褒賞選考部会

大島賞・CSA(Clinical Scientist Award)

平成16年度 大島賞選考結果報告

平成16年度 大島賞選考結果報告


平成16年度大島賞選考結果報告

褒章選考委員会
委員長 清野佳紀

平 成16年度(第11回)の大島賞選考委員会が、去る平成15年○月○日に行われた。選考方法は以下のとおりであった。まず、事前に大島賞候補者の推薦書・ 履歴書・研究業績目録ならびに主論文3編を各委員へ送付し、順位ならびに評価コメントを依頼した。委員会では業績や論文内容を個々の応募者ごとに検討し討 議を行い、その結果、以下の2名が候補者として推薦され、平成16年○月○日開催の理事会において承認された。


名古屋大学大学院医学研究科予防医療部 榎本 篤
「腎における有機物質輸送の分子機序と病態解析」

榎本篤氏は腎臓学で長年の懸案であった尿酸のトランスポーターをコードする遺伝子(URAT1,urate transporter1)を世界に先駆けて分子クローニングに成功した。このURAT1はヒトゲノム解析プロジェクトの終了直後に開始し、コンピュー ターを用いたゲノム上からの有用遺伝子の単離であり、所謂ドライクリーニングあるいはin silico cloningともいえる先鞭を与えるものである。
そのほかに榎本氏はTタイプアミノ酸トランスポーターの単離をし、これがblue diaper syndromeの原因であることを発見した。さらに、新規カルニチントランスポーターを単離し、男性生殖能との関与を明らかにした。また、有機アニオン の腎内輸送と尿毒症物質の体内動態を解明し、有機アニオンタランスポーターの基質特異性と腎の異物排泄機能を解析した。このように腎における有機物質輸送 の分子機序と病態解析に関して画期的な業績を挙げている榎本氏は、国際規模の若手研究者を鼓舞する大島賞に値すると評価された。


科学技術振興事業団創造科学技術推進事業
柳沢オーファン受容体プロジェクト 柳田 素子
「腎疾患発症進展におけるGas6の役割の解明とその制御剤を用いた治療への応用」

柳田素子氏は、京都大学医学研究科で大学院生時代に、Gas6がメサンギウム細胞の増殖因子であり、warfarinがGas6の活性化を疎外すること によってメサンギウム細胞増殖抑制剤として働くことを証明した。さらに、メサンギウム増殖性腎炎モデルにおいてGas6がその受容体Axlを介して細胞増 殖を促進すること、Gas6抑制剤であるwarfarinやAxlの細胞外ドメインの投与により細胞増殖ならびに蛋白尿が著減することを証明した。
大学院修了後もこれらの研究を継続し、糖尿病性腎症におけるGas6の役割についても発展的解析を進め、Gas6の抑制によって糸球体肥大やアルブミン尿 が改善したという興味ある結果を報告している。以上、柳田氏は腎臓学の進歩に大いに寄与する顕著な独創的研究を立て続けに発表しており、大島賞にふさわし いと評価された。