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井上剛先生(東京大学腎臓・内分泌内科)からのバージニア大学 留学便り

井上剛先生(東京大学腎臓・内分泌内科)からのバージニア大学留学便り


 私は、2014年4月からバージニア大学(University of Virginia)腎臓内科Mark D. Okusa 主任教授ラボに留学しております。これまで、3年弱こちらで過ごしておりますが、大変恵まれた環境で充実した研究生活を送らせて頂いております。

   バージニア大学はアメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーソンにより1819年に設立され、大学自体が世界遺産に登録されているとても美しい大学です。また、バージニア大学のあるシャーロッツビルは、ワシントンDCから車で2時間ほど南に行ったところにあり、人口が5万人程と非常に小さいですが、自然豊かでアカデミックな雰囲気が漂う大学街です。

 Principle Investigator(PI)であるOkusa先生は、主にAcute kidney injury(AKI)の領域で世界をリードするphysician scientistであり、多数の素晴らしい研究成果を発表されています。Okusa先生は腎臓内科の主任とともにThe Center for Immunity, Inflammation and Regenerative Medicine(CIIR)の主任も併任されており、腎障害における免疫系の役割を中心に研究を進めています。

 私自身は主に2つのテーマについて研究をさせて頂いています。一つ目は、腎障害における神経系と免疫系の関連の解明。もう一つは、エピジェネティクスを介した腎臓線維化メカニズムの解明です。

 一つ目のテーマは、留学後に決まったものですが、バージニア大学内にある、神経生理およびオプトジェネティクスで世界的に有名なPatrice G. Guyenet教授のラボとのコラボレーションが実現し、大きな成果を出すことができました。迷走神経刺激による腎臓保護作用のメカニズム、および脳幹にあるC1細胞を(オプトジェネティクスを駆使し)光刺激することによりAKIが軽減されるという内容です。とてもタイミングよく、私が留学した日と同じ日にGuyenetラボに日本人研究者が留学されてきたこともあり(現岐阜大学生理学准教授 安部力先生)、コラボレーションが非常にスムーズに進むという幸運に恵まれました。

 二つ目は、 Okusaラボで近年注目してきた腎臓線維化メカニズムを、私が大学院生時代に学んだエピジェネティクスの観点からアプローチした研究です。こちらは現在進行形ですが、非常に面白い成果が得られつつあります。

 私がOkusa先生のラボへと留学することになったきっかけは、Okusa先生が講演会で来日された時に遡ります(2012年12月)。その時、私は大学院4年生でしたが、ご講演のあと、南学正臣先生にOkusa先生をご紹介して頂き、Okusa先生の前で、これまで行ってきた研究を発表させて頂きました。幸い、私の熱意が伝わったのか、留学を受け入れて頂けました。

 渡米当初はやはり、不安な面もありましたが、さまざまな幸運と、大学内の多様性、活発で横断的な医学研究の風土などに助けられ、自由な雰囲気の中、今では、のびのびと研究を進めさせてもらっています。特にOkusaラボは、他のラボとのjoint meetingも多く、各専門家に気軽にアドバイスを求めたり、ディスカッションをすることが可能です。実験機器の多くはラボ内にありますが、高度な機器などは大学内のコアファシリティを通して利用することができ、研究を遂行する上でのストレスは極めて少ないと感じています。

 もうしばらく私の留学生活は続く予定ですが、これまでに非常に多くの事を学び、刺激しあえる研究仲間に出会うことができ、留学前に想像していた以上に大変有意義な留学生活が送れています。ご存知の通り、臨床をしながらの研究と違い、留学中は研究に集中することができます。一方、オンとオフがはっきりしているので、家族との時間を十分に持つことができ、常にリフレッシュした状態で研究に向き合えるメリットも感じています。

 最後になりましたが、今回の留学の実現にあたって、お世話になった皆様、日本学術振興会に深謝するとともに、留学をこれから志す皆様が充実した留学生活を送れることをお祈り申し上げます。


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