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IgA腎症の扁摘と腎予後との関連性に関する多施設共同研究が JAMA Network Open に掲載されました
日本腎臓学会の皆様へ
IgA腎症の扁摘と腎予後との関連性に関する多施設共同研究が JAMA Network Open に掲載されました。
論題 Association Between Tonsillectomy and Outcomes in Patients With Immunoglobulin A Nephropathy
著者 Hirano K, Matsuzaki K, Yasuda T, Nishikawa M, Yasuda Y, Koike K, Maruyama S, Yokoo T, Matsuo S, Kawamura T, Suzuki Y
雑誌 JAMA Network Open 2019 2(5):e194772. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.4772.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31150076
2014年に厚生労働科学研究費事業・難治性腎疾患に関する調査研究班「IgA腎症ワーキンググループ」は、ステロイドパルス療法に扁桃摘出術(扁摘)を併用すると治療後1年間の蛋白尿がステロイドパルス単独療法に比べて有意に減少することを無作為比較試験で示しました。しかしながら、この研究は小規模・短期観察デザインであったため、大規模・長期観察で扁摘と腎機能予後との関連を検証することが求められました。今回、IgA腎症ワーキンググループは全国42の多施設で2002年~2004年に発症したIgA腎症1,065例を対象に扁摘と腎予後との関連性に関する観察研究(JNR-IgAN;Japanese Nationwide Retrospective study in IgA Nephropathy)を発表しました。年齢、性、腎機能、蛋白尿、血尿、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、そしてステロイド治療などの背景因子をマッチングさせた解析において、扁摘の血清クレアチニン値1.5倍化に対するハザード比は0.34 (95%CI 0.13-0.77, P=0.009)であり、腎予後に対して良好な関連を示していました。この「扁摘と良好な腎予後との関係」は、腎機能、蛋白尿、血尿、RAS阻害薬、そしてステロイド療法による層別解析でも確認されました。
IgA腎症の治療はSite Specific Strategy の時代に入り、2017年には腸管選択的ステロイド薬のIgA腎症における短期的抗蛋白尿効果が欧州の無作為比較試験 (NEFIGAN study )で示されました。また、本邦を含めた国際的基礎研究から、扁桃を含む免疫系の糖鎖異常IgA分子がIgA腎症の発症と進展に関わることが明らかにされています。JNR-IgANはIgA腎症の遺伝子リスクの高い東アジアから発せられた知見として、今後の実臨床に寄与するものと考えられます。