褒賞選考部会

大島賞・CSA(Clinical Scientist Award)

平成17年度 大島賞選考結果報告

平成17年度 大島賞選考結果報告


平成17年度大島賞選考結果報告

褒章選考委員会
委員長 市川 家國

  平成17年度(第12回)の大島賞選考委員会が、去る平成16年9月27日に行われた。選考方法は以下のとおりであった。まず、事前に大島賞候補者の推薦 書・履歴書・研究業績目録ならびに主論文3編を各委員へ送付し、順位ならびに評価コメントを依頼した。委員会では業績や論文内容を個々の応募者ごとに検討 し討議を行い、その結果、以下の2名が候補者として推薦され、平成16年11月29日開催の理事会において承認された。


名古屋市立大学大学院臨床病態内科学 宇佐美 武
「腎不全マップの発案とその腎不全対策への活用」

宇佐美 武氏は、1991年に名古屋市立大学医学部を卒業し、同第三内科に入局、研修後、1992年から3年間国民健康保険上矢作病院に勤務し、1995年より名古屋市立大学病院に戻り、2000年より助手となり現在に至っている。
氏は、透析医学会が毎年公表している都道府県別新規透析導入患者数を末期腎不全発症数と考え、毎年の都道府県別人口で補正すると共に、11の地区別に再 構築すると、単位人口当たりの腎不全発症率には著明な地域差が存在することを明らかにしJAMA(2000)に報告した。これに対して国際的review 誌であるCurr Opin Nephrol Hypertensから依頼があり総説を執筆している。最近は、末期腎不全発症率の地域差を決定している因子を解析中であるが、先ずアンジオテンシン変換 酵素阻害薬消費量が多い地域は腎不全発症が少なく、逆に消費量の少ない地域では腎不全発症の多いことを突き止め注目を集めている(Kidney Int 2003)。以上、これまで報告されていたデータを再構築することにより、我が国全体をマクロレベルから見て腎不全発症に寄与する因子を特定する方法を確 立したことは、我が国の腎臓病学上も画期的業績であり、大島賞受賞に値すると判断された。


岡山大学大学院医歯学総合研究科
腎・免疫・内分泌代謝内科学 前島 洋平
「糸球体構成メサンギウム細胞および内皮細胞を標的とした進行性腎障害に対する新規治療法開発の試み」

前島洋平氏は岡山大学医学部大学院医学研究科在学中に、増殖関連核蛋白PCNA、Ki-67に対するアンチセンス核酸が、ヒト培養メサンギウム細胞の増 殖を抑制し得ることを見出し、さらに、DNA合成に必須の遺伝子発現を司る転写因子E2Fの活性をdecoy核酸を用いて競合阻害し、メサンギウム細胞の 増殖をin vitro及びラット抗Thy-1腎炎モデルにて抑制し得ることを報告した。大学院終了後1998年から2001年まで米国ハーバード大学医学部に留学 し、主に内皮細胞を対象として血管新生に関連した研究を行った。IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインであるtumstatinの血管新生抑制作用を 報告し、その作用が第74-98アミノ酸領域(T7、T8-peptide)に由来し、内皮細胞上のαvβ3-integrinへの結合を起点とした FAK-PI-3K-Akt-mTOR経路の抑制性シグナルを介するcap-依存性蛋白翻訳抑制によることを解明した。
2001年10月より現所属にてstreptozotocin誘発糖尿病性腎症モデルマウスにてtumstatin-peptide投与により VEGF、angiopoietin-2及びflk-1受容体すなわち血管新生促進因子の過剰発現が抑制されCD31陽性糸球体係蹄数の増加ならびに糸球 体肥大・アルブミン尿等の早期の変化が抑制されることを報告した。現在、同モデルやその他の腎疾患モデルを用いて、他の血管新生阻害因子や血管安定化因子 Angiopoietin-1に関する検討を進めている。このように、候補者は糸球体構成細胞であるメサンギウム細胞を、そして最近では血管新生に着目し 内皮細胞を標的として新規の進行性腎障害治療法の開発を目指して独創的な研究成果を発表しており、大島賞受賞に値すると判断された。