小冊子

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検尿の考え方・進め方 - 巻頭言1



巻頭言1

 わが国では、1973年に学校検尿法が制定されてより、学童期から15歳までほぼ全員が検尿を毎年施行している。15歳以上のものも、学校健診や職場健診で多くのものが健診による検尿検査を受けている。その他、自主的参加ながら基本健康診査の機会もあり、意思さえあれば、検尿を毎年受けることが可能である。
 このように多くの人が受ける健診で、検尿結果が陽性となるケースはかなり多い。しかし、比較的軽度の蛋白尿や血尿は症状を伴わないことが多く、そのため放置されることがしばしばある。問題となるのは、進行性腎障害や尿路系悪性腫瘍の放置であろう。とくに、わが国では進行性腎障害より末期腎不全に至り透析医療を開始する者が毎年3万人以上もいる。
 進行性腎障害が末期腎不全に至る前に、現在ではしかるべき治療や処置を施せば、進行を制御したり阻止することが可能であるので、検尿により早期に察知し、治療開始の時期を誤らないようにすることは医師としての義務であろう。そして、経過観察でよいのか、しかるべき治療を開始するべきかは、本誌を参考として判断していただきたい。
 検尿で陽性となったものを第一線で適切に扱い、進行性腎障害の抑制をはかり、透析導入患者を減少させることが本誌を世に出す目的の1つでもある。また、専門医の判断が必要の場合もあろうが、そのような場合には是非とも腎臓専門医にご紹介いただき、より密な病診連携を実行していただければ幸いである。

2003年10月
(社)日本腎臓学会 理事長
浅野 泰