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検尿の考え方・進め方 - 第3章 4.健康診断時の検尿に対する対処



第3章 検尿の位置づけ
 健康診断時の検尿に対する対処

・学校検尿の場合
二次検尿として早朝尿を持参させ再検査する。潜血単独の場合はIgA腎症の早期、腎形成異常、菲薄基底膜症候群(thin basement membrane syndrome)、ナッツクラッカー現象(nutcracker phenomenon)、尿路結石などを疑う。持続性か、断続性かも重要な情報である。若年者の場合、腎・尿路系の悪性腫瘍は可能性が低い。繰り返した検尿にても異常が持続する場合は腎エコー、点滴静注腎盂造影(drip infusion pyelography : DIP)、血液検査によりスクリーニングを実施する。一方、蛋白尿単独の場合、運動性、起立性蛋白尿の頻度が高く、早朝尿で尿蛋白陰性となった場合は起立性蛋白尿の可能性が高いが、軽症の糸球体腎炎も含まれる。尿沈渣での病的円柱の有無も鑑別に役立つ。尿蛋白・潜血両者に陽性の場合には、糸球体腎炎の可能性が高く、腎生検の適応判断も含め早急に腎臓専門医へ紹介する。

・職場健診、地域住民健診の場合
学校健診より対象者の年齢が上がる点が大きく異なる。血尿単独例において、腎・尿路系の悪性腫瘍についても年齢の上昇とともに可能性が高くなるため、特に中年期以降に出現した血尿例ではなるべく早急に腎エコー、DIPなどの画像診断および尿細胞診を実施しておくこと。また、中年期以降の女性の血尿単独は頻度が極めて高く(50歳位以上では20%以上)、その対処には苦慮するが、全例に画像診断を実施するのは費用の面からも無理がある。年1回程度の尿細胞診でフォローすることが現実的と考えられる。これらの結果異常を認めず無症候性血尿と判断された場合は年1~2回の検尿フォローでよい。蛋白尿単独例でも起立性蛋白尿が成人以降に出現する可能性は低いので、病的な蛋白尿であるとの前提で臨むこと。基本的には蓄尿による尿蛋白定量、血液検査による腎スクリーニング、血圧、浮腫などのチェックを進める。

・自己検尿の場合
自己検尿実施者は、健康へのモチベーションが高く、異常所見があった際には不安を抱いて受診してくることになる。まずよく問診・説明し、不安を取り除くことから始める必要がある。その後は、通常どおり受信時の検尿や、スクリーニング検査を実施して診断へアプローチする。また、無症候性蛋白尿、無症候性血尿と判断されたケースなどで自己検尿によるフォローをする場合もあるが、6カ月に1回程度は受診させ、記録をとるとともに受信時の検尿を実施するのがよい。