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井口直也先生 (大阪大学麻酔集中治療医学講座)からのオーストラリア、メルボルン留学便り

井口直也先生 (大阪大学麻酔集中治療医学講座)
留学先(オーストラリア、メルボルン):The Florey Institute of Neuroscience and Mental Health(The University of Melbourne)、Austin Hospital


はじめに
大阪大学麻酔集中治療医学講座の井口直也です。現在、フローリー研究所(メルボルン大学)の Clive May教授の下で急性腎傷害の基礎研究を行っております。東京大学の稲城玲子先生とフローリー研究所で偶然お会いした際に、留学記のお誘いをいただきました。私は日本腎臓学会会員の一般像や一般的な研究留学像とは少し異なると思います(麻酔背景の集中治療医、基礎研究の経験無し、年齢的にも少し年を取ってからの留学等々)。それ故に逆にお役に立つこともあるかと思い書かせていただくことにしました。

留学の経緯
大阪大学集中治療部にて臨床と並行して、ほそぼそと急性腎傷害の臨床研究を行っていました。臨床やOff dutyに腎臓に思いをめぐらせていましたが、結局推測でしかなく、腎臓の中が実際にどういう状態になっているのか確認したいという気持ちが抑えきれなくなっていました。そんな中に出会った1つの論文が、留学を目指すきっかけとなりました。Septic acute kidney injury: new concepts. (Nephron Exp Nephrol. 2008;109:e95)です。この研究室であれば自分のしたいことができると確信し、目標は決まったものの、問題は何のつながりもないことでした。筆頭著者のRinaldo Bellomoに電子メールを送るところから始めましたが、Rinaldoは集中治療の世界では知らない人はいない巨人で、メールの送信ボタンがなかなか押せなかったことは今となっては懐かしい思い出です。1年半ほどアピールを続けて、やっと留学を認めていただきました。

オーストラリア、メルボルン
南半球にある、世界の住みやすい都市1位に何度も選ばれている都市です(物価は日本の2 倍!ですが...)。特徴は国際色が非常に豊かな都市で、街を歩けば様々な文化、生活、言語 に触れることができます(オーストラリアの4人に1人はオーストラリア以外で生まれています)。我々の研究室や研究や生活で関わる人達もみんなすべて異なる国の出身です。文化的背景が大きく異なる人が入り交じって生活しているので、それゆえ皆さん非常に寛容です。英語が母国語でない人も多いので、留学の際に問題となる英語力に関しても寛容です。

行っている研究

我々の研究室の強みは腎臓の髄質と皮質の酸素分圧、還流量を長期間測定できる方法を持っている世界で唯一の研究室です。また臨床に近い敗血症モデルを確立しており、非常に臨床に近い研究を行っています。
最近は人工心肺モデルも確立しています。私自身は、急性腎傷害の早期発見法(尿中酸素分圧、腎臓超音波検査)、急性腎傷害の臨床で実行可能な予防法(麻酔薬、利尿剤、人工呼吸器設定)を研究しています。研究室の構成は、フルタイムで研究しているのはClive教授と同僚のYugeeshと私の3人だけでとても忙しい日々ではありますが(写真は研究所にて:左から順に、2人目Clive教授、5人目筆者、6人目Yugeesh)、風通しのいい環境のなか、楽しく研究をおこなっています。私は基礎研究の経験はありませんでしたが、研究内容が非常に臨床に近いため、臨床医の経験があれば十分に研究することが可能でした。臨床で一般的に行われている治療が、腎臓の髄質皮質に思いもよらない効果があることを発見し、研究室でYugeeshとハイタッチして喜んだことは忘れられません。
またメルボルンにあるAustin病院ICUのRinaldo Bellomo教授(臨床)、Monash大学Roger Evans教授(腎臓生理学)とは密接にコラボレートしていることも特徴です。我々の結果の臨床への応用、臨床上の疑問を基礎研究で解決するというように非常にうまく回転しています。

留学の意義
同じ思いを持っている人と毎日、急性腎傷害の話ができることは非常に幸せな日々です。多くの新しいつながり、目標ができ、帰国後の糧もできます。また海外生活を実際にすることは、それだけで人生に幅を与えます。コネクションがなく、基礎研究の経験もなく、また年齢的にも少し年を取ってからの基礎研究留学ではありましたが、不安よりも行ってみたいという気持ちの方が上回っていました。幸運にも多くの実験をさせていただき、夢のある研究にも関わることが出来ました。海外留学に関して心の中に熱い思いがある人は、行かないで終わるより、行く道を選んで欲しいと思います。

最後に

海外留学は勤務先や家族の理解がなければ不可能でした。特に妻には感謝の意を伝えたいです。(写真は近くのイタリア人街のLygon Stにて、でっかいピザの前に皆集合!!)

井口直也 (大阪大学麻酔集中治療医学講座)
 

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