administration of IV iron. Am J Hematol. 2012 Mar;87(3):308-10.
    3. Murashima M, Tanaka T, Kasugai T, et al. Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors and anemia among diabetes patients in real clinical practice. J Diabetes Investig. 2022 Apr;13(4):638-646.

  • 問題1. 解答:d,e
    解説

    ISN/RPS分類 III型、IV型の寛解導入療法では、20ヵ国で実施されたALMS試験1の結果などをふまえて、シクロホスファミド大量静注療法(intravenous cyclophosphamide pulse therapy, IVCY)またはミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil, MMF)のいずれかを第一選択薬として投与することが、国内外の診療ガイドラインに記載されている2-5

    × a タクロリムスはガイドラインではIVCYやMMFが使用できない場合や効果不十分な場合の候補薬となっている2-5。またタクロリムスとMMFとの併用療法は、蛋白尿の多い症例やステロイド早期減量を目指す症例などで推奨される5
    × b リツキシマブはANCA関連血管炎の寛解導入では、IVCYとともに第一選択薬であるが、ループス腎炎ではLUNAR試験において、MMFとの併用療法の有用性が示せなかった6。難治例などで使用されることがある。
    × c アザチオプリンは寛解導入療法で使用されることは少ないが、寛解維持療法では、MMFとともに第一選択薬となる2-5
    d IVCYは1960年代からの米国国立衛生研究所(NIH)の一連の臨床試験の成績より、長期的腎予後の改善も含めて、有用性が示されている。2009年に報告されたALMS試験ではIVCYはMMFとほぼ同等の寛解導入における有用性が示された1
    e MMFは2000年代になりループス腎炎における有用性が報告されるようになり、ALMS試験でIVCYとほぼ同等の有用性が示された1

    <引用文献>
    1. Appel GB, Contreras G, Dooley MA, et al. Mycophenolate mofetil versus cyclophosphamide for induction treatment of lupus nephritis. J Am Soc Nephrol. 2009;20(5):1103-12.
    2. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業自己免疫疾患に関する調査研究班, 日本リウマチ学会 編集. 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019. 東京: 南山堂. 2019.
    3. Hahn BH, McMahon MA, Wilkinson A, et al. American College of Rheumatology guidelines for screening, treatment, and management of lupus nephritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64(6):797-808.
    4. Fanouriakis A, Kostopoulou M, Cheema K, et al. 2019 Update of the Joint European League Against Rheumatism and European Renal Association-European Dialysis and Transplant Association (EULAR/ERA-EDTA) recommendations for the management of lupus nephritis. Ann Rheum Dis. 2020;79(6):713-723.
    5. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Chapter 10: Lupus nephritis. Kidney Int. 2021;100 (4S):S207-S275.
    6. Rovin BH, Furie R, Latinis K, et al. Efficacy and safety of rituximab in patients with active proliferative lupus nephritis: The lupus nephritis assessment with rituximab (LUNAR) study. Arthritis Rheum. 2012;64(4):1215-1226.


    問題2. 解答:b,d
    解説

    × a RPGNも原因疾患として最多であるのはANCA関連血管炎である。
    b 好中球細胞外トラップ(NETs)は活性化した好中球がDNAと細胞質内のMPO、PR3、ヒストン、好中球エラスターゼなど殺菌酵素から成る網状の構造物を細胞外に放出することで殺菌する免疫システムとして2004年に報告され、この際に生じる好中球の細胞死はNETosisと呼ばれている。ANCA関連血管炎における病態形成へのNETsの関与は実験的、組織学的に明らかにされている1, 2
    × c ANCA関連血管炎の寛解導入治療としてのリツキシマブの有効性を評価したRCTにはRAVE試験3、RITUXVAS試験4などがあるが、いずれもシクロホスファミドに対する非劣性が示されている。リツキシマブとメトトレキサートの有効性を直接比較するRCTは実施されていない。
    d リツキシマブ投与は抗体産生細胞であるBリンパ球を枯渇させるため、ワクチン接種後の抗体獲得能は低下する5
    × e ANCA関連血管炎による腎障害は、腎組織学的にPauci-immune型の半月体形成性糸球体腎炎を特徴とする。しかしながら疾患動物モデルの解析結果から、補体副経路の活性化がANCA関連血管炎の病態形成に関与することが示唆され、C5a受容体阻害薬であるアバコバンの有効性がADOVOCATE試験により示されている6

    <引用文献>
    1. Kessenbrock K, Krumbholz M, Schonermarck U, et al. Netting neutrophils in autoimmune small-vessel vasculitis. Nat Med. 2009;15:623-5.
    2. Heeringa P, Rutgers A and Kallenberg CGM. The net effect of ANCA on neutrophil extracellular trap formation. Kidney Int. 2018;94:14-16.
    3. Stone JH, Merkel PA, Spiera R, et al. Rituximab versus cyclophosphamide for ANCA-associated vasculitis. N Engl J Med. 2010;363:221-32.
    4. Jones RB, Tervaert JW, Hauser T, et al. Rituximab versus cyclophosphamide in ANCA-associated renal vasculitis. N Engl J Med. 2010;363:211-20.
    5. Furer V, Eviatar T, Zisman D, et al. Immunogenicity and safety of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in adult patients with autoimmune inflammatory rheumatic diseases and in the general population: a multicentre study. Ann Rheum Dis. 2021;80:1330-1338.
    6. Jayne DRW, Merkel PA, Schall TJ, et al. Avacopan for the Treatment of ANCA-Associated Vasculitis. N Engl J Med. 2021;384:599-609.


    問題3. 解答:a,c
    解説

    a MCNSは治療開始後1年で9割以上が完全寛解し、寛解後の再発率は46.5%であった。
    × b アルブミン濃度が低い(≦1.5 g/dL)患者は早期に寛解する。
    c 記載の通り。
    × d eGFR 30%低下または末期腎不全への進行の複合アウトカムについて、variant間に有意差は認められなかった。
    × e 日本腎臓学会評議員を対象としたwebアンケートにより、ワクチン接種後の再発や新規発症が報告されている。

    以上より、正しい記述はaとc。


    問題4. 解答:a,c
    解説

    a アジア人の発症率の高さはさまざまな研究で示されており、本邦の発症率も10万人あたり6.5人と欧米からの報告に比べて約3倍ほどである。
    × b 基本的に多因子により発症する。ゲノムワイド関連解析 (GWAS)による疾患感受性遺伝子の探索が行われている。
    c 初回感受性の場合には遺伝子異常を伴うネフローゼ症候群の可能性は低いため遺伝子検査は推奨されない。
    × d リツキシマブは優れた再発予防効果を有するが、一定期間の後に再び再発することが知られている。
    × e 遺伝子異常を伴うFSGSでは移植後再発は見られない。

    問題5. 解答:a,e
    解説

    × a 血中抗PLA2R抗体が陽性であれば一次性膜性腎症と診断する重要な根拠となるが、自己免疫疾患、感染症、悪性腫瘍などの検索を行って、これらが存在しないことを確認しない限り二次性膜性腎症の合併を否定できない。膜性腎症では高齢患者が多いため、抗PLA2R抗体陽性、かつ、悪性腫瘍や感染症をもつ症例は稀ではない。
    b 一次性膜性腎症に占めるPLA2R関連膜性腎症の割合は、諸外国では70〜90%を占めるが、日本では30〜70%と低い。1)
    c 一次性膜性腎症では糸球体に沈着するIgGサブクラスはIgG4が主体である。一次性膜性腎症の亜型であるPLA2R関連膜性腎症では血中PLA2R抗体のIgGサブクラスもIgG4が主体である。二次性膜性腎症では糸球体に沈着するIgGのサブクラスはIgG1とIgG2が主体である。
    d PLA2R関連膜性腎症において血中PLA2R抗体濃度は疾患の免疫的病勢を反映している。2021年度版KDIGO糸球体疾患診療ガイドライン2)では血中PLA2R抗体濃度の経時的測定が疾患の予後リスク評価や治療反応性の判定に有用としている。
    × e 抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブは,主に小児のネフローゼ症候群に対する有効性が報告され3)、2014年から成人を含む難治性ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)に対して保険適用となったが、成人発症の膜性腎症の初期治療には保険適応外である。

    <引用文献>
    1) Akiyama S, Akiyama M, Imai E, Ozaki T, Matsuo S, Maruyama S. Prevalence of anti-phospholipase A2 receptor antibodies in Japanese patients with membranous nephropathy. Clin Exp Nephrol. 2015;19(4):653-60.
    2) Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int. 2021;100(4S):S1-S276.
    3) Iijima K, Sako M, Nozu K, Mori R, Tuchida N, Kamei K, Miura K, Aya K, Nakanishi K, Ohtomo Y, Takahashi S, Tanaka R, Kaito H, Nakamura H, Ishikura K, Ito S, Ohashi Y; Rituximab for Childhood-onset Refractory Nephrotic Syndrome (RCRNS) Study Group. Rituximab for childhood-onset, complicated, frequently relapsing nephrotic syndrome or steroid-dependent nephrotic syndrome: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Lancet. 2014;384(9950):1273-81.


    問題6. 解答:c,d
    解説

    a 主として糸球体毛細血管基底膜の二重化を伴う糸球体係蹄壁の肥厚(membrano-)と係蹄内の細胞増殖(proliferative)を特徴とする病理組織像を呈する.
    b Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)の専門家会議により,C3の染色性が免疫グロブリンの沈着と比し2段階以上の強い蛍光強度を示す場合は,ほかの免疫グロブリン・古典経路の補体因子の染色性が弱陽性で認められてもC3腎症と呼称されるようになった1)
    × c 主に補体第二経路(alternative pathway:AP)が関与する.これまでにC3腎症に関連するAP異常として,遺伝子異常に起因するC3の機能獲得型変異・C3およびC4 nephritic factor(C3NeF, C4NeF)の出現・CFBに対する自己抗体)・CFH)やCFH関連蛋白(CFHR)の異常などが報告されている2)
    × d C3腎症患者の遺伝子解析において,補体経路の異常に伴うものが同定されつつあり,今後の診断・治療の進歩につながることが期待されている.しかしC3腎症と診断された患者のうち遺伝子異常が実際に同定されるのは25%程度である2)
    e C3NefはC3転換酵素(C3bBb)のエピトープに対する自己抗体で,補体第二経路の活性を維持させる.DDDの症例で約80%,C3腎炎でも約50%に陽性3)とC3腎症診断に有用性が高い.

    <引用文献>
    1. Goodship TH, Cook HT, Fakhouri F, et al. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a "Kidney Disease: Improving Global Outcomes" (KDIGO) Controversies Conference. Kidney Int 2017:91:539-551.
    2. Fakhouri F, Le Quintrec M, Fremeaux-Bacchi V: Practical management of C3 glomerulopathy and immunoglobulin-mediated MPGN: facts and uncertainties. Kidney Int 98:1135-1148, 2020
    3. Gale DP, de Jorge EG, Cook HT, et al. Identification of a mutation in complement factor H-related protein 5 in patients of Cypriot origin with glomerulonephritis. Lancet. 2010;376:794-801.


    問題7. 解答:a,e
    解説

    a International Risk Prediction toolの予測式は,QxMDに収載されており,Web(https://qxcalc.app.link/igarisk)かスマートフォン用のアプリケーションから,各項目を入力することで,5年後のeGFR50%減少予測が可能となっている1)
    × b KDIGO 2021では,3ヶ月間支持療法を最適化しても腎不全進行のリスクが残る症例(尿蛋白 >0.75-1g/日)に対しては,ステロイドの6カ月間の使用を検討すること (grade 2B),ただし副作用などのrisk(特にeGFR<50 ml/min/1.73m²の症例)とbenefitを患者と話し合った後に使用することを推奨している2)
    × c 扁桃摘出は本邦で行われることは多いが,世界的には受け入れられておらず,KDIGO 2021では,Caucasianに対して扁摘は推奨されないとしているものの,「日本のコホート研究で扁摘単独もしくは扁摘パルス療法の臨床的改善効果を示す報告が多数ある」と初めて追加記載された2)
    × d Dapagliflozinは,非糖尿病性慢性腎臓病患者に対しても腎保護作用を発揮することが明らかにされ,2021年よりIgA腎症を含む非糖尿病性慢性腎臓病患者に対して適応となった3)
    e Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-COV-2) による感染症 (COVID-19)に対するワクチン接種後に肉眼的血尿を呈するIgA腎症の症例が国内外から報告されている4)

    1) Barbour SJ, Coppo R, Zhang H, Liu ZH, Suzuki Y, Matsuzaki K, Katafuchi R, Er L, Espino-Hernandez G, Kim SJ, Reich HN, Feehally J, Cattran DC, International IgA Nephropathy Network. Evaluating a New International Risk-Prediction Tool in IgA Nephropathy. JAMA Intern Med. 2019 Jul 1;179(7):942-52.
    2) Rovin BH, Adler SG, Barratt J, Bridoux F, Burdge KA, Chan TM, Cook HT, Fervenza FC, Gibson KL, Glassock RJ, Jayne DRW, Jha V, Liew A, Liu ZH, Mejía-Vilet JM, Nester CM, Radhakrishnan J, Rave EM, Reich HN, Ronco P, Sanders JSF, Sethi S, Suzuki Y, Tang SCW, Tesar V, Vivarelli M, Wetzels JFM, Floege J. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int. 2021 Oct 1;100(4):S1-276.
    3) Heerspink HJL, Stefánsson BV, Correa-Rotter R, Chertow GM, Greene T, Hou FF, Mann JFE, McMurray JJV, Lindberg M, Rossing P, Sjöström CD, Toto RD, Langkilde AM, Wheeler DC, DAPA-CKD Trial Committees and Investigators. Dapagliflozin in patients with chronic kidney disease. N Engl J Med. 2020 Oct 8;383(15):1436-46.
    4) Matsuzaki K, Aoki R, Nihei Y, Suzuki H, Kihara M, Yokoo T, Kashihara N, Narita I, Suzuki Y. Gross hematuria after SARS-CoV-2 vaccination: questionnaire survey in Japan. Clin Exp Nephrol. 2022 Apr;26(4):316-22.

  • 問題1. 解答:b,d
    解説

    a エサキセレノンを用いたESAX-DN試験では、女性化乳房の報告はなかった1。フィネレノンを用いたFIDELIO-DKD試験でも報告はなく2、FIGARO-DKD試験では0.1%と稀で偽薬群(0.1%)と同等だった3
    × b フィネレノンの半減期は短く4、FIDLIO-DKD試験でも収縮期血圧の低下も2.1 mmHgと高くなかった(偽薬群 +0.9 mmHg)2
    c 2型糖尿病合併CKD患者を対象とした FIDELIO-DKD試験2とFIGARO-DKD試験3やFIDELITY解析5において、フィネレノンは心血管複合アウトカムと腎複合アウトカムを低下させた。
    × d 治療抵抗性高血圧患者を対象としたPATHWAY-2試験ではMR拮抗薬が高い降圧作用を有していたが、サブ解析ではMR拮抗薬の降圧効果と血漿アルドステロン濃度には有意な相関関係を認めなかった6。高血圧診療ガイドライン2019やAHA scientific statements7においても血漿アルドステロン濃度が高くない症例においてもMR拮抗薬が推奨されている。
    e エプレレノン・エサキセレノン・フィネレノンにおいて、SGLT2阻害薬との併用はMR拮抗薬による高K血症のリスクを低減することが報告されている8,9,10

    <引用文献>
    1. Ito S, Kashihara N, Shikata K, et al.; Esaxerenone (CS-3150) in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria (ESAX-DN): Phase 3 Randomized Controlled Clinical Trial. Clin J Am Soc Nephrol 2020; 15: 1715-1727.
    2. Bakris GL, Agarwal R, Anker SD, P et al.; Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med 2020; 383: 2219-2229.
    3. Pitt B, Filippatos G, Agarwal R, et al.; Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes. N Engl J Med 2021; 385: 2252-2263.
    4. Epstein M, Kovesdy CP, Clase CM, et al.; Aldosterone, Mineralocorticoid Receptor Activation, and CKD: A Review of Evolving Treatment Paradigms. Am J Kidney Dis 2022; 80: 658-666.
    5. Agarwal R, Filippatos G, Pitt B, et al.; Cardiovascular and kidney outcomes with finerenone in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease: the FIDELITY pooled analysis. Eur Heart J 2022; 43: 474-484.
    6. Williams B, MacDonald TM, Morant SV, et al.; Endocrine and haemodynamic changes in resistant hypertension, and blood pressure responses to spironolactone or amiloride: the PATHWAY-2 mechanisms substudies. Lancet Diabetes Endocrinol 2018; 6: 464-475.
    7. Carey RM, Calhoun DA, Bakris GL, et al.; Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension 2018; 72: e53-e90.
    8. Agarwal R, Joseph A, Anker SD, et al.; Hyperkalemia Risk with Finerenone: Results from the FIDELIO-DKD Trial. J Am Soc Nephrol, 33: 225-237, 2022.
    9. Provenzano M, Puchades MJ, Garofalo C, Jongs N, D'Marco L, Andreucci M, De Nicola L, Gorriz JL, Heerspink HJL, et al. Albuminuria-Lowering Effect of Dapagliflozin, Eplerenone, and Their Combination in Patients with Chronic Kidney Disease: A Randomized Crossover Clinical Trial. J Am Soc Nephrol 2022; 33: 1569-1580.
    10. Shikata K, Ito S, Kashihara N, et al.; Reduction in the magnitude of serum potassium elevation in combination therapy with esaxerenone (CS-3150) and sodium-glucose cotransporter 2 inhibitor in patients with diabetic kidney disease: Subanalysis of two phase III studies. J Diabetes Investig 2022; 13: 1190-1202.


    問題2. 解答:b,d
    解説

    Hepcidinは腎より排泄されるために, 腎機能の低下に伴い血中濃度は上昇すると考えられている. 但し, Hepcidinの発現は鉄の貯蔵状態に影響を受けるため, 全ての末期腎不全患者でその血中濃度は高値を示すわけではない.
    Hepcidinは過剰な鉄やIL-6により誘導を受ける. 一方でエリスロフェロンやGDF-15により抑制される. 過剰に誘導されたHepcidinは消化管からの鉄の吸収を阻害し, 網内系細胞への鉄の偏在化の原因となり, 鉄の造血への利用を阻害する.
    HIF-PH阻害剤は, Divalent metal transporter 1, Duodenal cytochrome B, Transferrin, Transferrin receptor等の鉄調節因子を誘導する. 更に従来のESAより高いHepcidin抑制効果を有する事が報告され, 鉄の造血への有効な利用が期待されている.


    問題3. 解答:d
    解説

    × 1 晩産でなく早産がリスクとなる1)
    2 母体糖尿病は先天性腎尿路異常発症と関連する2)
    3 子宮内発育遅延および早産による低出生体重は腎疾患のリスクである3)
    4 新生児期の急性腎障害は慢性腎臓病の発症に関連する4)
    × 5 体重増加不良でなく肥満が慢性腎臓病の発症に関連する5)

    文献
    1. Sangla A, Kandasamy Y. Effects of prematurity on long-term renal health: a systematic review. BMJ Open 2021;11:e047770. doi: 047710.041136/bmjopen-042020-047770.
    2. Parimi M, Nitsch D. A Systematic Review and Meta-Analysis of Diabetes During Pregnancy and Congenital Genitourinary Abnormalities. Kidney Int Rep 2020;5:678-693. doi: 610.1016/j.ekir.2020.1002.1027.
    3. White SL, Perkovic V, Cass A, et al. Is low birth weight an antecedent of CKD in later life? A systematic review of observational studies. Am J Kidney Dis 2009;54:248-261. doi: 210.1053/j.ajkd.2008.1012.1042.
    4. Coleman C, Tambay Perez A, Selewski DT, Steflik HJ. Neonatal Acute Kidney Injury. Front Pediatr 2022;10:842544.:10.3389/fped.2022.842544.
    5. Abitbol CL, Chandar J, Rodríguez MM, et al. Obesity and preterm birth: additive risks in the progression of kidney disease in children. Pediatr Nephrol 2009;24:1363-1370. doi: 1310.1007/s00467-00009-01120-00462.


    問題4. 解答:d,e
    解説

    × a 淡明細胞癌に対するペンブロリズマブを用いた術後補助療法は、①pT2(腫瘍サイズが7㎝以上)かつ核異形がFuhrman grade4あるいは肉腫様分化を伴う②pT3以上でリンパ節転移・遠隔転移を認めない③いずれのT stageでも構わないが手術によって切除された所属リンパ節転移・オリゴ遠隔転移を有する(M1 with no evidence of disease: M1 NED)のいずれかにおいて無病生存期間の延長を期待できる(1)。
    × b 免疫チェックポイント阻害剤による治療歴のない尿路上皮癌患者におけるエンホルツマブ・ベドチンの有効性及び安全性は確立していない。
    × c 筋層を超える浸潤(pT3~T4a)や所属リンパ節転移(pN)を 伴う尿路上皮癌(膀胱癌・腎盂尿管癌)患者に対するニボルマブ術後補助療法は、無病生存期間の延長に寄与する(2)。
    d 腫瘍量の多い転移性去勢感受性前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法+ドセタキセルはエビデンスが確立された標準治療である(3) (4)。
    e 2022年の診療報酬改定で、腹腔鏡下副腎摘出術、腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術に対するロボット支援手術が保険収載された。

    1. Choueiri TK, Tomczak P, Park SH, Venugopal B, Ferguson T, Chang YH, et al. Adjuvant Pembrolizumab after Nephrectomy in Renal-Cell Carcinoma. The New England journal of medicine. 2021;385(8):683-94.
    2. Bajorin DF, Witjes JA, Gschwend JE, Schenker M, Valderrama BP, Tomita Y, et al. Adjuvant Nivolumab versus Placebo in Muscle-Invasive Urothelial Carcinoma. The New England journal of medicine. 2021;384(22):2102-14.
    3. Sweeney CJ, Chen YH, Carducci M, Liu G, Jarrard DF, Eisenberger M, et al. Chemohormonal Therapy in Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer. The New England journal of medicine. 2015;373(8):737-46.
    4. James ND, Sydes MR, Clarke NW, Mason MD, Dearnaley DP, Spears MR, et al. Addition of docetaxel, zoledronic acid, or both to first-line long-term hormone therapy in prostate cancer (STAMPEDE): survival results from an adaptive, multiarm, multistage, platform randomised controlled trial. Lancet (London, England). 2016;387(10024):1163-77

  • 問題1. 解答:c
    解説

    × a Rh血液型はアンモニア輸送体であるRhタンパク質ファミリーを抗原とする1)
    × b MNS血液型は糖タンパク質であるGlycophorin AおよびBを抗原とする2)
    c ABO血液型は糖鎖であるH抗原を抗原とする。Aアリル(α-1,3-N-acetylgalactosamine transferase遺伝子),Bアリル(α-1,3-galactosyl transferase遺伝子)によりコードされる糖転移酵素によりH 抗原はN-acetyl galactosamine(GalNAc)あるいはGalactose(Gal)が付加される3)
    × d Duffy血液型は糖タンパク質であるCD234を抗原とする4)
    × e P関連血液型はα-1,4-galactosyltransferaseおよびβ-1,3-N-acetylgalactosaminyltransferaseにより糖鎖を付加されたラクトシルセラミドを抗原とする。

    参考文献
    1. Westhoff CM. The Rh blood group system in review: a new face for the next decade. Transfusion 2004; 44:1663-1673.
    2. Reid ME. MNS blood group system: a review. Immunohematology 2009; 25: 95-101.
    3. Sanna S, Kurilshikov A, van der Graaf A, Fu J, Zhernakova A. Challenges and future directions for studying effects of host genetics on the gut microbiome. Nat Genet 2022; 54: 100-106.
    4. Neote K, Mak JY, Kolakowski LF Jr, Schall TJ. Functional and biochemical analysis of the cloned Duffy antigen: identity with the red blood cell chemokine receptor. Blood 1994; 84: 44.


    問題2. 解答:b
    解説

    × a 腸内菌叢が何らかの理由で異常をきたしている(総菌数が著しく減少,あるいは構成比率が変化している)状態を指し,食生活・感染・抗菌薬の使用などが原因としてあげられる。
    b プレバイオティクスは腸細菌叢を構成する細菌種の成長あるいは活性を選択的に刺激することにより,宿主に有益な影響を与える難消化性の食品成分を指し,オリゴ糖類がもっともよく利用されている2)
    × c プロバイオティクスは腸細菌叢のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物を指す3)
    × d シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものを指す3)
    × e 生態系における生きた微生物の集合(細菌叢)を指す1)

    参考文献
    1. Sumida K, Lau WL, Kovesdy CP, Kalantar-Zadeh K, Kalantar-Zadeh K. Microbiome modulation as a novel therapeutic approach in chronic kidney disease. Curr Opin Nephrol Hypertens 2021; 30: 75-84.
    2. Gibson GR, Roberfroid MB. Dietary modulation of the human colonic microbiota: introducing the concept of prebiotics. J Nutr 1995; 125: 1401-1412.
    3. Fuller R. Probiotics in man and animals. J Appl Bacteriol 1989; 66: 365-378.


    問題3. 解答:b,e
    解説

    × a 本邦のMetSの診断基準には最上流に肥満をおく1)
    b Bacteroides門の菌は有益な菌が多く,その一方でFirmicutes門の菌は脂質,糖代謝に悪影響を及ぼす。Bacteroidetes/Firmicutes比を高くすることが,正常の腸内細菌の分布に近い状態とされている。2)
    × c Lactobacillus casei Shirotaの投与が試されたが有意な効果は認められなかった3)。 Akkermansia muciniphilaを含有する腸内細菌製剤で体重,脂質代謝,インスリン抵抗性,肝機能,高エンドトキシン血症の改善が認められている4)
    × d シンバイオティクスのプレバイオティクスとしてはヒトにおいて消化分解されない多糖類,でんぷんが用いられ,イヌリンやfructo-oligosaccharide(FOS)が用いられる。5,6)
    e 九州の久山町研究ではMetS 有無別に推算糸球体濾過量(eGFR)低下の累積発症率(性年齢調整後)を検討したところ,MetS(−)群では 4.8%,MetS(+)群では 10.6%で,両群間に有意差を認め,約2倍のオッズ比であった(p<0.01)7)

    参考文献
    1. Matsuzawa Y, Funahashi T, Nakamura T. Molecular mechanism of metabolic syndrome X : contribution of adipocytokines adipocyte-derived bioactive substances. Ann NY Acad Sci USA 1999; 892: 146-154.
    2. Stasi A, Cosola C, Caggiano G, Cimmarusti MT, Palieri R, Acquaviva PM, Rana G, Gesualdo L. Obesity-Related Chronic Kidney Disease: Principal Mechanisms and New Approaches in Nutritional Management. Front Nutr 2022 ; 9 : 925619.
    3. Leber B, Tripolt N, Blattl D, Eder M,Wascher TC, Pieber TR, Stauber R, Sourij H, Oettl K, Stadlbauer V. The influence of probiotic supplementation on gut permeability in patients with metabolic syndrome: An open label, randomized pilot study. Eur J Clin Nutr 2012; 66: 1110-1115.
    4. Depommier C, Everard A, Druart C, Maiter D, Thissen J-P, Loumaye A, Hermans MP, Delzenne NM, de Vos WM, Cani PD. Serum metabolite profiling yields insights into health promoting effect of A. muciniphila in human volunteers with a metabolic syndrome. Gut Microbes 2021; 13: 1994270.
    5. Kassaian N, Feizi A, Aminorroaya A, Amini M. Probiotic and synbiotic supplementation could improve metabolic syndrome in prediabetic adults: A randomized controlled trial. Diabetes Metab Syndr 2018; 13: 2991-2996.
    6. Eslamparast T, Zamani F, Hekmatdoost A, Sharafkhah M, Eghtesad S, Malekzadeh R, Poustchi H. Effects of symbiotic supplementation on insulin resistance in subjects with the metabolic syndrome: A randomised, double-blind, placebo-controlled pilot study. Br J Nutr 2014 ; 112 : 438-445.
    7. Ninomiya T, Kiyohara Y, Kubo M, Yonemoto K, Tanizaki Y, Doi Y, Hirakata H, Iida M. Metabolic syndrome and CKD in a general Japanese population: the Hisayama Study. Am J Kidney Dis 2006 ; 48 : 383-391.


    問題4. 解答:e
    解説

    a その通り1)
    b その通り1)
    c その通り1)
    d その通り2)
    × e 短鎖脂肪酸は,免疫系の制御などを介して,一般的に臓器保護的に作用する3)

    参考文献
    1. Noel S, Mohammad F, White J, Lee K, Gharaie S, Rabb H. Gut Microbiota-Immune System Interactions during Acute Kidney Injury. Kidney360. 2021 Jan 14; 2: 528-531.
    2. Park SW, Kim M, Kim JY, Ham A, Brown KM, Mori-Akiyama Y, Ouellette AJ, D'Agati VD, Lee HT. Paneth cell-mediated multiorgan dysfunction after acute kidney injury. J Immunol 2012; 189: 5421-5433.
    3. Xiong RG, Zhou DD, Wu SX, Huang SY, Saimaiti A, Yang ZJ, Shang A, Zhao CN, Gan RY, Li HB. Health Benefits and Side Effects of Short-Chain Fatty Acids Foods 2022; 11: 2863.


    問題5. 解答:b,e
    解説

    a 透析患者の死亡原因としては,1位が心不全,4位の脳血管障害,6位の心筋梗塞を加えると,死因の約35%となり,3人に1人が心血管疾患で死亡するといえる。
    × b 疾患と関連する菌種は報告されているが,疾患との因果関係を含めて不明であるし,未だ循環器疾患・腎臓病の原因となる特定の腸内細菌は同定されていない。
    c 胃酸分泌を抑制する薬剤,糖尿病治療薬のα-グルコシダーゼ阻害薬などは腸内細菌叢を変化させている可能性が高いことが報告されている1)
    d 腸内細菌は,短鎖脂肪酸・アミノ酸・ビタミンなどを産生し,代謝物を介して宿主生体機能に影響を及ぼす。生体に悪影響を及ぼす代謝物も複数報告されており,治療標的として注目されている。リポポリサッカライドなどの菌体毒素を介した炎症惹起,宿主にIgAや抗菌ペプチドの産生を促したり,乳酸産生を介した酸性環境維持による感染症予防など,さまざまな免疫機能に影響している。
    × e 腸内細菌関連代謝物である,トリメチルアミンNオキシド(TMAO)の血中濃度が高いと心血管イベントが多いことが報告された2)が,因果関係は十分に証明されていない。さらに,ヒト介入試験によるTMAO低下のイベント抑制効果についても,未だ明らかにはされていない。

    参考文献
    1. Nagata N, Nishijima S, Miyoshi-Akiyama T, Kojima Y, Kimura M, Aoki R, Ohsugi M, Ueki K, Miki K, Iwata E, Hayakawa K, Ohmagari N, Oka S, Mizokami M, Itoi T, Kawai T, Uemura N, Hattori M. Population-level Metagenomics Uncovers Distinct Effects of Multiple Medications on the Human Gut Microbiome. Gastroenterology 2022; 163: 1038-1052.
    2. Wang Z, Klipfell E, Bennett BJ, Koeth R, Levison BS, Dugar B, Feldstein AE, Britt EB, Fu X, Chung YM, Wu Y, Schauer P, Smith JD, Allayee H, Tang WH, DiDonato JA, Lusis AJ, Hazen SL. Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease. Nature 2011; 472: 57-63.

  • 問題1. 解答:a,c
    解説

    a 正常妊娠において,尿蛋白量は増加することが示されており,機序として糸球体濾過量(GFR)増加,糸球体基底膜の透過性亢進,尿細管での再吸収の低下などが想定されている1)
    × b 妊娠中は浸透圧受容体のセットポイントが下がり,血漿浸透圧は約270mOsm/kg,Na濃度は約4mEq/L程度下がる2)
    c 妊娠成立初期より腎でのナトリウム蓄積と血漿量増加が生じ,血漿は妊娠6~12週のうちに約10~15%増加する。血漿量はその後も継続的に増加し,28~32 週に約40~50%増(平均約1.2L増加)でピークに至る3)
    × d 胎盤・脱落膜から分泌されるレラキシンにより一酸化窒素(NO)の産生が亢進し,腎を含めた全身の血管のコンプライアンスが増大し,血管抵抗が下がる4)
    × e 妊娠初期より腎血漿流量とGFRの増加が認められ,それにより血清クレアチニン値の低下が認められる5)

    参考文献
    1. Kattah A, Milic N, White W, Garovic V. Spot urine protein measurements in normotensive pregnancies, pregnancies with isolated proteinuria and preeclampsia. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2017; 313:R418--427.
    2. Lindheimer MD, Barron WM, Davison JM. Osmotic and volume control of vasopressin release in pregnancy. Am J Kidney Dis 1991;17:105-111.
    3. De Haas S, Ghossein-Doha C, Van Kujik SMJ, Van Drongelen J, Spaanderman MEA. Physiological adaptation of maternal plasma volume during pregnancy: a systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol 2017;49:177-187.
    4. Conrad KP. Maternal vasodilation in pregnancy: the emerging role of relaxin. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2011;301:R267-275.
    5. Harel Z, McArthur E, Hladunewich M, Dirk JS, Wald R, Garg AX, Ray JG. Serum Creatinine Levels Before, During, and After Pregnancy. JAMA 2019;321:205-207.


    問題2. 解答:c
    解説

    a レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の胎児毒性は明らかであり,妊娠判明後,ただちに中止する1)
    b 腎機能障害および蛋白尿が進行するほど妊娠合併症のリスクは高い1)
    × c 妊娠中の腎生検は合併症の頻度が低い妊娠中期までに行う2)
    d 透析患者の妊娠は,健康な妊婦と比較して生児を得る確率が低い1)
    e 妊娠高血圧症候群の既往は末期腎不全のリスクとなる1)

    参考文献
    1. 日本腎臓学会学術委員会 腎疾患患者の妊娠: 診療の手引き改訂委員会(編).腎疾患患者の妊娠:診療ガイドライン2017.東京:診断と治療社,2017.
    2. 日本腎臓学会(編).腎生検ガイドブック2020.東京:東京医学社,2020.


    問題3. 解答:d,e
    解説

    生検所見では,糸球体係蹄内に腫大した内皮細胞が目立ち,それにより内腔は狭窄している。糸球体基底膜の部分的な二重化もみられるが,メサンギウムの増殖は目立たない。以上の光学顕微鏡所見とIFが陰性であること,電子顕微鏡でelectron dense depositがないことから,膜性増殖性糸球体腎炎は考えにくい。電子顕微鏡では係蹄内にフィブリンと,腫大した内皮細胞の胞体が観察されている。急激な腎機能悪化,IF陰性でフィブリンが出る疾患にANCA関連血管炎があるが,係蹄の断裂や半月体はなく,血尿も乏しく否定的である。この病変の首座は糸球体内皮障害(glomerular endotheliosis)で,妊娠高血圧腎症(PE)の典型像である。PEでみられる内皮障害は可逆性で,通常は産後数カ月で消失する。PEの発症機序として,らせん動脈のリモデリング不全による胎盤血流不全と,それによる母体および胎盤血管内皮障害によるtwo stage disorder theoryが受け入れられている。胎盤増殖因子(PlGF)は主に胎盤から産生されるが,血管内皮増殖因子(VEGF)同様に血管新生を促進する因子で,VEGFファミリーの一つに分類される。胎盤虚血が起こるとVEGFの可溶型受容体で可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)という抗血管新生因子の産生が増加する。sFlt-1は,VEGFやPIGFと結合しても細胞内にシグナルが伝わらない(血管新生が生じない)。その結果,血液中のVEGFやPIGFとFlt-1との結合を競合的に阻害し,胎盤での血管新生を阻害する。さらにsFlt-1は胎盤を介して母体循環に入り,母体内に全身性の内皮障害をきたす。sFlt-1/PlGF比はPEの発症を予測する指標として注目されている。


    問題4. 解答:b,c
    解説

    × a アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は,胎児の低血圧,腎血流の低下により尿細管障害,羊水過少症など胎児毒性が明らかであり,妊娠中は禁忌である。ARBを内服中に妊娠が判明した場合は,速やかに中止する。
    b これまで「妊娠20週以降」の使用に限定されていた(徐放性)ニフェジピンとアムロジピンの添付文書が2022年12月に改訂され,全妊娠期間を通して使用できるようになった。
    c カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン,タクロリムス)は,動物実験で催奇形性が認められていることから,添付文書では「妊婦又は妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌」とされていた。しかし,疫学研究の結果,胎児の先天奇形の発生率が有意に上昇したという報告はないことから,2018年8月,「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」としたうえで禁忌が解除され,病状を維持するために必要な場合は,投与が許容されることになった。
    × d シクロホスファミドは催奇形性や無月経の報告があり,薬剤の総量と年齢により妊孕性に影響を及ぼすことから,挙児希望の患者では使用を控える。
    × e ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は,臓器移植後やループス腎炎の治療に使用されているが,胎児奇形の危険性が数多く報告されており,添付文書上も妊娠中の使用は禁忌である。

    問題5. 解答:2
    解説

    a 腎不全患者は視床下部-下垂体-性腺軸の調節能低下により妊孕性の低下をきたす。これに対して腎移植を行うことによって下垂体-卵巣機能異常がほぼ正常化し,腎移植後は妊孕性の改善が認められる。
    × b 腎移植後は妊孕性が改善し妊娠・出産が可能となるものの,やはり一般人口と比較した場合,死産や流産,早期産,低出生体重児およびSGA児,帝王切開などの割合は高い。さらに,妊娠による母体への影響も懸念され,循環血液量が増加し,妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症:PE含む)/ 子癇や糖代謝異常妊娠の原因となることがある。また,移植腎への影響として移植腎機能低下や蛋白尿の出現・増加がある。National Transplantation Pregnancy Registryデータでは高血圧53~61%,PE30~32%,糖尿病5~12%,拒絶反応1~2%,産後2年以内のグラフト喪失6~9%という結果であり,高血圧およびPEが多く認められていた。
    × c ミコフェノール酸モフェチル(MMF)およびミゾリビンは催奇形性や流産などのリスクがあり避ける必要があり,一般的な妊娠準備として中止してアザチオプリンへの変薬などを行う。
    × d 母乳哺育は母児に多大なメリットがあると考えられるが,免疫抑制剤の乳児への移行が懸念される。ステロイド,シクロスポリンおよびタクロリムスは授乳により,乳児へ移行するもののごくわずかであり,必要最小限維持量の免疫抑制療法下での母乳哺育は問題ないと考えられ,以前は授乳を推奨しない,あるいは意義不明とされていたが,近年では母児へのメリットの観点から病状や薬剤使用による児への影響も考慮し,授乳婦自身の希望を尊重し支援するようになってきている。しかし一方でミコフェノール酸およびmTOR阻害薬はデータが少なく不明であり,現時点では授乳中の使用は勧められていない。また,そのほか降圧薬なども母乳移行の報告があるため注意する。
    e 生体腎移植ドナーが腎提供後に妊娠をすることには一定のリスクがある。とくに,残腎に対して妊娠子宮の増大による圧迫および水腎症による腎障害のリスクや,片腎および妊娠状態により糸球体過剰濾過となるため,妊娠高血圧症候群およびPEのリスクに注意する。

    問題6. 解答:d,e
    解説

    早産,低出生体重,SGAは慢性腎臓病(CKD)のリスクとなることが明らかとなっている1)。とくに若年者のCKD患者を診察した場合には病歴で可能な限りこれらの情報を確認する必要がある。

    参考文献
    1. Gjerde A, Reisæter AV, Skrunes R, et al. Intrauterine growth restriction and risk of diverse forms of kidney disease during the first 50 years of life. Clin J Am Soc Nephrol 2020;15:1413-1423.


    問題7. 解答:c,d
    解説

    a 以前は蛋白尿の存在が必須であったが,2018年の本邦の定義・分類改訂にともない,尿蛋白を認めなくても胎児発育遅延がある場合は妊娠高血圧腎症(PE)と診断される。
    b PEに罹患した女性は,正常妊娠だった女性と比較して将来の高血圧や慢性腎臓病(CKD),2型糖尿病,脳心血管病の発症リスクが高い。
    × c アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は授乳中にはほとんど分泌されないため,授乳中の高血圧女性に対し使用禁忌ではない。
    × d 産後12週を目安に,尿蛋白が遷延している女性では慢性腎炎の鑑別が推奨されている。
    e 正常妊娠女性と比較して,妊娠高血圧症候群の既往がある女性は,次の妊娠で妊娠高血圧症候群の発症リスクが高い。
  • 問題1. 解答:b,d
    解説

    a PARADIGM-HF試験ではアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と比較して左室駆出率の低下した心不全患者の心血管死亡と心不全からなる主要複合エンドポイントを有意に低下させたのみならず心血管死も有意に低下させた1)
    × b PARAGON-HF試験においてARNIはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)と比較して左室駆出率の保持された心不全患者の心血管死亡の有意な低下は示さなかった2)
    c PARADIGM-HFおよびPARAGON-HF試験共にARNI は対照群であるACE阻害薬またはARBと比較して血中クレアチニン値上昇や血中カリウム値上昇の有害事象は少なかった1, 2)
    × d PARADIGM-HF試験においてARNI群ではACE阻害薬群と比較して左室駆出率の低下した心不全患者の尿中アルブミン/クレアチニン比は増加していたが,推算糸球体濾過量(eGFR)低下の傾きは改善していた3)
    e PARADIGM-HFおよびPARAGON-HF試験の統合解析においてARNIはACE阻害薬またはARBと比較し心不全患者の複合腎イベントの有意に抑制することが示された4)

    文献
    1. McMurray JJ, Packer M, Desai AS, Gong J, Lefkowitz MP, Rizkala AR, Rouleau JL, Shi VC, Solomon SD, Swedberg K, Zile MR, Investigators P-H and Committees. Angiotensin-neprilysin inhibition versus enalapril in heart failure. N Engl J Med 2014;371:993-1004.
    2. Solomon SD, McMurray JJV, Anand IS, Ge J, Lam CSP, Maggioni AP, Martinez F, Packer M, Pfeffer MA, Pieske B, Redfield MM, Rouleau JL, van Veldhuisen DJ, Zannad F, Zile MR, Desai AS, Claggett B, Jhund PS, Boytsov SA, Comin-Colet J, Cleland J, Dungen HD, Goncalvesova E, Katova T, Kerr Saraiva JF, Lelonek M, Merkely B, Senni M, Shah SJ, Zhou J, Rizkala AR, Gong J, Shi VC, Lefkowitz MP, Investigators P-H and Committees. Angiotensin-Neprilysin Inhibition in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction. N Engl J Med 2019;381:1609-1620.
    3. Damman K, Gori M, Claggett B, Jhund PS, Senni M, Lefkowitz MP, Prescott MF, Shi VC, Rouleau JL, Swedberg K, Zile MR, Packer M, Desai AS, Solomon SD and McMurray JJV. Renal Effects and Associated Outcomes During Angiotensin-Neprilysin Inhibition in Heart Failure. JACC Heart Fail 2018;6:489-498.
    4. Mc Causland FR, Lefkowitz MP, Claggett B, Packer M, Senni M, Gori M, Jhund PS, McGrath MM, Rouleau JL, Shi V, Swedberg K, Vaduganathan M, Zannad F, Pfeffer MA, Zile M, McMurray JJV and Solomon SD. Angiotensin-neprilysin inhibition and renal outcomes across the spectrum of ejection fraction in heart failure. Eur J Heart Fail 2022;24:1591-1598.


    問題2. 解答:c
    解説

    × a 線維芽細胞増殖因子(FGF)23は近位尿細管での2a型ナトリウム-リン共輸送体(NPT2a)の発現を低下させる。
    × b FGF23はFGF19サブファミリーに属する。
    c
    × d FGF23が作用する重要な受容体はFGF受容体4である。
    × e eGFR>60mL/分/1.73m2と腎機能が比較的保たれた群でも血中FGF23濃度の上昇は心血管疾患と関係することが報告されている。

    問題3. 解答:c
    解説

    1 SGLT2阻害薬は,糖尿病性腎臓病を含む慢性腎臓病と心不全の双方の患者に対して予後改善効果を持っている。
    × 2 HIF-PH阻害薬は,腎性貧血に対してのみ適応を取得している。
    × 3 エリスロポエチン製剤は,腎性貧血に対してのみ適応を取得している。
    4 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は心不全に対してはRales試験,EMPHASIS-HF試験で,糖尿病性腎臓病に対してはFIDELIO-DKD試験で予後改善効果が示されている。
    5 ARBは心不全に対してはCHARM試験など,糖尿病性腎臓病に対してはRENAAL試験,IDNTなどで予後改善効果が示されている。

    問題4. 解答:b,c
    解説

    a
    × b フィネレノンの臓器保護効果には血圧を下げない用量でみられ,MR抑制による抗炎症・抗線維化によると考えられている。
    × c エプレレノンは蛋白尿を有する糖尿病患者には禁忌である。
    d
    e

    問題5. 解答:a,b
    解説

    × a 腎うっ血時には腎灌流圧の低下によりレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)が亢進し,ナトリウムの再吸収は亢進する
    × b 中心静脈圧の上昇に伴い,腎静脈圧波形は連続性から2相性,単相性と変化する1, 2)
    c 観察研究において,腎うっ血を反映する単相性腎静脈圧波形を呈する心不全患者では,生命予後が不良であることが示されている3)
    d 腎臓では堅牢な被膜に覆われているため,うっ血時には毛細血管内圧の上昇により間質への細胞外液量の移動が生じる一方で,リンパ管からの間質液の排泄低下により腎間質圧は上昇し,動脈からの腎灌流は低下する。
    e 過去の複数の観察研究において,心不全で入院した患者の腎機能障害の発症に関して,心係数,体血圧,肺動脈楔入圧,中心静脈圧のなかで,もっとも相関の高かったものは中心静脈圧の上昇であったことが示されている4)

    文献
    1. Turk M, Robertson T, Koratala A. Point-of-care ultrasound in diagnosis and management of congestive nephropathy. World J Crit Care Med 2023;12:53-62.
    2. Seo Y, Iida N, Yamamoto M, Ishizu T, Ieda M, Ohte N. Doppler-Derived Intrarenal Venous Flow Mirrors Right-Sided Heart Hemodynamics in Patients With Cardiovascular Disease. Circ J 2020;84:1552-1559.
    3. Iida N, Seo Y, Sai S, Machino-Ohtsuka T, Yamamoto M, Ishizu T, Kawakami Y, Aonuma K. Clinical Implications of Intrarenal Hemodynamic Evaluation by Doppler Ultrasonography in Heart Failure. JACC Heart Fail 2016;4:674-682.
    4. Mullens W, Abrahams Z, Francis GS, Sokos G, Taylor DO, Starling RC, Young JB, Tang WHW. Importance of venous congestion for worsening of renal function in advanced decompensated heart failure. J Am Coll Cardiol 2009;53:589-596.

  • 問題1. 解答:c
    解説

    × a わが国では,透析見合わせの法的免責は得られていない1)
    × b 維持透析終了(透析中断)後の予後は2週間以内である2, 3)
    c 80歳以上では,透透析見合わせ(非開始)が,透析終了よりも多い2)
    × d 透析見合わせ(非開始)後の患者生命予後は,見合わせ決定時の慢性腎臓病(CKD)ステージや,個々の付帯状況(担癌,低栄養,多臓器不全など)に依存するため,平均では1か月以上の生命予後を示す場合が多い2)
    × e 腎代替療法選択時には,透析・移植の選択をしなかった場合の予後は説明すべきである。しかし保存的腎臓療法(conservative kidney management:CKM)の説明は,わが国の優れた透析治療成績を鑑み,患者の透析見合わせの希望時に行うべきとされる4)

    文献
    1. 竹口文博,中野広文,菅野義彦.透析の見合わせに関する刑法的許容性の根拠の検討.透析会誌 2016;49:561-569.
    2. 日本医療研究開発機構(AMED)長寿科学研究開発事業.高齢腎不全患者に対する腎代替療法の開始/見合わせの意思決定プロセスと最適な緩和医療・ケアの構築研究班.高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法.東京:東京医学社.2022.
    3. Fissell RB, Bragg-Gresham JL, Lopes AA, Cruz JM, Fukuhara S, Asano Y, Brown WW, Keen ML, Port FK, Young EW. Factors associated with "do not resuscitate" orders and rates of withdrawal from hemodialysis in the international DOPPS. Kidney Int 2005;68:1282-1288.
    4. 透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言. 透析会誌 2020;53:173-217.


    問題2. 解答:b,d
    解説

    × a インフォームド・コンセント(IC)は患者が医師の説明に対して同意を示すもので,真の主体は医師ではなく患者であるといえる。
    b IC違反は米国ではそれだけで違法とされるが,日本ではそれと異なり,裁判において不法行為を構成するのは説明義務違反とされる。
    × c b.の説明を参照。
    d
    × e CKDステージG5において開始することが誤りとはいえないが,日本老年医学会の提言にもみられるように,ACP(advanced care planning)は患者の認知機能低下,意思能力低下が生じる前に人生の最終段階における医療・ケアへの希望を中心に意思表明し,意思能力が不十分となった状態での選択をスムーズに行うことが一つの目的であるため,一律にCKDステージG5をACPの開始時期とすることは適切とはいえない。

    問題3. 解答:b
    解説

    × a 2010年の多施設共同のランダム化比較試験(IDEAL study)で, 透析の早期開始群〔糸球体濾過量(eGFR)が10~14mL/分/1.73m2で開始する群〕と晩期開始群(eGFRが5~7mL/分/1.73m2で開始する群)において,全死亡,心血管合併症,感染症,透析合併症のいずれのエンドポイントについて差がみられなかったことが示されている1)
    b 腎代替療法指導管理料はCKD患者の3か月前までの直近2回のeGFR(mL/分/1.73m2)がいずれも30未満の場合算定できるとされている2)
    × c 事前指示書は通常,医療とケアの内容等に関しての意思を記載したもので,CKMを選択した場合とは限らない3)
    × d 人生の最終段階の本人を支える存在として,法的な意味での親族関係のみを意味せずより広い範囲の人(親しい友人など)を含むとしており,親族に限定されることはない4)
    × e ACPはさまざまな機会に患者,家族等,医療チームが事前に人生の最終段階における医療とケアについて意思決定を支援する話合いのプロセスで,腎代替療法が必要になった時点と特定されるものではない3)

    文献
    1. Cooper BA, Branley P, Bulfone L, Collins JF, Craig JC, Fraenkel MB, Harris A, Johnson DW, Kesselhut J, Li JJ, Luxton G, Pilmore A, Tiller DJ, Harris DC, Pollock CA; IDEAL Study. A randomized, controlled trial of early versus late initiation of dialysis. N Engl J Med 2010;363:609-619.
    2. B 001_31 腎代替療法指導.社会保険研究所(編).医科診療報酬点数表 令和4年4月版.東京:社会保険研究所,2022.
    3. 透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会.透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言. 透析会誌 2020;53:173-217.
    4. 厚生労働省.人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf


    問題4. 解答:d
    解説

    年齢,血清アルブミン値,C反応性蛋白(CRP)は強く生命予後と関連する。バスキュラーアクセスの準備は,中心静脈カテーテルを用いないことによる感染予防のほかに,計画導入にいたる過程での専門的な管理が影響する。血清クレアチニン値については,報告によって生命予後との関連性が変動し,また合併症で補正すると有意性が消失する。


    問題5. 解答:b
    解説

    × a フェンタニルはオピオイドμ1受容体への親和性が高く,疼痛緩和には有用だが呼吸困難をはじめとする苦痛の緩和には向かない。特に貼付剤は臨床経験上,効かない。ハリソン内科学でも除外されている1)
    b オキシコドンは臨床経験上,呼吸困難に有用であり,前述の書にも掲載されている1)。その徐放錠の一部は慢性疼痛に保険適応があるが,即放製剤や注射薬はがん性疼痛にしか適応がないため,非がん患者に使用した場合は,症状詳記が必要になる。
    × c モルヒネは,疼痛のみならず呼吸困難の緩和にも有用な薬剤である。肝臓でグルクロン酸抱合され,M3G,M6Gという活性型の代謝物となる。それらは腎排泄であり,腎不全では貯留しやすく,意識障害や呼吸抑制を起こす恐れが大きい。腎不全では禁忌としている外国の論文も少なくない2)
    × d 共同意思決定(SDM)を経てCKMを決めた患者に対して,症状緩和を行わずに透析を行うのでは,SDMが意味をなさない。本来は,補液の制限,酸素の適量投与,オピオイドでの症状緩和で対応するべきである。オピオイドに不慣れな医療者は,ためらうことなく緩和ケアチームと相談が必要である。
    × e 遺憾ながらわが国の緩和ケアは,がんの緩和ケアに著しく偏っており,非がんの緩和ケアで緩和ケアチームが介入して保険点数が取れるのは,重症の心不全のみである3)

    文献
    1. Emmanuel EJ. Palliative and End-of-Life Care. Loscalzo J, Kasper DL, Long DL, Fauci AS, Hauser SL and Jameson LJ (eds). Harrisonʼs Principles of Internal Medicine. 21 st Edition. New York : McGraw Hill. 80-82, 2022.
    2. Coluzzi F, Caputi FF, Billeci D, Pastore AL, Candeletti S, Rocco M, Romualdi P. Safe Use of Opioids in Chronic Kidney Disease and Hemodialysis Patients: Tips and Tricks for Non-Pain Specialists. Ther Clin Risk Manag 2020;16:821-837.
    3. 地方厚生局.緩和ケア診療加算(A226-2).https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/news/2012/tazaitoyo/000194787.pdf


    問題6. 解答:c
    解説

    CKMを希望された場合には,さまざまな評価が必要である。

    a うつ病は慢性腎臓病患者にも多く見られる精神疾患であり,その有無についての評価が必要である。
    b CKD患者の高齢化を背景とした認知機能の評価は必須である。
    × c CKMの実施の是非に関して,医療機関の意向は関係ない。
    d せん妄や精神疾患,認知症などにより意思決定能力が低下している可能性に留意する。
    e ACPを繰り返し行うことは,CKMを選択するうえで必須である。

    問題7. 解答:c
    解説

    × a 「法は倫理の最低限」1)といわれてきたように,倫理がカバーする範囲は法よりもはるかに広く,合法性は倫理性の一部に過ぎない。
    × b 「仁」は孔子を祖とする儒教の徳目であり,「医は仁術」は中国由来である。
    c 臨床倫理の実践においては,医療・ケアチームとして,個々の患者が直面している治療法の選択などにかかわる諸問題を,症例ごとに,患者本人の価値観・人生観・死生観を尊重しつつ,患者の視点から検討する2)
    × d 患者が認知症を有している場合でも,患者は意思決定能力を有することを前提として対応することが求められている。厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」3)は,認知症の症状にかかわらず,認知症を有する人の特性を踏まえた意思決定支援の原則として,「本人の表明した意思・選好あるいはその確認が難しい場合には推定意思・選好を確認し,それを尊重することから意思決定支援が始まる」としている。
    × e ICは「十分に情報提供され,それを理解したうえでの承諾」を意味し,医師が患者から得るものであり,医師が患者側にするものではない。

    文献
    1. イェリネク.大森英太郎(訳).法・不法及刑罰の社会倫理的意義.東京:岩波書店,1936.
    2. 会田薫子.清水哲郎,会田薫子,田代志門(共編).臨床倫理の基礎. 臨床倫理の考え方と実践―医療・ケアチームのための事例検討法.東京:東京大学出版会,2-12,2022.
    3. 厚生労働省.「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」2018.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

  • 問題1. 解答:a,e
    解説

    × a ネフリンをコードする遺伝子はNPHS1である。
    b ネフリンはスリット膜を構成する主要蛋白である。
    c ネフリン遺伝子の変異はフィンランド型ネフローゼ症候群の原因となる。
    d ネフリン遺伝子は小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の疾患感受性遺伝子と考えられている。
    × e 抗ネフリン抗体は微小変化型ネフローゼ症候群の病態に関与すると考えられている。

    問題2. 解答:c
    解説

    移植用臓器として異種動物の利用は,1980年代まではヒヒやチンパンジーなどの非ヒト霊長類でも検討されていたが,近年ではブタが臓器供給源として好ましいと認識されるに至った。ブタは多胎妊娠であり繁殖がしやすく安定した供給が可能である。さらに成長が早いため,6カ月程度で臓器サイズがヒトと同等となる。遺伝子編集技術にも応用ができ,病原性微生物フリーの状態での管理が可能なため,人獣共通感染症の伝播リスクが低いと考えられている。また,家畜動物であることから動物愛護的問題が非ヒト霊長類と比較して少ないことも理由である1)。2022年には脳死患者に対し,ヒト移植用に適応させたブタ腎臓を移植する試みがなされ,生体環境での尿産生と腎機能の改善が報告された2)

    引用文献
    1. David K C Cooper, H Iwase, L Wang, T Yamamoto, Qi Li, J Li, H Zhou, H Hara. Bringing Home The Bacon: Update on The State of Kidney Xenotransplantation. Blood Purif 2018;45:254-259.
    2. Montgomery RA, Stern JM, Lonze BE, Tatapudi VS, Mangiola M, Ming W, Weldon E, Lawson N, Deterville C, Dieter RA, Sullivan B, Boulton G, Paren B, Piper G, Sommer P, Cawthon S, Duggan E, Ayares D, Dandro A, Fazio-Kroll A, Kokkinaki M, Burdorf L, Lorbe M, Boeke JD, Pass H, Keating B, Grieseme A, Ali NM, Mehta SA, Stewart ZA. Results of Two Cases of Pig-to-Human Kidney Xenotransplantation. N Engl J Med 2022;386:1889-1898.


    問題3. 解答:b
    解説

    1 組織学的重症度分類で急性病変は,細胞性半月体,線維細胞性半月体,慢性病変は全節性糸球体硬化,分節性糸球体硬化,線維性半月体を評価する1)
    2 厚生労働省「難治性腎障害に関する調査研究」IgA腎症ワーキンググループが,日本腎臓学会評議員を対象に「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」アンケート調査を行った。肉眼的血尿陽性者は,全例ファイザーのRNA ワクチン接種者で,女性が83%を占めている2)
    × 3 IgA腎症を含むCKD患者において,中等度までの運動負荷は尿蛋白を増加させず,腎機能を進行させなかったと報告されている1, 3, 4)
    × 4 海外のガイドラインでは,扁摘はIgA腎症の治療として必ずしも推奨されていない。KDIGOガイドライン2021では,本邦からの扁摘パルス療法の有効性に関する多くの報告を受け,「Specic populations として,Japanese - consider tonsillectomy」と記載が追記された5)。一方で欧州では,以前よりIgA腎症の病態には腸管粘膜免疫応答異常が関与すると考えられており,近年では腸管選択的作用型ステロイド薬の臨床試験がすすんでいる。
    5 IgA腎症診療ガイドライン2020の成人IgA腎症の治療アルゴリズムでは,推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2以上かつ尿蛋白量0.5g/日未満の場合は,薬物療法なしでの経過観察を基本としている1)

    参考文献
    1. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性腎障害に関する調査研究」班.エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020.東京:東京医学社,2020.
    2. Matsuzaki K, Aoki R, Nihei Y, Suzuki H, Kihara M, Yokoo T, Kashihara N, Narita I, Suzuki Y. Gross Hematuria after SARSCoV-2 Vaccination: Questionnaire Survey in Japan. Clin Exp Nephrol 2021;29:1-2.
    3. Eidemak I, Haaber AB, Feldt-Rasmussen B, Kanstrup IL, Strandgaard S. Exercise training and the progression of chronic renal failure. Nephron 1997;75:36-40.
    4. Boyce ML, Robergs RA, Avasthi PS, Roldan C, Foster A, Montner P, Stark D, Nelson C . Exercise training by individuals with predialysis renal failure: cardiorespiratory endurance, hypertension, and renal function. Am J Kidney Dis 1997;30:180-192.
    5. Rovin BH, Adler SG, Barratt J, Bridoux F, Burdge KA, Chan TM, Cook HT, Fervenza FC, Gibson KL, Glassock RJ, Jayne DRW, Jha V, Liew A, Liu ZH, Mejía-Vilet JM, Nester CM, Radhakrishnan J, Rave EM, Reich HN, Ronco P, Sanders JF, Sethi S, Suzuki Y, Tang SCW, Tesar V, Vivarelli M, Wetzels JFM, Lytvyn L, Craig JC, Tunnicliffe DJ, Howell M, Tonelli MA, Cheung M, Earley A, Floege J. Executive summary of the KDIGO 2021 Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int 2021;100:753-779,

  • 問題1. 解答:d
    解説

    a 腎血流量(RBF)は経年的に低下する。
    b RBF低下を反映して糸球体濾過量(GFR)は低下する。
    c 加齢に伴い腎囊胞が増加する。
    × d 尿細管濃縮力は一般的に低下する。
    e 腎皮質の萎縮を反映して腎サイズは縮小する。

    問題2. 解答:a,c
    解説

    × a 75歳以上の占める割合は39.3%である。
    b 2021年末の腹膜透析患者の平均年齢は67.34歳であり,血液透析患者の平均年齢は71.42歳となっている。2010年以降のデータでも約4歳腹膜透析患者の平均年齢が低くなっている(WADDAシステム)。
    × c 2021年末の腹膜透析患者の平均年齢は67.34歳であり,在宅血液透析患者の平均年齢は56.76歳となっている(WADDAシステム)。
    d 2022年末において60歳以上の患者が占める割合は78.9%である。
    e 2022年度の導入患者において60歳以上の患者が占める割合は81%である。

    参考文献
    1. 花房規男,阿部雅紀,常喜信彦,星野純一,谷口正智,菊地 勘,長谷川毅,後藤俊介,小川哲也,神田英一郎,中井 滋,長沼俊秀,三浦健一郎,和田篤志,武本佳昭.わが国の慢性透析療法の現況(2022年12月31日現在).透析会誌 2023;56:473-536.

  • 問題1. 解答:c
    解説

    1 腎性検は通常行われないが,生検が行われた例では糸球体の全節性硬化や尿細管の変性や萎縮など,非特異的な所見を認める。
    × 2 X染色体連鎖性の疾患である。
    × 3 進行性の腎機能障害を認め,成人期以降に末期腎不全に至るが,成人期後期以降も腎機能が保たれる例もある。
    4 本邦では幼児期や学童期の無症候性蛋白尿として発見される例が多い。
    5 低分子蛋白尿の他,高カルシウム尿症,腎石灰化,腎結石などを認めることがある。

    問題2. 解答:b,d
    解説

    a X連鎖型はⅣ型コラーゲンα5鎖をコードするCOL4A5の病的バリアントに起因し,常染色体顕性型および潜性型はⅣ型コラーゲンα3鎖をコードするCOL4A3 あるいはα4鎖をコードするCOL4A4の病的バリアントに起因する。
    × b 女性患者は,男性患者と比較すると腎機能障害の進行は遅いが,45歳までに12%,60歳までに30%,80歳までに40%が末期腎不全に至るため,必ずしも腎予後は良好とはいえない1)
    c Ⅳ型コラーゲンα5鎖が全く正常な場合や,非典型的な染色パターンをとることもあるため,臨床所見や家族歴からAlport症候群が否定できない場合は遺伝子検査を検討する。
    × d 「アルポート症候群診療ガイドライン2017」ではレニン-アンジオテンシン系阻害薬のみが推奨されている。以前はシクロスポリンの有効性を示す報告が散見されたが,蛋白尿の減少が一時的であることと,腎毒性が出現する症例があることから2, 3),ガイドラインでは推奨されていない。
    e 遺伝子検査を先行させることで,不要な腎生検を回避することが可能である。また,持続的血尿を認め,Ⅳ型コラーゲン遺伝子変異が示されれば,Alport症候群の確定診断が可能である。

    引用文献
    1. Lennon R, Ding J, Rheault MN. Inherited Diseases of the Glomerular Basement Membrane. Emma F, Goldstein SL, Bagga A, Bates CM, Shroff R( eds). Pediatric Nephrology, 8th ed. Berlin:Springer International Publishing, 327-350. 2022.
    2. Charbit M, Gubler MC, Dechaux M, Gagnadoux MF, Grünfeld JP, Niaudet P. Cyclosporin therapy in patients with Alport syndrome. Pediatr Nephrol 2007;22:57-63.
    3. Massella L, Muda AO, Legato A, Di Zazzo G, Giannakakis K, Emma F. Cyclosporine A treatment in patients with Alport syndrome: a single-center experience. Pediatr Nephrol 2010;25:1269-1275.


    問題3. 解答:b,e
    解説

    INF2の病的バリアントを有する症例を想定した問題である。

    × a 発症年齢だけでは一概に遺伝性疾患を否定することはできない。常染色体顕性疾患の場合は潜性疾患に比べ発症年齢が高い場合がある。
    b 腎外症状を有する場合は遺伝性疾患の考えるきっかけとなるため1),注意深く精査をする必要がある。
    × c 家族歴からは常染色体顕性遺伝形式が考えられる。
    × d アンジオテンシン変換酵素阻害薬は効果的ではあるが副作用として催奇形性があるため2)妊娠可能な女性に説明なく安易に処方をするのは控えるべきである。
    e 腎症状を有する家族歴は遺伝性疾患を考えるきっかけとなるため1),家族歴の聴取は重要である。

    引用文献
    1. Preston R, Stuart HM, Lennon R. Genetic testing in steroid-resistant nephrotic syndrome: why, who, when and how? Pediatr Nephrol 2019;34:195-210.
    2. Branch RL, Martin U. Adverse effects of angiotensin-converting enzyme inhibitors and Angiotensin-II receptor blockers in pregnancy. Adverse Drug Reaction Bulletin 2007 ;(246):943-946.


    問題4. 解答:a,b
    解説

    × a 成人でもCoenzyme Q10(CoQ10)腎症の報告はある
    × b CoQ10の早期投与によって蛋白尿減少,腎機能の保持が報告されている
    c
    d
    e

    問題5. 解答:c,d
    解説

    a 2009年の国際的腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)では,巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を原疾患とした腎移植レシピエントに対しては,蛋白尿のスクリーリングの実施が望ましく,その頻度は1週目までは1日1回,その後4週目までは週1回,その後1年目までは3カ月に1回,2年目以降は年1回実施するよう推奨している1)
    b 移植後FSGS再発11例,移植後FSGS非再発3例,遺伝性FSGS9例を対象として,間接酵素免疫吸着法(ELISA)による血液中の抗nephrin抗体価と二重蛍光免疫染色による移植腎生検組織を観察した研究が報告された。抗nephrin抗体価は,移植後FSGS 再発例の全例でカットオフ値より高値で,移植後FSGS非再発例と遺伝性FSGSは全例陰性であったことが報告された2)
    × c 移植後FSGS再発11例で抗nephrin抗体の関与を報告した研究では,移植腎生検組織で,IgGと共局在する補体の沈着を認めず,補体の関与は否定的であることが示された2)
    × d 腎移植後に限らず,FSGSの治療として従来の薬物療法では効果が得られず,ネフローゼ症候群状態を持続し,血清コレステロール値が250mg/dL以下に下がらない場合に,一連につき3カ月間に限って12回を限度として算定することができる。
    e FSGSは,小児では末期腎不全の原因疾患として2番目に多く,腎移植後に再発をきたすことがあり,移植腎の生着を妨げる重大な要因である。臨床病理学的検討や網羅的な遺伝子解析は,腎移植後FSGS再発を予測するうえで有用な情報となり得る3)

    引用文献
    1. Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO) Transplant Work Group. KDIGO clinical practice guideline for the care of kidney transplant recipients. American Journal of Transplantation 2009;9(Suppl 3):S1-S157.
    2. Shirai Y, Miura K, Ishizuka K, et al. A multi-institutional study found a possible role of anti-nephrin antibodies in posttransplant focal segmental glomerulosclerosis recurrence. Kidney Int. 2024;105:608-617.
    3. Miura K, Kaneko N, Hashimoto T, et al. Precise clinicopathologic findings for application of genetic testing in pediatric kidney transplant recipients with focal segmental glomerulosclerosis / steroid-resistant nephrotic syndrome. Pediatr Nephrol. 2023;38:417-429.