キャリアプラン
豊原 敬⽂ 先生-留学体験記
名前 豊原敬⽂ Takafumi Toyohara
留学タイミング:卒後12年後、学位取得後5年後
留学先(国):ハーバード⼤学・ボストン(⽶国)へ研究留学
留学中の研究領域・テーマ:患者由来iPS 細胞を⽤いた内在動脈硬化抑制因⼦の探索
―留学を希望するまで、なぜ留学を望んだか
⽇本と異なる⽂化における研究に対する考え⽅、さらには⽣活というものが⾃分にとってかけがえのない経験になると思っていたので、留学はしたいと思っていました。様々な研究分野のある中で、⾃分としては臨床と研究の両⽅に関連する研究が⾏いたいと思っていたところ、幸いにしてiPS 細胞を⽤いた研究という臨床と研究の架け橋になる研究に出会うことができたため、その分野の知識や経験をさらに深めたいと留学を望みました。
―留学先を決定するまで、どうやって決めたのか
留学前は京都⼤学iPS 細胞研究所で腎臓の発⽣や細胞療法に関する研究を⾏っていました。腎臓に関する研究をさらに掘り下げたい気持ちもありましたが、⾃分の研究の裾野を広げたいという思いがあったことから、iPS 細胞を⽤いた病態モデルを⾏っている研究室を調べていたところ、偶然にも恩師の知り合いの研究室だと分かりました。ちょうど、国際学会でボストンに恩師と⾏く機会があったため、直接留学先の先⽣にお会いしました。その時は具体的な話はなかったのですが、1 年以上過ぎてから突然留学先の先⽣からお話をいただき、留学先の先⽣や研究室メンバーとのインタビューを経て留学が決まりました。
―留学するまで、何が必要か、何を準備すべきか
有意義な留学にするためにはその前からアンテナを張って、興味のある分野の研究室の情報を集めることは⼤事かもしれません。できれば、留学先の上司や研究室の⼈達と会う機会があると雰囲気も分かって良いと思います。また可能であれば留学助成⾦は獲得することをお勧めします。助成⾦は留学先研究室の負担が減って喜ばれるだけでなく、実際に他者から評価された⼈物であるという証明にもなるからです。
準備については逆に留学受け⼊れ側の気持ちを考えるのも良いと思います。貴重な研究費から⼈件費や研究費を捻出するため、受け⼊れ側も真剣に選んでいます。世界中から研究者が集まる研究室では実績はもちろん必須ですが、どこまでその研究に関わったか?研究に対する熱意、研究技術、⼈柄なども重要だと感じました。留学先の研究室に所属後、逆に世界中から集まってくる研究室参加希望者のインタビューを⾏う機会もしばしばありました。実績や質疑応答、熱意は重要な評価項⽬で、Nature、Cell、Science のような論⽂の著者であっても評価されないような場合もありましたし、ある程度の実績はもちろん必要ですが、論⽂実績が劣る⼈でも⾼く評価される場合もありました。メールでの問い合わせが多い中で、敢えて郵便でインタビュー依頼をしたような熱意のあるポスドクもいて、実際、所属後は素晴らしい研究をしていました。
その研究室に参加したいという熱意は⼤事だと思います。またin vitro、in vivo に関わらず技術を持っていることをアピールできるよう準備すると良いと思います。
―留学してから
留学先の研究内容を上司と決定することは、その後の⽅向性に⼤きく影響するため、⼀番緊張しました。私⾃⾝は臨床を⾏う中で、「なぜある患者さんは動脈硬化になりやすい⼀⽅で、ある患者さんは動脈硬化になりにくいのか?」という疑問があったため、話をしたところ、ちょうど留学先の上司も同じ疑問を持って準備を進めていることが分かりました。研究室の引っ越しなどもあり、時間はかかりましたが、論⽂としてまとめることができたことは⼤きな経験になりました。⽇本⼈は私⼀⼈でしたが、世界中から集まった優秀な研究者達と公私共に交流できたことも⼤変勉強になりました。
交流は今でも続いています。
留学先では研究ももちろん⼤事ですが、家族の幸せも⼈⽣においてもっと⼤事なことだと思います。⽇本から留学している同志の皆さんや世界中の⼈達との出会いは家族全員のかけがえのない財産になりました。
―留学後のキャリアパス・プラン
どちらかというと⾏き当たりばったりの計画性のない⼈⽣を送ってきましたが、常に患者さんに新たな治療法を届けたいという考えだけは根底にありました。この⽬標は留学後も持ち続けて臨床、研究に従事しています。また、留学先ではハーバード⼤学 ⽣はもちろん優秀でしたが、⽇本の医学⽣も負けず劣らず優秀だと感じていました。このため、私のできる範囲で海外の⼤学に劣らない実践的な教育を提供できればと常々考えています。
―キャリアプランとしての海外留学のメリット
研究、⼈⽣における視野が広がることは⼤きなメリットだと思います。⽇本では良くも悪くも常識だと思っていたことを違う視点から⾒られるようになりました。その後のキャリアにおいてもプラスに働いていると考えています。留学先では他分野の⽅達とも交流があり、キャリアプランとしての選択肢も⾃分の中で増えたように感じています。
―留学に際して、腎臓領域の医師/腎臓学会会員でよかったこと
留学先では腎臓領域の⽅達とも交流があり、実際に私の研究もその助けをいただかなくては完遂しないものでした。実際に⾏っていた研究は腎臓領域とは少し異なる内容でしたが、⾃分⾃⾝の背景や知識がしっかりしていることは海外の研究者達と対等にディスカッションする上で重要だったと感じています。
―海外留学を⽬指す先⽣⽅へのメッセージ
留学先では良い思い出も悪い思い出もありますが、全て良い経験になっていると感じています。家族がいる場合は家族の幸せや安全を第⼀に、是⾮まず第⼀歩を踏み出してください。